明日の軽井沢は晴れのち曇りでしょう(松たか子)
アリスは大きなウサギ穴に飛び込みました。穴の中はトンネルのようにまっすぐ続いていていきなりの下り坂。踏みとどまることができずに深淵へと落下するアリスなのです。(不思議の国のアリス/ルイス・キャロル)
淀君は織田信長の姪で豊臣秀吉の側室。豊臣秀頼の母。徳川家康により豊臣家が滅んだ大坂の陣で敗因の元凶とされる。
楊貴妃は唐の第九代皇帝・玄宗の皇妃。古代中国を代表する美人。あまりに美しすぎて国を混乱させたと責められ死を賜った。
美しく愛らしいことが罪であると醜い者たちは考えるものだ。
美しく愛らしいものたちは嫉妬の炎で炙られる宿命なのである。
美人薄命と言うが・・・そもそも年老いた美女というものの存在そのものが困難だ。
つまり・・・本当の美人とは美少女だけなのである。
おいおいおい。
で、『カルテット・第9回』(TBSテレビ20170314PM10~)脚本・坂元裕二、演出・坪井敏雄を見た。戸籍上の早乙女真紀(篠原ゆき子)が自転車泥棒で逮捕され十四年前に闇金業者に戸籍を売ったことが発覚する。平成十五年・・・山本彰子(松たか子)は地下経済の一端を担う戸籍売買業者から戸籍を三百万円で買い・・・早乙女真紀になりすましたのだと富山県警の大菅直木(大倉孝二)はサオトメマキの元の姑・鏡子(もたいまさこ)に告げる。
「戸籍を売ることは犯罪とは言えないのですが・・・戸籍を買って・・・他人になりすまし婚姻届を出せば・・・公正証書原本不実記載等罪に問われる可能性があります。刑法157条によれば5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられるのです」
「え」
「ご存じでしたら・・・彼女の居場所を教えていただけませんか」
「・・・」
鏡子は強盗を犯して拘留中の息子・巻幹生(宮藤官九郎)に面会する。
「それで・・・彼女の居場所を教えたのか」
「だって・・・仕方ないじゃないか」
「なんで・・・そんなことを」
山本彰子の母親は「上り坂下り坂ま坂」という曲を歌っていた演歌歌手・山本みずえ(坂本美雨)だった。
彰子の父親とは死別し・・・再婚した夫とも別れたみずえは一人で彰子を育てていたが彰子が十歳の時に坂道で自転車に轢かれて死亡する。
みずえを轢き殺したのは12歳の少年で弟が生れた病院に向う途中だったと言う。
彰子はみずえと離婚した元夫に引きとられ、家庭内暴力に苛まれつつ、ヴァイオリンを習い大学を卒業したという。
「事故死の損害賠償金が二億円だったそうよ」
「・・・」
「保護者となった男から日常的な暴力を受け・・・あの人は家出を繰り返し・・・その度に連れ戻されていたそうよ」
「マキちゃんが・・・賠償金の受取人だったからか」
「・・・」
「じゃあ・・・マキちゃんは被害者じゃないか・・・そいつから逃れるために戸籍を買って逃げ出したってことだろう」
「多くの犯罪者は自分を被害者と思うことから生れる・・・って刑事さんが言うの」
「・・・」
「あの人が姿を消した頃に・・・その人は亡くなっているんだって・・・心不全だけど・・・不審なところがあるらしいわ」
「だからって・・・マキちゃんが・・・人を殺したりするわけないじゃないか」
幹生に対して事情聴取に訪れる大菅刑事・・・。
「しかし・・・あなただって・・・早乙女真紀を名乗る山本彰子に騙されているわけですよ」
「でも・・・真紀ちゃんは母親を殺された被害者なんでしょう・・・」
「殺したのは十二歳の少年ですよ・・・少年の家族は職を失い一家離散しました。少年は生れた弟と暮らすことはなかったそうです」
「・・・」
「それでも・・・損害賠償の請求は続けられていたと言います・・・彼女が姿を消す十四年前まで・・・十二年間もね」
「だったら・・・だからじゃないですか・・・被害者遺族がいなくなったら・・・加害者が助かるから」
「支払いは停止されています」
「でしょう・・・彼女はそういう人です・・・加害者のために・・・自分が犠牲になったんだ」
「・・・」
「そうか・・・真紀ちゃんは・・・僕と結婚して巻真紀になって・・・普通の暮らしがしたかったんだ・・・ずっと・・・怯えてくらしてきたから・・・十年以上も・・・本当の名前を隠して一人ぼっちで」
「ふふ・・・まさか・・・今度は夫が失踪して犯罪者になるとは思わなかったでしょうね」
「う」
