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2017年5月21日 (日)

永禄八年、高瀬姫現る(髙橋ひかる)

ええと・・・戦国時代ですよね。

少なくとも・・・井伊直親の血をひく娘である以上・・・井伊家の姫である。

演じる高橋ひかるの実年齢が15歳なので・・・天文十九年(1550年)生れとなる。

井伊直親が天文五年(1536年)生れなので十四歳の時の子供ということになる。

天文十三年(1544年)に井伊谷から信濃国に亡命した直親が井伊谷に帰参するのが弘治元年(1555年)である。

まあ・・・演じる人の実年齢と役の年齢は必ずしも一致しないので・・・基本的に亡命中に現地の女との間に出来た姫ということになる。

その登場が・・・そんなに驚くようなことなのか。

そもそも・・・高瀬姫の存在は隠すようなものではないし・・・周知の事実ではないのか。

だが・・・そういうドラマにしているのだから・・・お茶の間がああだこうだ言っても無駄なのだな。

ただ・・・茫然とするしかないのである。

で、『おんな城主  直虎・第19回』(NHK総合20170514PM8~)脚本・森下佳子、演出・渡辺一貴を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。さて・・・2017年春ドラマを待ちながらという記事もなく・・・冬ドラマの延長線上として大河ドラマのレビューのみの体制に移行してクール(季節単位)の半分を消化したわけである。名手・森下佳子にちょっと期待しすぎて・・・キッドとしては微妙な気分である。ある種の女の愚かさ、したたかさ、それでもなんとか生きて行く感じは・・・持ち味である。馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な女の恨み節が炸裂しているとも言える。愚かな女とそれを生み出す残酷な世界の対比は・・・「白夜行」であろうと「わたしを離さないで」であろうと「平成夫婦茶碗」であろうと「ごちそうさん」であろうと一巻しているといえる。しかし・・・キッドの愛する戦国時代が舞台となると・・・かなりの違和感を感じるわけである。まず・・・農民たちが・・・なんとなく江戸時代の百姓風である。徳川家康が構築した究極の封建制度の下における向上した生産性と重厚な身分制度下の百姓風なのである。綿花の生産に着手したりして・・・それなりに上を向いて歩いているらしい。そういう意味で・・・おんな城主直虎は・・・雪穂の憧れた「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラなのかもしれない。つまり・・・南部の女農園主である。そしてなんといっても・・・永禄八年の遠江国は動乱の真っ只中にあるわけで・・・こんなにまったりしてもらっては困るとも思うのだった。永禄三年の桶狭間の敗戦から五年・・・織田徳川連合軍の圧迫は日増しに強くなり・・・家康が三河一国を制した永禄八年・・・駿河本国の今川家と遠江国の国人領主たちの関係は微妙なものとなり・・・今川家当主は・・・遠江国の国人領主たちに疑惑の目を向けて・・・謀反と称して領土の直轄化を目論むわけだが・・・そこを徳川家につけ込まれるわけである。井伊家を率いる中野直由はこれに便乗し勢力拡大を図るが曳馬城主・飯尾連龍を攻めてあえなく討死。事実上の討伐失敗である。今川氏真は一旦、連龍と和睦するが・・・結局、この年の暮れ・・・謀殺で手を汚すことになる。そういう殺伐とした雰囲気がないわけである。山賊たちは・・・村々の女たちをかどわかし・・・刹那的で享楽的な日々を過ごしていないとな・・・。泥棒貴族じゃないんだから・・・。

さて・・・2017年の春ドラマもいろいろと面白い・・・。なんといっても「フランケンシュタインの恋」があるからな。「ヤング・フランケンシュタイン」「シザーズ・ハンド」そして「フランケンシュタインの恋」である。

「事件をもみほぐすマッサージ探偵」とか・・・「どんな気持ち」と聞いてくる携帯執事の仲間由紀恵とか河童の念力でパンチラを披露する山本舞香とか・・・変な女子行員とか・・・最初誰だかわからなかった桜子さんとか・・・まあ・・・いろいろと楽しいぞ~。できれぱ・・・これをやめてそっちをレビューしたいくらいだよ。

