永禄五年、井伊直親死す(三浦春馬)
桶狭間合戦の余波は永禄五年の松平元康と織田信長の同盟により・・・三河国からの今川勢の撤退と・・・遠州錯乱とも呼ばれる遠江国の国人衆と今川家との関係悪化を本格化させる。
永禄五年十二月に松平家への内通を疑われた井伊直親が掛川城主・朝比奈泰朝に討ち取られたこともまた・・・真相の定かならぬことである。
しかし・・・これを契機に遠江国の国人領主たちが次々に謀反を疑われ・・・今川家の命令に従う国人領主たちと互いに争うことになるのである。
結果から見れば・・・今川氏真は自ら・・・防波堤となる遠江国の家臣たちを殺したことになり・・・今川家の衰退を早めるわけである。
しかし・・・負け組である今川家と最終的な勝者となる徳川家では・・・語りたい史実が変容していくのが歴史というものだ。
その中で・・・今川家中から・・・徳川家に乗り越えて・・・見事に戦国時代を泳ぎ切った井伊家の語る歴史もまた・・・いろいろと・・・怪しいものになっていく。
そんなわけで・・・本当のところがどうだったのかは・・・よくわからない永禄年間を・・・実際にいたのかどうかわからない井伊直虎が物語られていくのだ。
まあ・・・ある程度・・・なんでもありなんだな。
で、『おんな城主 直虎・第12回』(NHK総合20170326PM8~)脚本・森下佳子、演出・渡辺一貴を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。画伯の体調がよろしくないようなので心配である。素晴らしいインターネットの世界では・・・御尊顔を拝したこともないのに非常に親しいように感じる方々があり・・・時に心穏やかならぬ時もあるのだが・・・基本的には妄想である。時にはお会いしたいと思うこともないのではないが・・・会わぬことこそが・・・妄想世界を確実なものにすると考えもする。お互い遠い世界に住んでいて・・・十万光年くらいの距離があって・・・だけど親しみを感じる。それが素晴らしいインターネットの世界の醍醐味である。・・・まあ・・・キッドは隣に住んでいる人や・・・親戚・・・古くからの友人にも滅多にあわないのでのでございますけれど。この世には素晴らしいのかどうかよくわからない現実世界というものがあり・・・それは結構面倒くさいものなのである。そういう意味で・・・もう少しなんとか上手く立ち回れなかったのかと思う・・・井伊谷の人々にもやもやしても・・・それは誰かの妄想に過ぎないと思えばなんとかスルーできるわけである。総髪から月代になった小野政次があれほど批判的だった父・政直と同じ道を歩み始める因果に・・・戦国時代の悲哀を感じますねえ。そして・・・奥山朝利の娘婿がまたしても登場・・・。一部家系図的には・・・奥山親朝~奥山朝利~奥山朝宗(孫一郎)~奥山朝忠(六左衛門)と続くわけですが・・・親朝の娘たちと・・・朝利の娘たちは一部混交しておりまして・・・まあ・・・代変わりすれば・・・姉妹も・・・家中の女の一人になるわけですからねえ。朝宗と朝忠も父子とする説と兄弟とする説もあるようですしね。とにかく・・・奥山の女たちは・・・国人領主たちに嫁ぎまくっていることは確かなようです。ドラマの登場人物では新野左馬助は奥山朝利の義理の兄弟で、中野直由は義兄弟あるいは娘婿、小野玄蕃はほぼ娘婿、井伊直親は確実に娘婿、そして井伊谷三人衆の一人、鈴木重時も娘婿・・・。そんな奥山朝利を暗殺したとなれば小野政次は一族中の爪弾き確実でございましょう。そういうことがあってもおかしくない戦国時代ではございますが・・・少なくとも井伊家が仕立て上げた小野政次の悪名を・・・このドラマは払拭する気なのだと思う今日この頃でございます。
永禄五年(1563年)十二月、井伊直親が朝比奈泰朝に襲撃され討ち死に。永禄六年(1563年)正月、本證寺第十代・空誓が三河国で一向門徒を蜂起させ松平家康と対立する。本多正信、蜂屋貞次、夏目吉信など多くの家臣が家康に離反した。七月、織田信長は美濃国攻めのために本城を新築した小牧山城に移転する。九月、天野景泰・天野元景親子が今川氏真から離反した疑いで攻められる。犬居城を攻めた井伊直平は陣中で没した。永禄七年(1564年)正月、元康は馬頭原合戦で一揆勢を破り、一向衆門徒は和睦に応ずる。二月、北条氏康は下総国で里見義堯・義弘父子を撃破する。八月、上杉輝虎が五回目となる川中島の戦いに出陣、武田信玄と対峙。九月、氏真は謀反の疑いで曳馬城主・飯尾連竜を攻め敗北。井伊家目付・新野親矩、井伊家家老・中野直由が討死。幼少の井伊家当主・井伊虎松(井伊直政)は一族の守護者を失うことになる。この頃、井伊直盛の娘・次郎法師が井伊直虎を名乗り井伊谷城主になったという伝承がある。十月、上杉武田両軍は川中島から撤収する。氏真は飯尾連竜の姉を室とする遠江二俣城主・松井宗親を駿府に召喚しこれを謀殺した。
「氏真様は・・・御所の仇討ちをする気概もないのか」
井伊直親は馬上で呟いた。