「まあ・・・捜査資料からあなたの元・妻が早乙女真紀であることが判明して手間が省けました」
「僕は・・・彼女から逃げ出しただけじゃなく・・・彼女を不幸せに・・・」
「まあ・・・何が幸せで・・・何が不幸かは人それぞれでしょう。彼女が加害者のために存在を消したのか・・・それとも別の事情があるのかも・・・何れ明らかになりますよ」
心を隠している様子が見える大菅刑事・・・。
それが単に職業的なものかどうかは定かではない。
山本彰子の年令は十歳プラス十二年プラス十四年でおよそ三十六歳。
加害者の少年は現在、三十八歳で・・・少年の弟は二十六歳である。
大菅刑事を演じる大倉孝二の実年齢は四十二歳である。
松たか子の実年齢が三十九歳であるから・・・大菅刑事が加害者少年となんらかの関係のある人物である可能性は微かに残されている。
同僚刑事がつぶやく。
「どちらなんでしょうね・・・加害者のためか・・・それとも・・・男の不審死に関連しているのか」
大菅刑事は皮肉な笑みを消してポーカーフェイスになるのだった。
大学を卒業するまで山本彰子だった女が・・・早乙女真紀というプロの奏者になることに些少の困難さを感じないでもないが・・・関係者には芸名を装っていたということなのだろう。
そもそも戸籍を売った早乙女真紀が生きていることの方が問題だよな。
普通は埋められているか・・・沈んでいるかだよな。
二人の刑事たちは冬の軽井沢を目指すのだった。
軽井沢の商店街を散歩するカルテット・ドーナツホールの第一ヴァイオリン・サオトメマキとチェロ・世吹すずめ(満島ひかり)・・・。
「見るだけ~」
「見るだけ~」
二人は服飾店に入る。
「似合う」
「すずめちゃんの方が似合う・・・すずめちゃんの誕生日って・・・四月だっけ」
「三日です・・・ええっ・・・何かプレゼントしてくれるの?」
「聞いただけ~」
「真紀さんは・・・八月?」
「八月十日・・・ええっ・・・プレゼントしてくれるの?」
「聞いただけ~」
二人は姉妹のように・・・ブランコを漕ぐ。
「真紀さん・・・もっと漕いで」
「私はこれで充分よ」
別荘ではヴィオラ・家森諭高(高橋一生)と第二ヴァイオリン・別府司(松田龍平)が食事の支度をしている。
「ただいま」
「お帰りなさい」
「卵買ってきた」
「卵ありますよ」
食卓に猫の声が届く。
「隣の猫ちゃんですね」と別府。
「うちも猫飼いたいですね」とすずめ。
「留守にしてる間・・・かわいそうでしょ」とヤモリ。
「熱帯魚とかどうですか?」とサオトメマキ。
「ニモとか」
「ニモ可愛いですよね」
「ニモって」とヤモリ。
「ニモですよ・・・」
「これなんですか」
「ホッチキス」
「違います・・・これの名前はステープラー・・・バンドエイドは絆創膏・・・ホッチキスは商品名でしょ・・・バンドエイドも商品名でしょ・・・ポストイットは付箋紙・・・タッパーはプラスチック製密閉容・・・器ドラえもんは猫型ロボット・・・YAZAWAは矢沢永吉・・・トイレ詰まったときのパッコンはラバーカップでしょ・・・あと君また袖にご飯粒つく!・・・ほら・・・カピカピ・・・ほら・・・あの魚の名前はカクレクマノミ・・・ニモは商品名です・・・本当の名前で呼んで」
固有名詞と・・・商品名との心情的問題の話である。
コマーシャリズムによる言葉の汚染問題には表現者のポリシーがからんで複雑だ。
チャイムの音が響く。
ヤモリに辟易した三人は先を争うように玄関に向う。
「わしを倒してから行け」は「千と千尋の神隠し」の青蛙(我修院達也)の声色と思われる「わしにもくれ」のヴァリエーションか・・・。
来客者は別荘売買に関連した業者だったらしい・・・。
ついに・・・別荘売却の一件を知ることになる別府以外の三人・・・。
「ここ・・・売っちゃうの」
「実家でそう言う話が出ていて」
「ここなかったらカルテットできないってわけじゃないし」
「僕も就職するから」
「それじゃそっちが本業になっちゃいます」
「いいんじゃないですか?」
「よくありません・・・仕事やバイトが優先になって・・・・シフトがあるからって・・・本来やりたかったことができなくなった人・・・僕はたくさん見てきました」
「でも・・・将来ホントにキリギリスになっちゃって」
「飢え死にしちゃって」
「孤独死しちゃって」
