2017年2月20日 (月)

天文二十四年、松平二郎三郎元信元服す(菜々緒)

今川義元は清和源氏足利家筋吉良家の分家にあたる今川家の総領である。

ある意味で・・・時の将軍・足利義輝から血筋は遠いわけだが・・・実力的には駿河遠江二ヶ国の守護で三河国もほぼ領土化し・・・さらに尾張国を侵略中という太守となっている。

そのために全国から人材も集まってくる。

たとえば今川水軍を率いた伊丹康直は享禄ニ年(1529年)摂津国伊丹城が落城し父の元扶が討ち死にして諸国を放浪後、永禄元年(1558年)に駿河国に流れて今川義元に仕えることになる。

今回、検地の役人として登場する岩松氏が何者かは明らかではないが・・・岩松氏も足利氏流である。

しかし、母系に新田氏の流れもあり・・・南北朝時代には新田一族と足利一族の立場を使い分けて巧みに生き残ったと言われている。

岩松氏の一族には南朝方で戦った新田遠江又五郎経政(田島経政)などもいるわけである。

岩松氏本家は上野国新田金山城に拠ったが天文十七年(1548年)に家老の横瀬(由良)氏に岩松氏純が自害に追い込まれる。

没落した岩松一族が今川義元を頼ったことは充分に妄想できる。

今回・・・ドラマの中で小野但馬守政次は井伊の隠し田を「これは南朝の皇子の里」と言い逃れるわけだが・・・南朝方でもあった岩松氏としては「心得た」と言う他はなかったという妄想も成立するわけである。

基本・・・野武士経験のあるものは落ちぶれた南朝方にシンパシーを感じるのだ。

で、『おんな城主 直虎・第7回』(NHK総合20170219PM8~)脚本・森下佳子、演出・福井充広を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は三代続いた井伊家の家老で井伊直盛の家宰でもある小野政次の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。ドラマの中では井伊一門衆と家老家の対立軸が強調されていますが・・・そもそもは・・・井伊総領家の相続争いが葛藤を生み出しているわけでございます。叔父である直満の嫡男が総領家の直盛の娘に婿入りすることには分家による主家乗っ取りの気配があり・・・総領家の家老としては危機を感じて当然なのですよねえ。総領家とは言うものの国人領主の寄合所帯でございますからねえ。その上で隠居した直平や事実上の支配者である今川家との関係も良好に保たなければならない。そもそも・・・小野家は文武の文の方を担当するために抜擢されたらしい流れもあるのでなかなかに陰惨な関係が構築されていくわけでございます。さらには井伊谷宮や小野宮という氏神的な神道系と・・・龍譚寺に代表される臨済宗ネットワークとの軋轢も妄想できるところでございます。龍譚寺の高僧が小野神社に巣食った鬼を討ったとか屈服させたとかいう伝承が生れる勢いでございます。勝者の歴史の中で闇に消えた怨念がなかなかに蘇っているようでございます。毎週、闇落ちしている政次・・・どこまで墜ちて行くのか・・・。

Naotora007 明応元年(1492年)、大河内左衛門佐元綱の娘とされる於富の方が生れる。明応二年(1493年)、水野清忠の次男として忠政が生れる。永正八年(1511年)、松平信忠の嫡男として清康が生れる。大永五年(1525年)、清康が鈴木重政を攻める。大永六年(1526年)、清康が西郷信貞を攻め岡崎城を築城。清康の嫡男として広忠が生れる。享禄元年(1528年)忠政の継室となった於富の方が於大の方を出産。享禄二年(1529年)、清康が吉田城、宇利城などを攻め、三河国統一をほぼ達成。忠政は清康に降伏し、於富の方を離縁し、於富の方は清康の継室となる。天文4年(1535年)、清康は尾張攻めの最中に家臣の阿部正豊に斬られ死亡。松平信定が岡崎城を横領。広忠は暗殺を逃れ潜伏。於富の方は川口盛祐に再嫁し川口宗吉を出産。天文九年(1540年)、今川義元の援助で広忠が岡崎城を奪還。天文十年(1541年)、於大の方が広忠の室となる。天文十一年(1543年)、於大の方が竹千代を出産。天文十三年(1544年)、広忠と於大の方が離縁。天文十六年、竹千代が織田家に拉致される。天文十八年(1549年)に広忠が死亡。今川軍捕虜となっていた織田信広との交換で竹千代は駿河で人質となる。未亡人となっていた於富の方は華陽院と名乗り竹千代祖母として付き添う。駿府で華陽院は源応尼の名で竹千代を元服まで養育した。

「それで父上はどうして死んだのですか」

「妾はしかとは知りませぬ・・・家来たちの申すには急な病だったとも言いますし、織田の刺客だった片目の岩松という忍びに毒針を打たれたとも言います・・・領地を御検分中に野伏せりに襲われたと申すものもありました」

「岩松と申すものは・・・今川家にもおりまする」

「岩松は源氏の忍びとして各地におるものでございます」

「そうなのですか」

「・・・妾は竹千代殿はお爺様のような名将になられると思いますよ」

「お爺様・・・」

「清康公はそれはもう猛々しいお方でございました・・・なにしろ・・・あっという間に三河一国を治めてしまわれたのです」

「しかし・・・結局、家来に斬られたのだろう」

「・・・」

「我は精々・・・家来に斬られぬ主になろうと思う」

「それはなかなかのお覚悟でございますね・・・」

駿府の松平屋敷の天井裏から今川の忍び岩松八弥が忍び出た。

その顔には鬱屈した影があった。

今川から派遣された検地の役人は二俣城主の松井宗信の配下で岩松三太夫と名乗った。

井伊谷の館で当主・直盛を始め・・・主だった国人衆が使者を饗応する宴を開いている。

そのざわめきが龍譚寺の次郎法師の庵にも聞こえてくる。

奥山のくのいちである伊予が庭先に現れた。

「伊予か・・・今川の使者はどのような男であった」

「なかなかの色男でございましたよ・・・しかし・・・あれは忍びでございますね」

「ふふふ・・・どちらにしろ・・・妾は男に興味はないがな・・・伊予・・・これへ」

伊予は縁側に寄った。

「もっと・・・近うに」

「はい」

次郎法師は伊予を抱きよせた。

伊予は豊かな胸乳を持っている。

次郎法師は襟元から手を差し入れて・・・その感触を楽しむ。

女として生まれながら・・・次郎法師は男というものに興味がわかなかった。

次郎法師は女が好きなのだ。

次郎法師に導かれ・・・伊予は喘ぎ始める。

「愛いのお・・・」

次郎法師は伊予を抱きあげる。

女に生まれながら女しか愛せない。

次郎法師の出家の理由である。

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2017年2月19日 (日)

君の異常な愛情に縛られて海に沈む私でよかった(堤真一)

