天使はチョルノーブィリで魔王となるのでしょうかと誰もが問いたい夜
ドラマは虚構であり・・・時に寓話的な性格をおびる。
ロシアがウクライナに対し暴力の行使を厭わない今日この頃。
キッドはドラマの主人公が青いセーターに黄色いパンツというスタイルでネクタイをした敵役に「私の右の頬を打ちなさい」と言い出した時身震いを禁じえなかった。
魔王が君臨し世界の滅亡が始まっている黙示録の幻想が脳内を駆け巡ったからである。
で、『となりのチカラ・第六話』脚本・遊川和彦、演出・竹園元を見た。
主人公の中越チカラ(松本潤)は妻・灯(上戸彩)と娘・愛理(鎌田英怜奈)そして息子の高太郎(大平洋介)とマンション「サニーパークハイム小金井403号室」に暮らすゴーストライターである。おそらく幽霊ではないのだろう。
チカラは自他境界線があいまいな人格で他人事に首をつっこんでしまうというトラブルメーカーなのだが、時には厄介事へのお節介が転じて事態が望ましい方向に向かうというお約束でお茶の間にひとときの平穏をお届けするのである。
今回は脚本家が執念を燃やす家庭内暴力展開である。隣人である402号室の木次学(小沢征悦)は様々ストレスを爆発させ支配下にある妻・達代(映美くらら)の鼓膜を破り、娘・好美(古川凛)を水責めするという虐待を継続している。
平和をこよなく愛するチカラはこの理不尽な暴力を見過ごすことができず・・・暴力亭主へ改心を促す行動に出るのである。
もちろん・・・暴力亭主にも悲しい過去がある。
弱肉強食の世界において平等の旗を掲げるためには世界同時革命の夢を追わなければならず・・・そのためには自分が世界から受ける屈辱を家族にも平等に与えなければならないのである。
しかし、平等よりも自由を愛する人類の性癖により、東西冷戦構造は破綻し、世界はたえまない競争を是とした。
経済の奴隷と化した母国の無様さは彼の心理をゆがませ屈辱がつのり帝王として君臨しながら絶え間ない苦痛に苛まれるのだった。
世界をあるべき姿に戻さなければならない。
ロシアの大地にポーレシュカポーレを鳴り響かさなければ生きた心地ががしないのだった。
そんな彼にも良心はある。しかし・・・戯言に耳を傾けるわけにはいかない。敗北主義者の老若男女が「戦争反対」と合唱しても警棒で躾けて言論弾圧し、自分自身に都合の悪い事実はすべて誹謗中傷と断じなければならない。
すべては正しい生存権の獲得のためである。
世界を唯一無二の自分自身が支配するまで・・・戦争は終わらないのである。
大丈夫だ・・・そもそも彼らはルール無用の悪党なのである。
どんな約束も必要であれば破り、殺し、犯す・・・そういう大多数を彼は率いているのである。
もちろん・・・勝敗は定かではない。
シャラポワがいかに戦火を悲しんでも・・・戦術的撤退を招いてしまっても・・・ロシアには鉄壁な冬将軍がついている。
最終手段として核の冬だって辞さないのだった。
彼の妻は娘と心中の覚悟をするまで追いつめられるが・・・チカラと灯は200万人の避難民を受け入れ・・・彼を暴力亭主として非難する。
妻と娘が避難した403号室に突入する彼。
チカラは「私を殴ってください」と犠牲を申し出る。
彼はチカラをなぐる。
チカラは痛みを感じる。
それが世界というものなんだなあ。
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