「子供バイオリン教室の頃からちゃんとしてなかった子達は今世界中で活躍してます・・・飢え死に上等・・・孤独死上等じゃないですか・・・僕達の名前はカルテットドーナツホールですよ・・・穴がなかったらドーナツじゃありません・・・僕は皆さんのちゃんとしてないところが好きです・・・たとえ世界中から責められたとしても僕は全力でみんなを甘やかしますから」
「穴がなくなったら揚げたパンですね」
「カルテット揚げパン・・・」
「アンコとか入るんじゃないの・・・アンドーナツ」
「この別荘は僕が守りますから」
「ありがとう」
「ノクターン」の従業員控室で・・・アルバイト店員・来杉有朱(吉岡里帆)が悲鳴を上げる。
素晴らしいインターネットの世界での株式投資に失敗したらしい。
お金を信じるアリスは一瞬で失われた金額に絶望を感じるのだった。
そこにシェフの大二郎(富澤たけし)がやってくる。
素早くハイヒールの踵を折って・・・修復を求めるアリスなのだった。
「シェフって・・・この店のオーナーなんですよね」
「二代目だけどね」
「凄いな・・・」
ホール担当責任者の多可美(八木亜希子)は夫の大二郎の誕生日を祝い・・・サプライズでケーキを用意していた。
やってきたカルテットを引き連れて・・・大二郎を探し始める多可美・・・。
損失を埋めるために・・・大二郎を誘惑しはじめるアリスなのである。
「大二郎さん肩幅も広いし」
一同はアリスの誘惑を覗き見るのだった。
「何か疲れちゃった」と背後から攻めるアリス。
「何だろう」
「猫ですね」とアリスの弟子であるすずめが解説する。
「最近・・・寂しくって」
「雨に濡れた仔犬です」
「あのね~大二郎さん・・・私・・・」と正面に回るアリス。
「虎です・・・虎になりました」
多可美は鬼の形相である。
しかし・・・そんなことは万に一つもありえないのだが・・・大二郎にはアリスの誘惑が通用しないのだった。
「そういうのやめてくれる・・・僕ママのこと愛してるんで」
「・・・そうですか」
アリスは素早く撤退して・・・誘惑相手の妻とカルテットに遭遇するのだった。
「おはようございます」
壊れたハイヒールでにこやかに挨拶する手負いのアリスである。
蝋燭はケーキを燃やした。
泥棒猫(未遂)のアリスは多可美によって解雇された。
いかなる時も笑みを絶やさないアリス。
ただし・・・常に目は笑っていない。
「多可美さんどうもありがとう・・・多可美さんだ~い好き」
手切れ金上乗せの退職金に喜ぶアリスは多可美をハグする。
「真紀さん・・・私のこと忘れないでね」
「たぶん忘れられません」
「家森さん・・・いつスキー連れてってくれるんですか?」
「こっちから連絡します」
「ええっと」
「別府です」
「別府さん大好き!」
しかし・・・何故か別府とはハグしないアリスである。
「すずめさん・・・私と組んで何か大きいこと」
難色を示すすずめだった。
退場の花道でスポットライトを浴びるアリス。
「不思議の国に連れてっちゃうぞ~」
地下アイドル時代の決め台詞を投げかけるアリス。
思わず反応しかかるヤモリだった。
「・・・アリスでした・・・じゃあね・・・バイバイ」
退場したアリスはお約束で転倒するのだった。
「あ~ん」
「ドジっ子アピールですね」
「淀の方・・・」
「傾国の美女・・・」
「不思議の国はどこにあるんでしょうか」
すでに・・・お茶の間は知っている。
アリスにとって・・・この世界こそが不思議の国なのだ。
アリスはなんとか・・・自分の世界に帰ろうとして冒険を続けているのである。
そして・・・サオトメマキ・・・まきまき・・・ヤマモトアキコもまた・・・穴に落ちてしまったアリスなのだった。
アリスとアキコは魂の姉妹なのだ。
古くからショー・ビジネスの世界では芸と性は不可分なものである。
しかし・・・芸を売っても身は売らぬことに乙女たちは憧れるのだ。
そして・・・様々なドラマが生れ・・・様々な事件が起こるのである。
苦界に沈みアリスは芸を見失い・・・洗練されたアキコは性を見失ったのである。
歌姫と奏者の分かれ道・・・。
別府は実家に戻って・・・別荘の件について交渉をする。
ヤモリは就職活動に出る。
すずめは業務中に・・・昼休憩で別荘に戻る。
「お昼あるかな~」
「中華丼なら」
「いただきます」
「仕事どう?」
「パソコン使えるの私だけだから・・・たぶんもう少しで乗っ取れると思う」
「すずめちゃん・・・会社員だったんだもんね」
「真紀さん・・・ずっと東京でしょ?・・・地下鉄とかですれ違ったりしたかも」
「地下鉄で・・・」