哀愁というものがどこから沸いてくるのか・・・多くの人々は知らない。

人の心は記憶の断片にすぎないので・・・哀愁には経験による個人差がある。

「あしたのジョー」といえばパンチドランカーである。

パンチドランカーは酔いどれ天使の一種である。

酔いどれ天使はパンチだけでなくギャンブルやもちろん酒にも溺れる。

スタジオの片隅てパンチドランカーと別の酔いどれ天使がやりあっているのを見たことがある。

酔いどれ天使が酒の匂いを漂わせてパンチドランカーの頭を小突き・・・私はヒヤヒヤした。

パンチドランカーというものはパンチを秘めているのである。

しかし・・・パンチドランカーはパンチを繰り出すことはなかった。

私はパンチドランカーも酔いどれ天使も好きだったので安堵した。

それからしばらくしてパンチドランカーは海で溺れて死んだ。

それからだいぶたって酔いどれ天使は酒に溺れて死んだ。

人は皆死んでいくのだ。

「あしたのジョー」がスーパーヒーローとして海に落ちて・・・帰らぬ人になったのかもしれないという流れは私を哀愁の海の底に招く。

しかし・・・多くの人々がそうとは知らずになんとなく哀愁を感じるのだろう。

人は感じやすい生き物だからである。

で、『スーパーサラリーマン左江内氏・第6回』(日本テレビ20170218PM9~)原作・藤子・F・不二雄、脚本・演出・福田雄一を見た。スーパーサラリーマン左江内氏(堤真一)の本名は左江内英雄である。さえないヒーローなのである。自称警部の小池刑事(ムロツヨシ)は小池郁男で制服警察官の刈野(中村倫也)は刈野助造である。まあ・・・なんとなくそういう感じなのだろう。

左江内氏の忘却光線の恩恵を受けた小池警部は立て続けに警視総監賞をゲットして食べるラーメンもいつもの「来々軒」から「行列のできるラーメン店」から出前するようになっているというのがフリである。

刈野がやってきて「小池さんがラーメンを食べるのを妨害する」という藤子ワールドのお約束を「宿命」として位置づける。

「小池警部・・・事件です」

「なんだよ」

「爆弾を仕掛けた犯人が責任者の携帯電話を教えろというので・・・小池警部の番号を教えました」

「何してくれてんだよ」

そこにボイスチェンジャーで変声した犯人からの着信がある。

(八景島シーパラダイスに爆弾をしかけた・・・避難を開始したらただちに爆破する・・・爆弾の捜索は二人だけで行うこと・・・こちらには全警察官の写真入り名簿がある)

「どんな縛りなんだよ」

いつものんきなフジコ建設営業3課・・・。

簑島課長(高橋克実)が「土日に家族サービスで千葉の牧場にピクニックに行く」と聞いた蒲田(早見あかり)が饒舌を展開する。

「えええ課長が家族サービスするなんて意外です~私の中の課長の好感度急上昇です~課長は土日はずっとパジャマで寝ていると思ってたのです~娘が積木くずしになっていても一緒に風呂でも入るかとか検討違いの冗談でごまかして結局一人で風呂に入ってまた同じパジャマを着てまた寝て日曜日はゴルフに行ってど下手もど下手だふりにつぐだふりをします~」

「いい加減にせんか~」

「今のはどちらかというと・・・左江内係長の土日なんじゃないのか」と池杉(賀来賢人)が矛先を変える。

「だけど係長は奥様がこわいから家では奴隷でしょう・・・会社では係長だけど家ではアルバイト扱いでしょう」

「ひどいな」と左江内氏。

「違うんですか・・・」

「土日の予定については毎週・・・私が提案している」

「えええええ」

左江内家の金曜の夜は週末プレゼンテーションが行われる。

左江内氏が家族に週末のレジャー計画を提案するのである。

「週末はまず河口湖までドライブします」

「ええ~・・・寒い」とお約束でクレームをつける妻の円子(小泉今日子)・・・。

「河口湖に何があるの」と都立源高校に通うはね子(島崎遥香)・・・。

「水があるだけでしょう」と円子。

「河口湖は水たまりではなく魚がいます・・・しかも釣った魚をその場で焼いて食べることができます」

「無理・・・私・・・頭のついてね魚無理~・・・私にとって魚はお刺身だけなの~」と円子。

「僕はステーキがいい」と公立骨川小学校に通うもや夫(横山歩)・・・。

「じゃあ・・・猟銃持ってバッファローを狩りに行くか・・・あはは」

左江内氏の冗談はスルーされるのだった。

「翌日はどうするの」

「富士急ハイランドに行きます」

「ええ~・・・二日続けて富士山周辺なんて・・・遭難するわ・・・天は我々を見放した!ってなるわ」

「それは八甲田山・・・」

「八甲田山って何?」とはね子。

「新田次郎原作の映画だよ・・・ちなみにこの子達は私の命だ~!は聖職の碑ね」

「もういいわ・・・提案は却下・・・明日は日帰りで八景島シーパラダイスに行くことにします」

「えええええええ」

真っ白な灰になる左江内氏だった。

こうして・・・左江内一家は・・・爆弾の仕掛けられた八景島シーパラダイスに突入するのである。

水族館と遊園地が複合したレジャー施設に到着した左江内ファミリーである。

「昨日・・・素晴らしいインターネットの世界で下調べしたんでしょう」

「いろいろとあるらしいね・・・水族館とか・・・乗り物とか」

「じゃあ・・・さっそと乗り物券を買ってきて・・・私たちはブランチしてるから」

「王様か」

チケット売り場を捜す左江内氏に「助けを呼ぶ声」が届くのだった。

「こんな時に」と思いつつ声に導かれバックヤードの事務所にたどり着く左江内氏。

そこには・・・小池刑事が爆弾魔からの指示待ちをしているのだった。

「何があったんですか」

「あなたは・・・」

「ああ・・・変身するのを忘れてました」

スーパーマンに変身する左江内氏。

「えええ」

「スーパーマンです」

「そんな馬鹿な」

左江内氏は刈野を小指で持ち上げてみせる。

「本物です凄いですスーパーマンです」

「実はこの施設には爆弾が仕掛けられているのです」

「えええ」

「潜伏中の犯人とか・・・仕掛けられた爆弾とか透視できませんか」

「それはちょっと無理ですね」

「意外とつかえませんね」

「それより・・・家族のことが心配なのでちょっと失礼します」

「え・・・スーパーマンに家族が」

「はい」

「ただし・・・爆弾のことは他の人には知られないようにしてください・・・避難指示をしたらすぐに爆発させると犯人が言っているので」

「わかりました」

食堂でブランチを楽しむ妻と子供たち。

「大変なんだ・・・爆弾が仕掛けられているらしいので・・・すぐに帰ってくれ」

「なんだって・・・そんな馬鹿なことあるわけないでしょう」

「本当なんだよ」

「で・・・君はどうするつもり」

「私は爆弾処理の手伝いを」

「えええ・・・ただのサラリーマンがどうしてよ・・・嘘確定じゃん・・・どうせ・・・課長から接待の仕事でも急にふられたんでしょう」

「じゃあ・・・仕事ってことでもいいから」

「そんな下らない仕事に行かせるわけないでしょう」

「くだらないって・・・僕が働いているからこうして遊びにも来れるわけだし」

「あ・・・パパ・・・それダメよ」とはね子。

「なんだって・・・ちがうでしょう・・・私がきちんと子育てしてるから・・・君は安心して働いていられるんでしょう」

「すね夫・・・お前も男ならわかるだろう」

「無理・・・小学生にサラリーマンの悲哀なんてわかんない」とすね夫。

「とにかく・・・今日は家族サービスを優先してね・・・さあ・・・誓って・・・私はみんなのおかげで安心して働かせていただいています」

「私はみんなのおかげで安心して働かせていただいています」

「よろしい」

子は鎹と言うが・・・一方的に鎹を打ちこまれている左江内氏なのである。

しかし・・・家族とはそういうものなのである。

子を思う父親はみんなそうやって生きている。

そうでない男は人でなしなのだ。

円子ほどの悪妻ではないとか・・・左江内氏ほど恐妻家ではないと言う人もいるかもしれないが・・・それは単なる体裁にすぎない。

左江内夫妻が夫婦のあるべき姿と言っても過言ではないのである。

そうでない夫婦は夫の暴力に耐えかねて妻が家出をするようなろくでもない家に決まっている。

おいおいおい。

とにかく・・・夫の指示に従うような家族ではなかった。

「せっかくの休日に仕事に行こうとして申しわけございませんでした」と謝罪する左江内氏なのである。

犯人からの指示を待つ小池警部。

逆探知装置が設定された小池警部の端末だが・・・爆弾魔は意表をついて事務所の電話にかけてくるのだった。

「なぜだ」

(逆探知をさけるために決まってる)