Naotora019 ドラマなのでフィクションなのである。しかし、歴史を題材にしている以上・・・ある程度は本当らしさも求められる。まことしやかに語られてこその虚構なのである。もちろん・・・虚実というものは曖昧なものである。キッドが大河ドラマのレビューをするにあたって構築しているこの記事は四段構成になっている。前フリとしてドラマで語られるフィクションについての雑感。次にドラマの放送年月日や脚本家や演出家などの基礎データとともにレビュー仲間であるikasama4画伯へのメッセージの体裁をとったドラマ全体へのとりとめない感想。そして年表的にふりかえることにより、歴史そのものが一種の虚構であることを皮肉るこのコーナーなのである。さらに最後にはドラマという妄想に対するキッド自身の妄想で返礼するという形式になっている。しかし・・・今年は去年が抜群であったためか・・・ドラマそのものの嘘っぽさに・・・なんていうか・・・年表で応ずることが馬鹿馬鹿しくなってきている。なにしろ・・・主人公が大活躍するためにあれやこれやと騒動が起きすぎなのである。そして・・・あまりにも乙女チック展開なのである。なんだか真面目に応ずるのが・・・とても恥ずかしいのだった。

「まあ・・・おもしろなんだよな」

「そもそも・・・井伊直虎そのものがおもしろだからな」

「歴史こぼれ話的な」

「囲み記事的な」

「おもしろなんだよね」

「桜田門の変で有名な井伊直弼の先祖の徳川四天王の一人・井伊直政の養親・井伊直虎は実は女だった」

「そういうウソのような本当の話的なおもしろにすぎない」

「それをお話し上手の脚本家がおもしろおかしくふくらまそうとしているんだよね」

「そして・・・主人公は・・・自意識過剰で・・・乙女チックで・・・少しおバカさんにしたてあげられている」

「でも・・・ひとりよがりでも・・・根性あればなんとかなるんだよね」

「そういう朝ドラマのヒロインに記憶があります」

「まあ・・・いいんじゃないのかな」

「これはこれでええええ」

「ごちそうさん」

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2017年5月14日 (日)

永禄八年、武田信玄が嫡男義信を幽閉す(柴咲コウ)