「チェロ背負った小学生とバイオリン背負った中学生が・・・改札口とか連絡通路とか隣同士の車両とかで・・・」
「・・・」
「まわりは嘘ばっかりだったから・・・自分もどっか遠くに行きたいなって・・・いつも思ってて・・・真紀さんみたいに嘘がない人と出会ってたら」
「うちからちょっと離れたとこに空き地があったの・・・そこにね廃船があったの・・・そこで寝そべって一晩中星を見たり・・・そこにいるとねそのままワーって浮き上がってどっか遠くに行けそうな気がしてた」
「・・・オールのない船で・・・星の破片が降りつもって・・・」
「そして・・・軽井沢に着いたの」
「軽井沢行きだったんだ」
「ここに来たかったんだ・・・もう十分だなって思うの・・・ねえ・・・キクラゲ食べる?」
「キクラゲ・・・戻らないんじゃないですか・・・ランチタイムの間に」
一日の終わり・・・。
サオトメマキとすずめはご馳走を作って待つ。
別府は説得に失敗して意気消沈している。
「弟さんと喧嘩したんですか」
「チワワに噛まれて・・・弟に絆創膏貼ってもらった」
ヤモリが就職を決めて帰宅する。
「ノクターンに決まりました」
「え」
「アリスちゃんの後釜です」
「祝賀会ですね」
「ヤモリさんはパンツを穿いてください」
「パンツだけはいてる人とパンツだけはいてない人どっちがまともな社会人?」
「どっちもまともじゃありません」
「仕事と趣味両立すればいいじゃないの・・・どっちも稼げるわけだし」
「咲いても咲かなくても花は花です・・・私の考えたことわざです」とサオトメマキ。
「起きてても寝てても生きてる」とすずめ。
「つらくても苦しくても心」と別府。
「でも一度でいいから大きなホールで演奏してみたい」とすずめ。
「映画でも見ましょう・・・STARSHIP VS GHOST・・・って映画なんですけど宇宙船も幽霊も出てこないんですよ」
「・・・」
サオトメマキはソフトをふざけて投げ捨てる。
そして・・・刑事たちが到着する。
「早乙女真紀さんはご在宅でしょうか?」
「え」
「少しお話よろしいですか?」
「何でしょう?」
「山本彰子さんですよね?」
「・・・」
「任意同行のお願いにまいりました」
「間違いじゃないですか・・・」とすずめ。
しかし・・・サオトメマキの表情を見たすずめは・・・間違いではないことを察するのだった。
マキは・・・アキコだったのだ。
「富山県警まで御同行願いたいので・・・明日、改めてお迎えにあがります」
「はい」
刑事たちが去るとアキコは階段を昇る。
「真紀さん・・・」
「ごめんね・・・すずめちゃん・・・私たち・・・地下鉄ですれ違うはずなかったの」
アキコは逃亡を考える・・・しかし・・・逃げてどうなるというのだろう。
「真紀さん」と部屋の外から声をかけるヤモリ。
「ちょっと・・・待ってください・・・」
「大丈夫ですか」
「はい」
アキコは覚悟を決めた。
「私・・・昔・・・悪いことしたから・・・それが今日返ってきたんです」
「真紀さん・・・」
「ごめんなさい・・・私・・・早乙女真紀じゃないです・・・嘘ついてたんです・・・私・・・嘘だったんです・・・本名は別です・・・戸籍買って逃げて東京行きました・・・それからずっと早乙女です・・・ニセ早乙女真紀です・・・なりすまして・・・幸いずっとバレなくて調子乗って結婚しました・・・名前もらってしれっとしてずっとだましてました・・・皆さんのこともだましました・・・カルテットなんか始めちゃって仲よくしたフリして・・・嘘だったんですよ・・・明日の演奏終わったら警察行ってきます・・・もうおしまいです・・・お世話になりました・・・本当の私は・・・」
「もういいよ・・・もう何も言わなくていい真紀さんが昔誰だったかとか・・・私達が知ってるのは真紀さんで・・・他のとかどうでもいい・・・」
「私は皆さんを裏切って」
「人を好きになることって絶対裏切らないから・・・知ってるよ真紀さんがみんなのこと好きなことくらい・・・それは嘘なはずないよ・・・だってこぼれてたもん・・・人を好きになるって勝手にこぼれるものでしょ?」
「・・・」
「道で演奏したら楽しかったでしょ?・・・真紀さんは奏者でしょ?・・・音楽は戻らないよ・・・前に進むだけだよ・・・心が動いたら前に進む・・・好きになったとき・・・人って過去から前に進むでしょ・・・私は真紀さんが好き・・・今ね・・・信じてほしいか信じてほしくないかそれだけ聞かせて」
「信じてほしい・・・」