「さすがだな・・・どうだ・・・ついでに爆弾の隠し場所を教えてくれないか」

(そうでんな・・・ついでに・・・って誰が教えますかいな)

「うまい・・・ノリツッコミがうまい」

「犯人は芸人です・・・プロダクション人力舎を重点的に」とどこかにあるらしい捜査本部に連絡する刈野・・・。

「よせ・・・人力舎にしぼるな・・・事務所の先輩のシティボーイズさんも元は人力舎なんだから」

「アッシュ・アンド・ディ・コーポレーションにしますか」

「やめろ・・・それは俺の事務所だから・・・芸人専門の事務所じゃないから」

(こちらが本気であることをお知らせしようと思いましてね)

「どうするつもりだ」

(そこから出て・・・海を見てください)

「なぜ・・・そんなことを」

(いやなら・・・爆発させますよ)

「待て・・・言う通りにするから」

(だけど・・・いちいち逆らうから)

「そんなことないよお・・・それは勘違いだってばあ・・・ほらあ・・・事務所の人とかあ・・・いろいろ言われてえ・・・ちょっと心が揺れただけでえ・・・あなたのことを・・・信じてるってばあ」

犯人に対して甘えんぼ彼女モードで応対する警部だった・・・。

海上で大爆発が発生する。

「うわあ・・・」

「本気ですね・・・犯人・・・本気ですね」

(どうだった・・・)

「すごかった」

(わかったら・・・携帯電話の逆探知を解除して・・・)

「しました」

(それでは・・・小池警部の宝探しゲーム・・・スタート!)

「おい・・・ちょっと・・・待て」

不安げに見守る施設の職員たち。

「・・・大丈夫です・・・もう目星はついてますから」

コートの裾をたくし上げる挙動不審な態度で出動する小池警部。

「ここだけの話ですが・・・あれは・・・全く目星がついていないということです」

何故か職員たちに解説する刈野である。

まあ・・・一応ツッコミポジションなのでお茶の間向けに解説しているわけだ。

左江内一家は水族館へ。

「ほら・・・もや夫・・・美味しそうな魚だよ・・・夕飯は魚にしようか」

「ママが焼いてくれるの」

「無理~海鮮居酒屋に行くの」

「バカだね・・・ママは魚を焼くコンロに触ったことないんだよ」と姉として弟を諭すはね子だった。

「ちょっと・・・何・・・そわそわしてるの」

爆弾が気になって心ここになしの左江内氏ほ咎める円子である。

「いや・・・魚が凄いなあって思って」

「パパ・・・演技下手すぎ~」

「ちゃんと家族サービスしたら・・・仕事に行かせてあげようと思ったけど・・・そんなんじゃダメだね」

「そんな~・・・ちょっとトイレに行ってくる」

なんとか抜け出す左江内氏は小池警部と合流する。

「どうなりましたか・・・」

「とにかく爆弾を発見しないと」

「五分だけ・・・お手伝いします」

「なにそれ・・・ウルトラマンより二分長い自慢?」

「いえ・・・種族は違います」

「そうなの」

手分けをして捜索を開始することになるが・・・左江内氏の前にデート中の池杉と蒲田が現れる。

「課長・・・何してるんですか」

「その恰好・・・アトラクションのアルバイトか何かですか」

「君たち付き合ってるのか」

連続美人局事件の時に池杉が語っていた「本命」とは蒲田だったらしい。

超絶なよなよもったいぶる演技の池杉に呼応して超絶ぶりぶりカマトトする蒲田である。

「このことは内緒にしてください・・・課長は社内恋愛に厳しいので」

「もちろん」

「いいえ・・・係長は言っちゃいます・・・だって嘘がつけない人だもの」

「言わないよ」

「言ったら・・・バイトのことをバラしますからね・・・会社はバイト禁止ですからね」

「しかし・・・君たちが付き合ってたとはなあ」

「実は・・・係長が私たちのキューピットなんですよ」

「ええっ」

「言っちゃう・・・」

「言っちゃおう・・・うふふ」

「言うの・・・えへへ」

「言えない・・・ふふふ」

超絶バカップルのコントによって貴重な五分が経過するのだった。

「トイレ長い・・・」

「ちょっとお腹こわしちゃったみたい」

「うそ・・・どうせ・・・課長と仕事の電話してたんでしょう」

「違うよ・・・」

「はい・・・チェック」

円子は左江内氏の携帯端末の履歴をチェックする。

「あら・・・本当ね」

「だから・・・してないってば」

円子の表情が微かに和らぐのだった。

恐ろしいことだが・・・左江内夫妻は・・・円満なのである。

わかる人にはわかる夫婦の機微というものなのだ。

爆弾探しを続ける小池警部は広場にさしかかる。

そこで爆弾魔からの着信がある。

(ここで・・・指令があります)

「なんだ・・・あれか・・・爆弾魔が刑事に無理難題をしかける奴か」

(あれ・・・あるでしょう・・・ペンとアップルの奴)

「流行を追うのは嫌いだ」

(っていうか・・・もう・・・いまさら・・・って奴でしょう)

「深夜で来週・・・マンガ家と作曲家の番組で曲作るって言ってた」

(アレをさ・・・焼売と小龍包やって見せて)

「ええ~・・・そんな恥ずかしいこと~」

(じゃあ・・・爆発させる)

「やります・・・やりますから~」

薄く物悲しいBGMがかかり・・・ペン焼売小龍包ペンを演じる小池刑事だった。

小龍包の肉汁の熱々な感じを熱演する小池刑事にいつしか観客が集まってくるのだった。

水族館の出口でもや夫は「戦隊ヒーロースカマンショー」のポスターに魅かれる。

「これが見たい」

「じゃあ・・・そうしようか」

「ええ・・・私はあんまり・・・」とはね子。

「わかった・・・じゃあ・・・別行動にしよう・・・はね子はアトラクションに乗りたいんでしょう・・・パパはレストランの席取りね」

「ええ~」

とにかく・・・爆弾捜索を再開する左江内氏。

そこにはね子がやってくる。

「レストランの席取りは私がするから・・・パパは仕事に行っていいよ」

「え」

「私も実は友達と待ち合わせしているんだ・・・それに・・・別行動にしたのは・・・仕事に行っていいということだと思うよ・・・ママはただパパが家族サービスしてるってことを子供たちにアピールしたいだけなんだから・・・」