うわあ・・・まだ永禄八年(1565年)なのかよ・・・。

永禄四年(1561年)生れとされる虎松(井伊直政)が数えで五歳だからそうなんだけどね。

数え年というのは生れた年を一歳と数える年齢のことである。

十二月三十一日に生れると翌日には数えで二歳になります。

満年齢だと一歳にもならないので・・・感覚に狂いが生じるひとつの要素です。

数え年だと誕生日に年をとるのではなくて・・・みんな正月に年をとるわけです。

さて・・・松平家康の家臣・酒井忠次が今川氏真の家臣・小原鎮実の守る三河国吉田城を開城させた年である。

だから、まだ徳川家康にはなっていないのだった。

武田信玄が嫡男・義信を幽閉するのは十月のこととされている。義信の傅役である飯富虎昌らが信玄暗殺を計画していたというのがその理由ということになる。

義信の正室となっている嶺松院の母は今川義元の正室で武田信玄の姉である定恵院である。

つまり従兄妹同士の婚姻となる。これによって武田義信と今川氏真は従兄弟であり義兄弟にもなっているのだった。

その義信が幽閉されるというのは・・・今川家を揺るがす大事件なのである。

一方・・・この年・・・織田信長の姪である龍勝院と信玄の四男である勝頼が婚姻したとされている。

今川家にとって・・・それもまた大事件であっただろう。

義信の幽閉とともに嶺松院は離縁されたという説もあるが定かではない。

とにかく・・・まだ・・・永禄八年だったんだな・・・。

で、『おんな城主  直虎・第18回』(NHK総合20170501PM8~)脚本・森下佳子、演出・藤並英樹を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。ついに次回が始ってしまう感じである。読者の皆様には申しわけないと思うのだが・・・画伯の描き下ろしもないし・・・記事作成者のモチベーションが・・・さて、数え年ついでに以前の記事にも書いた歴史ドラマ的な記述の問題点をもう一度。年号と西暦の関係についてである。西暦と年号の月日は必ずしも一致しない。たとえば三河国上ノ郷城主の鵜殿長照が討死したのは永禄五年二月四日(1562年3月8日)のことであるが・・・虎松こと井伊直政の父・井伊直親が討死するのは永禄五年十二月十四日(1563年1月8日)のことなのである。これを略すと長照は永禄五年(1562年)に死没し、直親は永禄五年(1563年)に死没したことになる。おわかりだろうか・・・正確な記述なのだが・・・人によっては書き間違いと誤解する可能性があるのではないかと・・・思うのだった。そもそも・・・当時は全国一律のカレンダーがあるわけではなく・・・地方それぞれに暦があったと言われる。同じ一月一日でも・・・それが確実に同じ日だったかどうかは・・・いろいろと断言しづらいことになる。当時の教養人が日記を書いていてその日付が歴史の一部になるわけだが・・・テレビの全国放送があるわけではないのである・・・各地の出来事は手紙や噂で伝わってくるわけである。それが本当はいつの出来事なのか・・・正確性には疑いが生じる。このように・・・戦国時代のあれやこれやは・・・もやもやの中に包まれているわけだが・・・あんまり・・・もやもやされてもなあ・・・と思うのだった。

Naotora018天文十年(1541年)、甲斐武田家の第十八代当主・武田信虎は嫡男・晴信(武田信玄)によって駿河に追放される。 天文十九年、信玄の姉で今川義元の正室の定恵院が死去。 天文二十一年(1552年)に定恵院の娘である嶺松院が信玄の嫡男・武田義信の正室となる。永禄三年(1560年)、桶狭間の合戦で義元が討死。永禄八年(1565年)、信玄の家臣であり、義信の傅役だった飯富虎昌に信玄暗殺の密議をした謀反の疑いがかけられる。十月、虎昌は自害。義信は謀反に加担した疑いで甲府東光寺に幽閉される。この時、嶺松院は義信と離縁したと言われる。十一月、信玄の四男・諏訪勝頼と織田信長の姪・龍勝院の婚姻が成立されたとされる。織田家と今川家は交戦中であり、同盟国である武田家が織田家と婚姻関係を結ぶことは今川家にとって裏切り行為であったと言える。勝頼と龍勝院の婚姻は史実であるがその時期については伝承の域を出ない。少なくとも武田今川同盟の象徴である武田義信と嶺松院の婚姻関係の解除や義信自身の幽閉は・・・今川家に衝撃をもたらしたと推測できるのだった。