「じゃあ・・・別府さん推しの映画みましょうか」
ヤモリは暖炉の火を熾す。
別府はハーブティーを四つのカップに注ぐ。
恐ろしくつまらない映画が始る。
「別府くん・・・この映画いつ面白くなるの?」とヤモリ。
「スターシップは・・・」
「ゴーストは・・・」
「だからそういうのを楽しむ映画なんです」と別府。
アキコとすずめは・・・「ビームフラッシュ」や「ステイック・ドミノ」に興ずる。
ヤモリは別府にからむ。
「人生やり直すスイッチがあったら押す人間と押さない人間がいて・・・僕はね・・・もう押さない・・・何故なら・・・みんなと出会ったからね」
「・・・」
別れの夜を堪能して・・・アキコは眠りに誘われた。
朝が来て・・・アキコはすずめと窓辺に佇む。
「曇ってますね」
「曇ってるね」
二人にとってそれはいい天気なのだ。
「ノクターン」で「カルテット」は思い出の曲を奏でる。
「アヴェ・マリア/フランツ・シューベルト」そして「モルダウ/ベドルジハ・スメタナ」・・・。
音楽は始り・・・進み・・・そして終わる。
「明日のパン・・・ないかもしれません」
「帰りにコンビニに寄ろう」
「シャンプーはまだありますね」
「買い置きが戸棚に」
「そんなとこですね・・・」
「やっぱり・・・あの別荘春になるとリスが来るそうです・・・雨が降ると玄関に座って雨宿りするそうです・・・春になったら見ましょうね」
ヤモリはアキコの髪をセットした。
「ありがとう」
「綺麗ですよ」
「家森さん・・・私も人生やり直しスイッチはもう押さないと思います」
「はい」
「別府さん・・・あの日カラオケボックスで会えたのはやっぱり運命だったんじゃないかな?」
「はい」
アキコはすずめにヴァイオリンケースを示す。
「すずめちゃん・・・預かっててくれる?」
「・・・誕生日いつ?」
「六月一日」
「この子と一緒に待ってるね」
「じゃ・・・ちょっとお手洗いに行ってきます」
アキコは警察車両に乗り込んだ。
ラジオから流れる天気予報。
「ラジオ切ってもらっていいですか?」
「富山まで結構ありますよ」
「頭の中に思い出したい音楽がたくさんあるんです」
マキマキ/サオトメマキ/ヤマモトアキコのいない夜。
奏者たちは泣き濡れる。
すずめはご飯を炊いて豆腐とワカメのみそ汁を作り鮭を焼いた。
泣きながらご飯食べたことある人は生きていけるから。
関連するキッドのブログ→第8話のレビュー
| 固定リンク
コメント
クドカンと、ゲゲゲのお兄さん…顔面vs顔面、息詰まる面談(ほめ言葉)。
ああ、なるほどそういう見方が…。そう言われて見てみると面白さ二倍二倍でした。同僚の言葉を遮って「軽井沢に何時に着くかな?」みたいな部分とかもう…。
地下アイドルにもちゃんと脚本的意味があり、猫も犬も虎もやってみて去るノブちゃんが「大好き!」と笑っていない目で言うことすらも、あとからやってくる松たか子の放心その他の表情を堪能するための助走だったのだというところがすごいなーってと思うわけであります。
ただ予告篇の「1年後」みたいな続篇内包型?の展開は実はあまり好きじゃなくて、でも実際に観てみるまではわからない。
ちょっと警戒しながらも、一週間後が待ち遠しい…。
投稿: 幻灯機 | 2017年3月15日 (水) 21時42分
✪マジックランタン✪~幻灯機様、いらっしゃいませ~✪マジックランタン✪
演歌歌手が娘にヴァイオリンを習わせる。
異世界へのあこがれが滲み出るところでございます。
おかしなウサギに誘われてうっかりとんでもない世界に迷い込むアリスはつまりス・リ・ルが人を災いに招くということでございましょう。
スリッパ・リス・ルンバでございます。
魅惑ですな。
スリッパのどこがだよ。
パコーンとはたかれる恐怖です。
「ぺっぴんさん」のノリオさんがのたまう「考えさせる映画」であれば・・・意味深なまま終わる今回が最終回でもなかなかに澱みないことです。
今回が最終回だと思ってみれば・・・最後の晩餐がすべての始りというニュアンスで・・・ああ・・・これで終わりかと哀愁漂いましたよねえ。
小劇場のスターである二人の
息詰まるかけあい芝居・・・。
ネズミをいたぶるネコのような刑事の悪魔ぶりに
うっとりでしたな。
世界中の魔術師が晩年を過ごすと言う・・・
魔法のメッカ「軽井沢」へ・・・。
来週・・・もう一度、行けることをここは素直に喜びたいところでございます。
だってもっとみぞみぞしたいのでございましょう?