「はね子・・・」

つまり・・・円子は・・・左江内氏が子供思いであることを子供たちに伝えようとしている妻であると見切っているのだった。

そういう家族関係の複雑さを理解できない人は一定数存在します。

左江内家は・・・夫婦は仲良く・・・親子の絆も固いのである。

そう見えない人は本当の家族というものを誤解しているだけなのだ。

上空より捜索を開始した左江内氏は観客の輪の中で芸を披露する小池警部を発見する。

今回・・・忘却光線発生器は手動操作で・・・小池警部の記憶は継続している。

おそらく・・・左江内氏はマニュアルを少し読んだのでスーパーマンスーツの㊙テクニックに精通し始めたのだろう。

よくあることである。

「何をしているんですか・・・」

「爆弾は時限式でもあるらしい・・・私が犯人の気を引いている間になんとか捜してくれ」

「それは大変だ」

あせって捜索を開始する左江内氏だが・・・例の男(佐藤二朗)タイムである。

今回はヒーローアトラクションの演出のアルバイトをしているらしい。

ヒーローショーの敵役が衣装とともに渋滞にまきこまれ・・・到着が遅れているという事態が発生。

コスプレおじさんとしてスカウトされてしまう左江内氏だった。

「いいんじゃないか・・・今はスーパーマンVSバットマンとか何でもありだし・・・ヒーローがダークヒーローになっちゃってアイドルがカルトかカルトがアイドルか仏が神に神が仏に悪魔が天使に天使が悪魔に毒針がスプレーにスプレーが毒針に純情・愛情・過剰に課長に係長に元AKBと元ももクロの交差点なんちゃってママはアイドルなんてったって艶姿なのです」

笑うしかない左江内氏だった。

左江内氏がスーパー戦隊とともに舞台に登場するとどよめく観衆。

その中には円子ともや夫の姿もあった。

「パパ・・・」

敵役としてカスレッドたちの波状攻撃に適当にやられる左江内氏。

思わず父親を応援するもや夫。

「パパがんばって」

さらに円子も。

「パパしっかり」

うっかり本気を出す左江内氏。

スーパーパンチでカスレッドは虚空に消えた。

確実に死んだよな・・・。

「スーパーマンが戦隊ヒーローに勝っても諸行無常である」と演出家は語った。

もや夫も円子も観客も喜び・・・なんとなくうれしい左江内氏である。

カスレッド・・・安らかに眠れ。

人が死ぬのは哀しいことだが・・・いつまでも哀しんではいられないのだ。

そういう問題なのか。

タイムリミットが迫り・・・あせる小池刑事と左江内氏。

そこに謎の老人(笹野高史)が現れる。

「ピーターパンというアトラクションにおかしなものが置いてありますよ」

神の助けである。

神に対し「ありがとう・・・くそじじい」と暴言を吐く嘘をつけない左江内氏。

癇癪を起こすくそじじいだった。

出前用の岡持ちの中に隠された爆弾。

「うわあ・・・もう一分前だよ」

「どうしますか」

「とにかく・・・アトラクションだと思ってる周囲の人を・・・」

「避難させられません」

「三十秒切っちゃったよ」

「どうしますか・・・」

「スーパーマン・・・これを海に捨てちゃってください」

「ええ・・・もう残り時間が・・・」

「助けて・・・スーパーマン・・・みんなを助けて・・・スーパーえもん」

「・・・」

いつの間にか・・・円子ともや夫、はね子といつものクラスメイト・・・さやか(金澤美穂)とサブロー(犬飼貴丈)、そして池杉と蒲田までもが・・・集合している。

律儀な左江内氏は忘却光線を発動させてから海へ向って飛翔する。

「パパ・・・」

大爆発である。

人々は記憶を失った。

刈野が辻褄をあわせる。

「投げましたか・・・」

「投げた・・・俺は・・・昔・・・ピッチャーだったから」

肩を故障して投げられなくなった過去まで遡る偽りのエピソードに激しく頷くはね子だった。

しかし・・・父親に託されたゴキブリの次に行列に並ぶことが嫌いな母親のための席取りの使命を思い出しレストランに走るのだった。

「今・・・係長がいたような気がする」

「いるわけないでしょう」

ぼんやりしている池杉は記憶の残滓を感じるが・・・ドライな蒲田は幻想を振り払うのだった。

ただ・・・円子ともや夫は何かもやもやとしたものを感じながら・・・海を見つめていた。

父親不在のまま・・・帰宅した左江内一家・・・。

ぼんやりとした不安を抱える三人。

「遅いわねえ・・・何やってんのかしら」と円子。

「仕事でしょう」とはね子。

「パパは・・・もう帰ってこない気がする」ともや夫。

無意識の底で・・・爆炎の中に消えた左江内氏の記憶が燻っている三人。

そこへ・・・帰宅する左江内氏。

「なんでビショビショなの」

「イルカショーを見てたらイルカに襲われて気絶」

「おかげで渋滞の中・・・私が運転して帰って来たのよ」

「むしろ・・・僕を残して帰るなんてひどいじゃないか」

「仕事に行ったんだと思ってたから」

「僕が無事に帰ってきてうれしいんだろう」

「何言ってんの」

「またまた~」

熱烈に円子とイチャイチャする左江内氏だった。

家族に広がるやすらぎの輪・・・。

「じゃあ・・・パパはお風呂いただきます」

「沸いてないわよ」

「自分で沸かしま~す」

爆弾魔は「来々軒」の出前持ち(矢本悠馬)だった。

「お前・・・焼き鳥屋のアルバイトじゃなかったのか」

「ゆとりですがなにかじゃないよ」

「小池さん・・・あんたはひどい人だ・・・出世したからといって二十年間贔屓にしていた店に来なくるなんて・・・おやっさん・・・ショックで寝込んじゃいましたよ」

「あんちゃん・・・すまなかった・・・今からラーメン食べてくる・・・ダンカンこのやろう」

「殿・・・僕もたべたい~」

ビートたけしの物まねをしながら小池刑事は去った。

追いかける刈野。

出前持ちは放置されたので仕方なくダンスを踊るのだった。

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2017年2月18日 (土)

冬の終わりの打ち上げ花火はエビングハウスの忘却曲線のように(深田恭子)

あまり多くは語られないが徳川家の家庭教師が大河原(岡山天音)が黒崎(菊田大輔)にチェンジしている。

チェンジの理由は「もっとかっこいい人にして」という児童の希望であった。

岡山天音といえば・・・時々、二枚目枠でも登場するのだが・・・どちらかといえば個性的な顔立ちの整ったブサイクだと思うので妥当だと思う。

今をときめく清水富美加がヒロインを演じた「リアル鬼ごっこ THE ORIGIN」の王様役なんかかなりのキモさだったものな。

岡山天音の所属事務所には安藤サクラ、門脇麦、岸井ゆきの、満島ひかり、山田真歩などが所属していて・・・ある種の不気味さを醸しだしている。

こういう特色もひとつの味わいだよなあ。

能年玲奈に続いて、清水富美加との間にもトラブルを起こした所属事務所の女優陣はそこはかとなく・・・暴走族のレディースを連想させる顔ぶれが揃っている気がする。

あくまで個人的な感想です。

いろいろな個性があるように組織にもいろいろな特色があっていいと思う。

トラブルはいろいろな面倒を撒き散らし・・・うんざりしちゃう現場の人もいるだろうが。

それが人生というものだと歯を食いしばるしかないよねえ。

で、『克上受験・第6回』(TBSテレビ20170217PM10~)原作・桜井信一、脚本・両沢和幸、演出・福田亮介を見た。春一番も吹いて冬ドラマも中盤戦である。下剋上は大雑把に言えば子分が親分をぶっ殺すということである。人の一生とは階級闘争の連続であると考えれば・・・それは忘れてはいけない・・・この世の核心部分と言えるだろう。親子の情で世襲的に継続されるシステムとテストによる実力選抜システムの両輪が社会をなんだかんだ維持しているわけである。そういうことに対してああだこうだ言っても仕方ないので・・・どのようなポジションでどのようなタイプであっても面白おかしく生きて行くしかないよ・・・このドラマはそんな風に語りかけているような気がする。