秋葉山は信濃国、遠江国の国境を結ぶ霊山である。

古くから火伏せの神が宿ると言われる。

秋葉大権現はその体現者である天狗であった。

その実態は山の民であり、修験者である古き忍びの一族である。

山の神聖な空気の中・・・神通力を求める修験の者たちは過酷な行の果てに万人に一人の低確率でもたらされる奇跡を信じているのだった。

戦国時代に名を残す忍者たちの何人かは・・・そうした修行を行ったものであったとされる。

猿のように樹間を飛ぶ猿飛の術を会得したとされる佐助、念力によって霧を呼ぶことの出来た才蔵などはそうした神通力を会得したものたちである。

しかし・・・多くのものは狩人として・・・あるいは杣人として・・・山間で暮らす山の民にすぎない。

過酷な山の暮らしが強靭な肉体を作り上げ・・・時に兵士として有用だったのである。

だが・・・山の民は・・・官の支配を嫌い・・・独立自尊の気概が強かった。

秋葉山の修験のものは散在する山の民たちのネットワークの要であり・・・潤滑油の役割を果たしている。

松下一族はそうした修験のものの家系であった。

秋葉の山の主を自称する松下蓮昌もその一人である。

蓮昌は・・・山の民や天龍川周辺の農民の子を預かり・・・見所ありとみれば忍びとして育成するのである。

十歳にもみたない常慶坊もその一人であった。

しかし・・・常慶坊は早熟で天才の片鱗を見せている。

蓮昌は・・・常慶坊の覚えの早さに驚愕するのだった。

一を聞いて十を知る・・・常慶坊は・・・そういう才能を持っていたのである。

知能だけでなく体力も抜群であった。

常慶坊は・・・すでに大人顔負けの体術を会得している。

蓮昌はひそかに・・・常慶坊を「もののけ」として惧れている。

秋葉山の社に・・・常慶坊が姿を見せたのは紅葉の季節だった。

「蓮昌さま・・・ただいま・・・もどりましてございます」

「よう・・・もどった・・・甲斐の様子はどうだった」

「府中は静かなものでございました」

「武田のお家の動きはいかがか」

「あれは・・・信玄公の色香の迷い・・・正室より・・・側室に気が動いたのでございます」

「色香の迷い・・・」

「嫡男殿は・・・寺にて大人しく謹慎しております」

「さようか・・・」

「信玄公は・・・諏訪勝頼に特別目をかけておいでです」

「では・・・今回の騒動は・・・色ごとか・・・」

「いいえ・・・信玄公は・・・数年のうちに・・・駿河に攻めよせましょう」

「なんと・・・そのわけは・・・」

「それが戦国の世というものではございませんか」

子供に諭されて・・・蓮昌は鼻白んだ。

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2017年5月 7日 (日)

永禄十一年、足利義栄に室町幕府第十四代将軍宣下(柴咲コウ)

このドラマでは遠江国は常春の国のようにも感じられる。

いや・・・冬もあって春がきて・・・田植えをしたり・・・夏っぽかったりもするのだが・・・じゃあ・・・それが永禄何年の春なのか・・・夏なのか・・・よくわからないわけである。

永禄四年の早春に生まれた虎松こと井伊直政は永禄十一年には数えで八歳になっている。

虎松を演じる寺田心の実年齢はまもなく満九歳になり・・・概ね・・・そういう年頃なのだろう。

虎松の父・井伊直親は井伊直盛の娘・次郎法師にとって五親等の叔父であり・・・虎松は六親等の再従弟(またいとこ)ということになる。

井伊一族としては本家の娘と・・・分家の叔父を娶わせて総領とするつもりが紆余曲折あったわけである。

虎松の父親は・・・一応、総領家の養子となっているので・・・虎松は後継者として申し分ない資格を有している。

しかし・・・その後ろ盾となるのが・・・誰であるべきなのかは錯綜するわけである。

実際の処がどうだったのかは・・・謎に包まれている。

そのあたりのことを・・・のほほんと描いていくわけである。

もう・・・そういうドラマなんだと思って受け入れるしかないよねえ・・・。

で、『おんな城主  直虎・第17回』(NHK総合20170430PM8~)脚本・森下佳子、演出・藤並英樹を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。歴史に集合と離散はつきものです。大陸でも列島でも大集団・・・帝国が成立しては滅び・・・内戦状態になって・・・やがて統一されて・・・また分裂する。いわゆる・・・歴史はくりかえすというやつで・・・くりかえされることは本質でもあるといえるし・・・悲喜劇の温床でもございますねえ。権力で言えば集中と分散・・・。現代という情報社会では・・・情報の浸透と拡散というところでしょうか。情報の流行やトレンド・・・教養とリテラシー・・・そういうものも無縁ではない気がいたします。知識も経験もない人々が・・・知識や経験を嘲笑したり・・・勝者に敗者が追従する・・・実力と人間的魅力とは必ずしも一致しない。そういう様々な知恵の宝庫である歴史なんてどうでもいいというスタンスの大河ドラマも過去にありましたが・・・今回のは歴史は歴史として尊重するけれど・・・歴史だけがすべてじゃないでしょうというニュアンスが漂ってきますねえ。どちらかといえば・・・せせこましい・・・人間関係のもつれのリフレイン。まあ・・・そういうロマンもあってもいいと思う今日この頃です。