井伊谷領の継承を安堵された御礼を言上するために・・・駿府へ向かう直親は前夜、掛川城の朝比奈泰朝の接待を受けた。
桶狭間の合戦で馬を並べた養父・井伊直盛の武者ぶりを泰朝が物語ったのである。
養父の無念の死に・・・涙した直盛は・・・仇討ちをしたいと感じたのだった。
氏真は一度は遠江国三河国の国境まで軍を進めたが・・・戦わずに兵を引いている。
「滅多なことを言うものではありませぬ」
直親の実の父である井伊直満の代から仕え・・・直親の信濃国亡命に十年も付き従った勝間田の忍びである今村藤七郎が直盛を諌める。
「しかし・・・あまりにも覇気がないことではないか」
「戦には潮時と言うものがございます」
「・・・」
「御所様も・・・尾張に織田信秀殿が存命だった頃には・・・苦戦なされておったとか・・・信秀殿が死んで・・・代替わりした時・・・御所様は一気に三河国から尾張国にまで進出なされた・・・」
「しかし・・・御所様はその信長に討たれてしまったではないか」
「だからこそでございます・・・誰もが御所様の勝利を疑わなかったところを・・・あえない御最後・・・世間は尾張の信長というものを天魔の如く惧れているのでございますよ」
「・・・」
「国衆は誰も負けるものに味方などしたくないのです」
「戦っても必ず負けるとは限らぬだろう」
「旗色が悪いのでございます。それが証拠に・・・御所様から元の字を拝領した松平様までが・・・織田に靡いたのです」
「松平元康など裏切り者ではないか」
「元康様の奥方は・・・殿と同じく直平様の孫にあらせられますぞ・・・殿は口が過ぎるのです」
「藤七郎とてそのように口がうるさいではないか」
直親は口をとがらせた。
すでに二十代半ばを越えているのに・・・直親は幼さを滲ませる。
家臣でありながら・・・永らく親代わりであった藤七郎には甘えたくなるのだった。
「しっ・・・」
藤七郎の顔色が変わった。
馬を飛び降りた藤七郎は地面に耳をつける。
「何者かがやってまいります・・・おのおの方・・・用心召されよ」
やがて・・・掛川城の方から騎馬武者の集団が現れた。
「肥後守殿・・・待たれよ」
直親を受領名で呼ぶ先頭の武者には見覚えがあった。
昨夜の接待の席にいた朝比奈泰朝の家来である。
「何事か」
「主の命により成敗いたす」
「何」
すでに背後の武者たちが弓を構えている。
次の瞬間・・・無数の矢が二十人ほどの直親主従に襲いかかる。
藤七郎は抜刀して矢を斬り払い主を身を持って庇うために跳ぶ。
無数の矢が藤七郎に刺さった。
「殿・・・お逃げくだされ」
振り返った藤七郎は直親が馬から崩れ落ちるのを見た。
直親の背には無数の矢が突き刺さっていた。
直親主従は前後を挟撃されていたのである。
無傷なものは一人もいなかった。
「何故じゃ・・・」
呻きながら身を起こそうともがく直親を横目に槍を構えた足軽たちに応じる藤七郎。
しかし矢毒がたちまち身体を痺れさせていく。
「殿」
藤七郎は槍に貫かれていた。
朝比奈泰朝が姿を見せた。
「せめてもの情けじゃ・・・」
泰朝は四つん這いになった直親の首を一刀両断にした。
泰朝の家来たちは・・・直親の郎党たちにとどめをさしていく。
たちまち・・・静寂がやってくる。
「井伊谷に使いを出せ・・・直親様は・・・野伏せりに襲われて・・・武運拙く亡くなられたとな」
泰朝の家来が首を塩漬けにするための甕を持って現れる。
泰朝は直親の幼名を知っていた。
「亀の首が甕に入る・・・か」
泰朝は乾いた笑みを浮かべた。
関連するキッドのブログ→第11話のレビュー
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コメント
お初です!
何故か?ここに迷い込んでしまいました。
そして、このブログが何だか、分からないまま…とりあえず、足跡だけ残し、消えます(^^;;
投稿: ツボ | 2017年3月30日 (木) 22時02分
およそ・・・十年間・・・ドラマについての妄想を書き続けたブログです。
名作ほど・・・再現性が高まってしまうので・・・
いつもヒヤヒヤしながら書いていましたが・・・
まあ・・・とにかく・・・ひとつの表現でございます。
なんだかわからなくて・・・申し訳ありません
投稿: キッド | 2017年4月 4日 (火) 08時48分
返信ありがとうございます。
僕のコメントが、悪くて気を遣わせて申し訳ありませんでした。
実は、かつて放送作家・構成作家として活躍していたキッド氏の事を調べているうちにこのブログに辿り着きました。
その事をキチンと書けば良かったのですが、言葉足らずの変な文章になり、反省しております。
投稿: ツボ | 2017年4月 4日 (火) 23時05分
丁度休眠期間に突入するところだったので遅くなってしまいました。
キッドのことを調べているとは奇特な方でございますね。
現役ではなくなってもう二十年ですので・・・情報も少ないことでしょうが・・・。
どうか精進なさってください。

投稿: キッド | 2017年4月 5日 (水) 19時05分