多くの人間は神についてあまり深く考えないで初詣に出かける。

桜井信一(阿部サダヲ)と妻の香夏子(深田恭子)、そして娘の佳織(山田美紅羽)はおみくじを引く。

香夏子は吉、佳織は中吉、信一は凶だった。

桜井一家は絵馬に願い事を書く。

氏神たちはこれを審査するわけである。

「みんな仲良く」と香夏子。

「微笑ましい」

「家族の幸せを願っている」

「受理」

「おいしいものを食べてたくさん寝たい」と佳織。

「微笑ましい」

「寝る子は育つ」

「受理」

「桜葉合格!」と信一。

「邪じゃな」

「身の程知らずじゃ」

「しかし・・・子を思う親心と言えないこともない」

「ただ浅ましいだけじゃ」

「ペンディング!」

神の心を人は知らないので・・・とにかく精進するしかないわけである。

全国オープン模試で偏差値が52に向上した佳織だったが・・・その後は一進一退を続けるのだった。

佳織の成績が伸び悩むことで信一の焦燥感は高まるのだった。

壁は一度は解けた問題が・・・再びチャレンジすると解けなくなっているという点にあった。

つまり・・・覚えたことを片っ端から忘れていくのである。

子供時代・・・信一はあまり覚えなかったので・・・人間が覚えたことを忘れるという基本的なことがわかっていなかったのだ。

つまり・・・馬鹿なのである。

信一は佳織が「忘れてしまうこと」に・・・恐怖を覚える・・・つまり・・・自分の馬鹿が娘に遺伝しているのではないか・・・と考えてしまうのである。

追い込まれた信一はついついスケジュールを逸脱し・・・佳織の睡眠時間を削るのである。

「どうして・・・できないんだ」

「・・・」

「睡眠不足なのか・・・それとも気迫が足りないのか」

「気迫不足だと思う・・・ごめん・・・ちょっと顔洗ってくる」

信一に追い込まれる佳織だった。

香夏子は佳織の身を案じるのだった。

「大丈夫なの・・・」

「大丈夫・・・学校で寝るから」

「先生に叱られない?」

「うん」

「昔は定規でビシッてやられたよな」と信一。

「デコピンとかね」と香夏子。

「デコピンって何?」

「こうやるんだよ」

香夏子は信一をデコピンするのだった。

お仕置きというより御褒美だよね。

大江戸小学校の小山みどり先生(小芝風花)は中学受験組の授業中の居眠りはスルーする方針になったらしい。

佳織・・・徳川麻里亜(篠川桃音)・・・大森健太郎(藤村真優)は熟睡するのだった。

佳織の友達であるアユミ(吉岡千波)とリナ(丁田凛美)は困惑するばかりである。

佳織たちは六年生になっていた。

受験まで残りおよそ300日・・・。

一学期の教師と親の個別面談・・・。

妻と別居中の徳川直康(要潤)と妻が就職した信一は顔を合わせる。

「緊張するよな」

「そうですか?」

直康はみどり先生に「娘を休学させたい」と申し出る。

「まだ・・・一学期ですよ」

「勝負はもう始っています・・・この学校の他の児童の皆さんとも上手くいっているとはいえないみたいだし・・・前の学校でもいじめのようなことがあって」

「私も・・・最初は心配しましたが・・・桜井佳織ちゃんとは仲良しになったみだいだし」

「その佳織ちゃんが問題なんです」

「え?」

直康は・・・娘と佳織の交際が・・・娘の成績に影響を与えているのではないかと危惧しているのだった。

その件で直康は信一に直談判を試みるのだった。

信一は直康を営業前の居酒屋「ちゅうぼう」に案内する。

店主の松尾(若旦那)も元同級生である。

「佳織さんが・・・娘と仲良くなってくれたことには感謝しています・・・しかし・・・最近、娘の成績が思わしくないのです」

「え」

「佳織さんはどうなんですか」

「佳織は偏差値52にあがったけどな・・・」と見栄を張る信一。

「・・・」

「もしかして佳織のせいだと言いたいわけ?・・・麻里亜ちゃんの成績下がっちゃったのが・・・どのくらい下がったの?」

「偏差値65前後です・・・今までは68をきったことはなかったのです」

「え」

「もう・・・時間がありません・・・だから佳織さんと麻里亜は友達付合いを控えた方がいいと思うのです」

「・・・」

「このままでは・・・桜葉に合格できません」

偏差値52で伸び悩む娘を持つ信一は・・・偏差値65で悩む父親にショックを受けたのだった。

それは・・・信一の中の複合的な感情のもつれ(コンプレックス)を激しく揺さぶるのだった。

その頃・・・スマイベスト不動産では長谷川部長(手塚とおる)が香夏子に「見習い期間」の終了を宣告する。

「これからは・・・一人で顧客を担当して・・・歩合をガンガン稼いでください」

「でも・・・私・・・まだ色々とわからないことが」

「大丈夫・・・ナラザキがフォローしますから」

「何でも聞いてください」と頼もしい楢崎哲也(風間俊介)である。

・・・っていうか・・・香夏子・楢崎ペアなら最強ではないのか。

「私たちが売りました」と風が吹くのではないのか。

放課後・・・佳織は麻里亜の家でお勉強会中である。

しかし・・・家庭教師が来れば二人の時間は終わりである。

「私・・・家庭教師の回数を増やしたから・・・学校に行く回数が減ると思う」

「そうなんだ」

佳織は淋しさを感じた。

佳織にとって麻里亜は・・・他のクラスメイトとは違う特別な存在になっていたのである。

佳織は・・・シャープペンシルを置き忘れた。

それは・・・佳織の一種の自己主張だったらしい。

「私を忘れないで」である。

桜井家の一家団欒。

「今日から一人前のハウジング・アドバイザーになったんだよ・・・お客様に一人で応対したんだ」

「お母さん・・・凄い」

「佳織は麻里亜ちゃんと勉強したんでしょう・・・勉強以外のことは話さないの?」

「健太郎の話で盛り上がったよ・・・健太郎も受験するんだ」

「佳織・・・」と鬱屈した思いを吐き出す信一である。「麻理亜ちゃんのところに行くのはやめなさい・・・勉強がはかどらない・・・・もしかしたら麻理亜ちゃんも迷惑に思っているかもしれないじゃないか・・・」