投稿: キッド | 2017年3月16日 (木) 04時34分
なぜ! なぜキッドさんは私がこのコメントの直前に「げ・ポ・あ」の『スリル 赤の章』を観て「最終回?に限ってはお茶の間的にはきわどい責めまでいきかけながら小松菜奈のこの4エピソードがツンデレ(しかも頭がイイ! ハードナッツよりももイイかも) として収束」して結構じわじわ来ていたのを知っているのでしょうか。みたいな。
そしてその最後の一行…
ああ、なんで私はドラマレビューのコメント欄で泣いているんだろう。
キッドさん、私と組んで何か大きな…(笑)。
ああ、マキマキの真実が分かったときは半日かなりショックだったなですよ。
某所では「そういう伏線が無いところがいけない」みたいなことを書いているひとがいるけれど、そういう伏線が無い→うそが全くなさそう(すずめちゃん談) →脚本的には夫さんでカモフラージュしているあたりが逆伏線なのでは……。
ていうか、上り坂下り坂まさか…なんて結婚式の三つの袋のスピーチかよ!っていうゆるゆるなことを第一話から他のゆるゆるなことに混ぜこんでいて、そしてここへきてコレ。
しかも配役が坂本美雨…ネバーエンディングストーリーーーー♪
マキマキがいなくても夜は更けていき、朝ごはんを作るときがくる。ゴボウ、豆腐…
ああ、いろいろとこの重層的な脚本。ほんとうっとりです。
投稿: 幻灯機 | 2017年3月16日 (木) 18時25分
✪マジックランタン✪~幻灯機様、いらっしゃいませ~✪マジックランタン✪
なぜかと問われれば・・・悪魔なのでとしか答えようがございませんが・・・。
情報の海の中で・・・同じ海岸に打ち寄せる波同志ということでございましょうねえ。
私の愛するロックンローラーが「メロディーと言葉とは水平線の彼方で結ばれている」と申しておりました。
夜ともなれば瞑い海と瞑い空の境界線はないようなものでございます。
いつだって雨だれはショパンの調べですよねえ。
スリル!もハードナッツもニヤニヤしながらアリスがノコノコと罠にはまりにいくところが・・・たまらなくキュートでございます。
そういう意味では・・・アリスもマキマキも飛んで火に入る夏の虫の一種と申せましょう。
キンピラゴボウはうっとりしますな。
七味唐辛子の加減が上手くいくとたまりませんな。
このドラマに伏線などと言う言葉は似合いませんねえ。
最初からすべてが明らかで・・・すべてが謎という究極の作品と考えます。
まきまきなんていう変な名前が・・・ただそれだけであるわけがなく・・・サオトメマキなんていう馬鹿馬鹿しい名前が本名であるわけがない。
鏡を見るようにアリスの笑わない目を見出した時点で
彼女もまた・・・不思議の世界に迷い込んだ少女であることは一目瞭然のこと・・・。
猫が飼いたいとすずめが言えば坂本美雨がやってくる。
ごはんができたよ・・・と言う他はない。
全員片思いだけど全員両思いなのですな。
さあ・・・カルテットというパーティーで
ガンガンいこうぜ・・・最終回でございまする。
投稿: キッド | 2017年3月17日 (金) 09時05分