Naotora017天文十二年(1543年)、 種子島時堯がポルトガル人より鉄炮2挺を購入する。 1挺が根来寺杉坊・津田算長に譲られ、 根来僧による鉄砲隊が組織される。もう一挺は室町幕府第十二代将軍・足利義晴に献上されたとされる。種子島氏は鍛冶職人・八板金兵衛らに命じ火縄銃の開発に着手する。天文十四年(1545年)、種子島氏は国産火縄銃を完成する。天文十八年(1549年)、織田信長は近江国国友村に火縄銃五百挺を発注する。天文二十三年(1554年)、伊集院忠朗は島津貴久による岩剣城攻めで鉄砲隊を実戦に投入して戦功をあげる。この頃、紀伊雑賀衆も鉄砲隊を形成開始したと推測される。永禄三年(1560年)、桶狭間の戦いに際して信長軍は今川義元軍強襲において鉄砲隊による先制を行ったという説がある。永禄四年(1561年)二月、虎松こと井伊直政誕生。永禄五年十二月(1563年)、井伊直親暗殺。永禄八年(1556年)、虎松の後見人である中野直由(井伊氏)と新野親矩(今川家臣)が戦死。次郎法師が女地頭となったという説がある。永禄十一年(1568年)二月、足利義栄に室町幕府第十四代将軍宣下。三月、寿桂尼死去。

「すると・・・外記殿は・・・瀬名様とともに岡崎におられるのか・・・」

「織田家と徳川家の縁組が整い・・・ようやく・・・信康殿も岡崎の城に入られ申してござる」

「徳川・・・」

「松平の殿は・・・徳川を名乗られ・・・朝廷より三河守を賜れました」

「瀬名様の夫が・・・徳川三河守に・・・」

龍譚寺の月船庵は・・・井伊次郎法師直虎の陰の密会所である。

井伊谷の地頭としての井伊谷城とは別に・・・名目上の支配者である今川家に憚りのある要人はここに案内されることになっている。

龍譚寺には・・・治外法権の認可が与えられているのである。

事実上の徳川家康の密使である関口外記は・・・井伊谷の隠し目付の目にとまり・・・忍びの僧たちによって・・・月船庵に導かれたのだった。

「瀬名様はお元気か・・・」

「今川家の没落ぶりに・・・少し気落ちしておられましたが・・・嫡子・信康殿が・・・徳川家の世継ぎと決まりましてからは・・・生母として・・・御正室として・・・処遇され・・・今は落ち着いておられます」

「瀬名様も・・・苦労多きことよ・・・」

家康の独立の責を負い・・・瀬名の実母と養父は・・・自害して果てたのである。

「関口親永様は・・・わが義理の伯父でござった」

「さようか」

「関口家も・・・所領を失い・・・ほとんど離散したようなもの・・・」

「氏真公も惨いことをなさる」

「今川のお家も・・・しまいでござろう」

「さようかのう・・・」

次郎法師は言葉を濁す。

「盛者必衰でござる・・・勢い衰えれば豺狼の餌食となるばかり」

「おそろしきこと・・・」

「もはや・・・今川につくか・・・徳川につくかではござらぬ・・・」

「・・・」

「北の武田につくか・・・西の徳川につくかでございます」

「武田・・・」

「甲斐・・・信濃を制した信玄公は・・・父親を追放し・・・嫡男を幽閉した・・・油断ならぬお方・・・」

「やはり・・・今川と武田は手切れになるのかのう」

「武田家は・・・海を求めて・・・北へと向い・・・上杉家に行く手を塞がれました・・・南に・・・獲物があるとなれば・・・手を出さずにはおられますまい」

「で・・・あろうかのう」

次郎法師は言葉をはぐらかす・・・。

「瀬名様と次郎法師様の父御は・・・従兄妹同士・・・縁あさからぬことでございます」

「元康・・・いや・・・家康公にお味方せよ・・・と申されるか」

「それが井伊家のおためと心得る・・・」

関口外記は・・・顔を伏せた。

次郎法師は・・・無言でその姿を見つめている。

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