お茶の間に暗雲が立ち込めるのだった。

「俺塾」で・・・佳織は信一の理不尽な申し出に叛旗を翻す。

「どうして・・・問題を解かないんだ・・・」

「・・・」

「そんなに・・・麻理亜ちゃんのことが好きか?・・・でもな・・・麻理亜ちゃんはお前のことそんなに好きじゃないと思うぞ・・・麻理亜ちゃんは偏差値65だそうだ・・・偏差値52のお前のことなんか・・・最初から相手に」

学歴がないために・・・信一が受けた様々な屈辱が・・・言葉の暴力となって佳織を苛むのだった。

佳織は恐ろしい悪鬼と化した父親から逃げ出し香夏子の胸に飛び込んで泣きじゃくるのだった。

誰もが佳織になりたい場面からの入浴シーンのサービスである。

これが「性的な売りもの」というのならそうですと言う他はないわけだが・・・。

名場面なのである。

人間が・・・父と子が・・・母と子が・・・家族が優しく美しく描かれているのです。

すべては・・・認識の深さの問題なのだ。

親として暗礁に乗り上げた信一は・・・父親の一夫(小林薫)を訪ねる。

電球を変えようとしていた一夫を首吊寸前とするコントが展開されるのだった。

「香夏子さんと喧嘩したのか」

「なんでだよ」

「お前が俺んとこに顔出す理由なんてそれしかないだろう」

「そんなことねえよ・・・佳織だっているよ」

「佳織と喧嘩したのかよ」

「・・・」

一方・・・業務連絡のために香夏子と合流したナラザキは・・・香夏子の様子がおかしいことに気がつく。

「どうかしましたか・・・」

「私・・・もう・・・どうしていいか」

「え」

泣きだす香夏子に戸惑うナラザキ・・・。

その様子を大工の杉山(川村陽介)が見ていた!

杉山が師匠の一夫に注進し・・・一夫はスマイベスト不動産に殴りこみをかけるのだった。

「ウチの大切な嫁を泣かせるとはどういう料簡なんだよ」

「ひええええ」

そこへ・・・香夏子が戻ってくる。

「一体・・・何の騒ぎですか」

「あれ?」

もちろん・・・香夏子が悩んでいたのは信一と佳織のことだった。

追いつめられた信一は・・・ついに居酒屋「ちゅうぼう」で禁酒の誓いを破るのだった。

「馬鹿の子は馬鹿で・・・中卒の子は中卒」という諦念である。

そこへ・・・我らがナラザキが疾風怒濤の勢いで登場する。

「何してるんですか・・・佳織ちゃんはもう帰って勉強していますよ」

「いいんだよ・・・もう」

「中学受験は諦めるんですか?」

「だって・・・努力して勉強しても・・・すぐに忘れちゃうんだもの」

「そんなの当たり前じゃないですか」

「当たり前?」

「人間は忘れる生き物なんですよ」

「・・・」

ナラザキは店のメニューを書いた黒板り文字を消し去る。

「おい・・・何するんだ」

「いや・・・なんか面白そうだ」

「・・・」

ナラザキはドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウス(1850~1909年)の研究による記憶の保存と忘却の関係について示す曲線を描いた。いわゆるエビングハウスの忘却曲線である。

統計的な研究成果を噛み砕いて説明するナラザキだった。

「いいですか・・・人間は覚えたことを一時間後には半分忘れます・・・一日後には七割忘れます・・・一週間後には八割忘れます」

「・・・そうなのか」

「しかし・・・一日後にもう一度同じことを覚えたら・・・一週間後に忘れるのは七割になります」

「一割減った」

「さらに一週間後にもう一度同じことを覚えたら・・・一週間後に忘れるのは五割になります」

「半分覚えたよ」

「だから・・・復習が大切なのです・・・人間は反復することによって記憶を定着させ・・・忘れなくなるのです」

「失恋がいつまでも辛いのと一緒だ」

「そうやって人間はストーカーになるんだよな」

「勉強とはそういうくよくよしたものなのです」

「ナラサキ・・・お前は神か」

「ナラザキです」

一方・・・学校では・・・。

佳織の忘れものであるシャープペンシルを持って学校にやってくる麻里亜。

ちびっこ天使である健太郎が声をかける。

「それ・・・佳織のか・・・俺が返してやろうか」

「ううん・・・いいの」

麻里亜は佳織に話した。

「もう・・・佳織ちゃんとは会わない」

児童の友情に担任としてみどり先生が首を突っ込むのだった。

「お父さんにそう言われたの」

「はい」

「成績が落ちたから?」

「やっぱり・・・私のせいかな」と佳織。

「ううん・・・佳織ちゃんといると楽しいし・・・でも・・・自分の勉強はできなくなる」

「それで・・・どうしたらいいものかと・・・困っていたのね」

「・・・」

「それなら・・・友達よりも素晴らしいものになればいいのよ・・・」

「友達より素晴らしいもの?」

「それは・・・ライバルよ」

「ライバルって敵じゃないんですか」

「いいえ・・・敵はただ憎むべき相手・・・ライバルは相手のことを尊敬し・・・相手ががんばれば自分もがんばるし・・・相手が苦しめば自分の苦しみのように思うことができる・・・飛雄馬と満、ジョーと力石、アムロとシャアのような関係よ」

「わかりません」

「先生もよ」

「ライバル・・・」

「二人はライバル」

なんとなくときめく佳織と麻里亜だった。

みどり先生のお茶の間での評価が一気に高まるのだった。

忘却曲線に光明を見出した信一が帰宅すると佳織は一心不乱にドリルに取り組んでいた。

「佳織・・・こっちをむいておくれ・・・お父さん・・・間違ってたみたいだ・・・佳織が忘れちゃうのは・・・誰のせいでもなくて・・・復習が足りないだけだった」

「お父さんのウソツキ・・・」

「え」

「佳織と一緒にドリルやるって言ったじゃん」

「佳織・・・一人でやってたのよ」と香夏子。

「え」

「私・・・もう麻里亜ちゃんとは会わない・・・麻里亜ちゃんと話して決めたの」

「ええっ」

「私と麻里亜ちゃんは・・・ライバルになったのよ」

「えええ」

娘の成長に・・・親として何か・・・祝福を与えたくなった信一である。

信一は・・・仕事中の直康に面会する。

「娘たちのために・・・バーベキューパーティーをやろうと思うんだ」

「この大切な時期にですか」

「だから・・・けじめだよ・・・これを境に・・・二人はライバルになるんだ」

「ライバル?」

「つまり・・・もう会わないということだ」

しかし・・・直康には信一の言うところを娘に伝えるコミュニケーション能力が欠けていたのである。

娘は・・・会えば別れがつらいので会えない気分なのである。

「私は行かない」

「・・・」

仕方なく・・・バーベキュー・パーティー会場に娘の欠席を伝えに行く直康である。

居酒屋「ちゅうぼう」のメンバーが集まり・・・準備中の河川敷・・・。

「桜井さん・・・悪いけれど・・・娘は来ません・・・家で勉強しています」

「お前・・・そりゃ・・・ねえだろ・・・連れてくるって約束だっただろう」

「・・・麻里亜が自分で決めたことなんです」

「・・・」

「佳織ちゃんは友達じゃない・・・ライバルなんだと麻里亜はいいました」

「まったく・・・これだから頭のいい連中はよ・・・人の気持ちがわからねえのかよ」と理容師の竹井(皆川猿時)・・・。

「皆さんには・・・私や麻里亜の気持ちがわかるんですか・・・私は父に無理矢理・・・転校させられてしまいました・・・友達なんか一人もいない・・・私は勉強するしかなかったんです・・・運動もできない・・・楽器もできない・・・手先が器用でもない・・・そんな私が父に認められるには・・・勉強ができること・・・それしかなかったんです・・・私は皆さんが遊んでいる時に受験問題をひたすら解きました・・・この会に参加しないと決めた娘の気持ちを愛おしく思います・・・皆さんにはわからないかもしれませんが・・・私は娘を誇らしく思う」

がり勉仲間として激しく胸を打たれるナラザキだった・・・。

「おい・・・これでいいのか・・・佳織が泣いちゃうんじゃないか」と一夫。

去って行く直康を反射的に追いかける信一だった。

直康の車に乗り込む信一。

「お前の言ってることはわかったよ・・・だから・・・麻里亜ちゃんに会わせてくれ・・・俺が説得するよ・・・麻里亜ちゃん・・・我慢してるんだよ」

「我慢・・・」

「今日・・・バーベキューしなかったら一生後悔するよ」

「受験に落ちたらもっと後悔します」

「だから・・・あの子はなんていうか・・・ひねくれているだけなんだよ」

「麻里亜を悪く言うな!」

「悪く言ってないよ・・・素直じゃないってことだよ」

運転手がドアを開けたために転がり落ちた二人は流れで河原をゴロゴロするのだった。

その時・・・頭上から子供たちの歌声が聞こえる。

「線路は続くよ・・・どこまでも」

「え」

みどり先生が児童たちと橋を渡ってくる。

その中には麻里亜の姿もあった。

「お招きに与って参上しました」とみどり先生。

香夏子が声をかけていたのだった。

「どうして・・・ウチの子が・・・」

天使の健太郎が微笑む。

「せっかくだから・・・俺が誘ったんだ・・・ピンポン攻撃したらなんてことはなかったぜ」

健太郎の評価も鰻登りなのである。

河川敷のバーベキュー大会は盛り上がるのだった。

傷だらけの父親たちはなんとなくしょんぼりするのだった。

「佳織ちゃん・・・シャーペン忘れたでしょう」

「いいのよ・・・それ・・・麻里亜ちゃんが持っていて」

それは二人のライバルの証らしい・・・。

「佳織ちゃん・・・一緒に桜葉に行こうね」

「うん」

微笑み合う二人。

そんな二人を肩を並べて見守る信一と直康・・・。

「なんか声をかけてやれよ」

「こういう時・・・なんて言ってやったらいいのか」

「笑って髪の毛をくしゃくしゃってしてやればいいのさ」

緊張して小動物に近寄る直康・・・。

「よかったな・・・それ・・・もらったのか」

「うん」と微笑む麻里亜。

思わず直康は髪の毛タッチに成功するのだった。

夜空を焦がす「春」の花火・・・。

季節は「タイトル」とは違うが・・・受験が終わった頃に・・・全国一斉で花火を打ち上げればいいのにと思う今日この頃である。

受験まで残り40週間らしい・・・。

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2017年2月17日 (金)

投げ槍に貫かれ舌を噛み切りそこねて君は(清原果耶)

幻想世界の架空の物語を描く上でもある程度の設定は必要とされる。

小説世界ではかなり曖昧な設定でも断片と断片を繋ぐことはできるが映像化作品ではある程度の「本当らしさ」を紡がなければならない。

架空の設定も現実の歴史を土台にすることは多い。

どの歴史をモチーフとするかは・・・作者の趣味にもよるが・・・受け手もまた趣味による推測が可能である。

物語に登場する国家にも様々な原型が見え隠れするがキッドには日本海を挟んだ半島と列島の関係性が強く喚起されるのだった。

これは・・・キッドが大伴氏による半島進出についてかって妄想したことがあるためである。

北大陸と南大陸の間にある諸島国家サンガル王国は原作では新ヨゴ国と地続きであるが・・・ドラマでは海洋国家となっている。

現実では対馬が対応するが・・・より南洋的な沖縄諸島をはめ込んだようなムードがある。

スケールアップすれば南太平洋の諸島の挿入と言っても良い。

北大陸に存在する新ヨゴ国、カンバル王国、ロタ王国はスケールダウンすれば朝鮮半島の三国時代が連想される。

北の高句麗、東の新羅、西の百済である。

そうなるとサンガルは対馬だったり任那だったりするわけである。

南大陸に存在するタルシュ帝国は・・・つまり大和朝廷なのである。

幻想なので流動的であり・・・シャーマニズムに支配されるロタ王国の南北問題は貧しい北朝鮮と豊かな韓国にたやすく変換できるわけなのである。

あくまで個人的な妄想の話です。

で、『精霊の守り人II 悲しき破壊神・第4回』(NHK総合20170211PM9~)原作・上橋菜穂子、脚本・大森寿美男、演出・西村武五郎を見た。第一部の二人の登場人物・・・用心棒バルサ(綾瀬はるか)と新ヨゴ国皇太子チャグム(板垣瑞生)が別行動をしていて二つの物語が同時進行しているため・・・よく言えば話に広がりがあり悪く言えば散漫な印象になってしまうこのドラマ・・・お茶の間の反応も様々なのだろう。キッドは毒々しい展開と平和共存の思想が見事に乖離していると考えている。大まかに言えば・・・バルサとチャグムが再会する時にそれは融合されるのだろう。それまでお茶の間がこの微妙さに耐えられるのかどうかは別として。

夢の中で・・・バルサは過去の自分(清原果耶)を振り返る。

胡散臭い母性を漂わせる四路街の衣装店主人マーサ(渡辺えり)がバルサに失われたものへの郷愁を呼び醒ます。

父親変わりの短槍使いジグロ(吉川晃司)は幼いバルサをマーサに託し・・・去ろうとしていた。

「お前はここに残れ・・・」

「何故だ」

「お前には・・・儂とは別の道がある・・・お前には儂のようになってもらいたくはない」

「嫌だ・・・あなたは私の気持ちがわかっていない」

バルサはジグロのようになりたかったのだ。

だが・・・それは修羅の道だった。

目覚めたバルサは自分の歩んできた血ぬられた道を振り返る・・・それが悪しき道だったと・・・いつから思うようになったのだろう・・・とバルサは考える。

人の命を奪うことに・・・いつから躊躇いを感じるようになったのか。

その答えは暗闇の中にある。

《建国ノ儀の朝・・・ロタ祭儀場の門をくぐれ》

ノユーグ(魔物)に憑依されたアスラ(鈴木梨央)の殺戮力を狙うロタ王に仕えるカシャル(猟犬)の呪術師シハナ(真木よう子)はアスラの兄チキサ(福山康平)と薬草使いのタンダ(東出昌大)を人質にとってバルサとアスラを脅迫するのだった。

「建国ノ儀は八日後」とマーサが教える。

「祭儀場・・・お母さんが殺されたところよ」とアスラ。

バルサは唇をかみしめる。

「どうするの」

「行かないと・・・お兄ちゃんが殺されちゃう・・・お兄ちゃんとタンダさんを助けないと」

「・・・わかった」

バルサの承諾に落胆するマーサだった。

「いつか・・・また・・・ここに戻っておいで・・・アスラは仕立屋として筋がいい・・・私がみっちり仕込めば腕のいい職人になれるよ・・・」

「・・・」

「私がここで待っていることを忘れないで」

「ありがとう・・・マーサ」とバルサはマーサを慰める。

だが・・・マーサのためにも旅立ちを決意するバルサなのである。

マーサの息子のトウノ(岩崎う大)が行商に出るために途中までの同行を申し出る。

「隊商と一緒の方が目立たないだろう・・・こっちも用心棒がいれば心強い」

トウノの好意を受けるバルサなのである。

幼いアスラのためにも荷駄馬車の存在は有効だった。

Seireimap023 カシャルの里ではタンダとチキサが枯れ井戸の底に監禁されていた。

タンダはつっけんどんでもっさりした口調でぼやく。

「こりゃ・・・逃げられないな」

シハナは父親でカシャルの長であるスファル(柄本明)も拘束している。

「シハナ・・・一体、何をしようというのだ」

シハナはつっけんどんでもっさりした口調で呟く。

「建国ノ儀・・・祭儀場にはロタ各地の実力者が集まる・・・そこにアスラを連れて行けば・・・必ず神を呼ぶ・・・タルの民の力を用いて・・・王がロタを一つにまとめる」

「シハナよ・・・お前の慕うイーハン殿下は国王陛下ではあられぬぞ」

「・・・」

ロタ王国のヨーサム(橋本さとし)国王は病んでいた。

「酒をもて・・・」

「兄上・・・」

ヨーサムの弟イーハン(ディーン・フジオカ)は兄の容体を気遣う。

「酒くらい飲ませろ・・・余の命は尽きようとしている」

「そのようなことを・・・」

「・・・もし・・・私が死んでも伏せておけ・・・そして・・・建国ノ儀はお前が取り仕切るのだ」

「私は・・・兄上のような名君になる自信はありません」

「タルの女も愛した男だ・・・なろうと思えば何にでもなれよう・・・お前の望むままの王になればよい」

「兄上・・・」

若き日のイーハンは・・・タルの民トリーシア(壇蜜) と深い関係になった。

賤民と王族の恋は許されるものではなかった。

「お前たちを・・・私が引き裂いた・・・それでも・・・お前の心に眠る慈しみの心までは奪えなかった・・・優しさなど・・・王には無用なものだ・・・しかし・・・自分の優しさを信じることは有用だ・・・お前は私より優しいことを信じればよい・・・己を信じる強い心が民を導く・・・お前はお前の信じる道へとこの国を導けばよいのだ」

ヨーサムは最後の酒を飲みほした。

アスラのサーダ・タルハマヤの力を用いてアスラの母親の愛人だったイーハンは何事かを企んでいるのだった。

豊かな南の民と貧しい北の民の経済格差がロタ王国では内乱の火種となっている。

それを禍々しいサーダ・タルハマヤの力で一つにすること・・・イーハンの優しい外見とはそぐわない何かが・・・その心には潜んでいるらしい・・・。

一方・・・すでにタルシュ帝国に降伏したサンガル王国の司令官オルラン(高木亘)によって身分を伏せたまま虜囚となったチャグムは・・・帝(藤原竜也)の密命を受けた暗殺部隊「狩人」の長モン(神尾佑)によって暗殺されかかっていた。

そこへ・・・聖導師(平幹二朗)の密命を受けたジン(松田悟志) が割り込む。

狩人同志の争いに驚く星読博士のシュガ(林遣都)だった。

「帝は・・・また・・・我の命を・・・」

「モンを生かしておいては・・・チャグム様の命を狙い続けます」とジン。

「殺してはならん・・・」とチャグム。

戦闘帆船の乗員たちはモンを拘束した。

「今なら・・・脱出が可能です」とジン。

「我らも共に参ります」と乗員たち。

「それはならぬ・・・お前たちは虜囚である間は命が保証されているが・・・脱走すれば殺されるかもしれぬ」

「しかし・・・船を操るものがいなければどこにも行けませぬ」

「シュガ・・・お前は残って皆の面倒を・・・」

「星読博士がいなければ船はどこにもたどり着けませぬ」

「・・・」

病人発生を装い・・・見張りを騙そうとした計画はチャグム暗殺のために手段を選ばないモンの叫びによって失敗し・・・屈強なサンガルの兵士たちにジンも苦戦を強いられる。

なんとか海岸線にたどり着くチャグムだが・・・もたもたしているうちにサンガルの兵士の投げた槍に貫かれてしまうのだった。

「あああああああ」

「チャグム様」

意識を取り戻したチャグムはサンガルの海賊セナ(織田梨沙)の海賊船に拘束されていた。

「ここは・・・」

「タルシュ帝国に向う船の上でございますよ」とヒュウゴ(鈴木亮平) が応じる。

「皆の者は・・・」

「無事ですよ・・・牢に戻しました」

「そうか」

チャグムは舌を噛んで自殺をしようとすかるが気配を読んだヒュウゴはチャグムの口に指を挿入する。

「私の指でよければいくらでも噛んでください・・・バルサとはあなたの大切なお方ですかな・・・何度も囈で呼ばれていましたぞ・・・その方のためにも命は粗末になさるな・・・私はタルシュ帝国の軍人ですが・・・元は南のヨゴ国の民でした。南のヨゴはタルシュ帝国と戦い敗れました・・・それでヨゴの人々は不幸になったかといえばそんなことはありませんでした」

「・・・」

「それどころか・・・人々は以前より豊かな暮らしを手に入れたのですよ・・・戦では多くの人々が死にました・・・しかし・・・生き残った人々は・・・今ではこう思っています・・・悪かったのは・・・タルシュに戦を挑んだヨゴのミカドだったのではないかと」

「・・・」

「チャグム殿下・・・あなたには・・・まだ戦を止めるという手が残っている・・・そのために・・・タルシュ帝国というものの現実を知ってみたいと思いませんか・・・ははん」

「ゆびをくちからぬいてくれ」

「おや・・・これは失礼」

スファルは穴牢のタンダの元へと現れる。

「自由の身になったのですか」

「娘の邪魔をしないと約束した」

「何故・・・ここへ」

「お前を助けるためじゃ・・・チキサは殺されぬだろうが・・・お前は殺されてしまうかもしれぬ」

「・・・チキサを残しては」

「タンダさん・・・行ってください」

「チキサ・・・」

トウノの隊商は交易相手の遊牧民の集落に到着する。

「もう少し・・・先まで一緒に」とトウノ。

「いいや・・・ここで別れよう」とバルサ。

「せめて・・・今夜はこの集落に泊まるといい」

「かたじけない」

その夜・・・狼の群れが集落を襲う。

「狼が吠えているよ・・・」

「こわいのかい」

「お父さんは・・・狼にかみ殺された」

「私がついている・・・大丈夫だ」

「でも・・・」

「待っておいで・・・追い払ってくるから」

しかし・・・狼の群れは飢えていた。

槍という武器は剣よりも三倍の利があると言われる。

しかし・・・それはあくまで個人的な格闘の場においての話である。

狼たちの群れによる狩りに対応することにはそれほどの利はない。

突き刺せば抜く必要があり・・・薙ぎ払えば片側が無防備になる。

二匹の狼を屠ったバルサは三匹目に押し倒された。

「くそ・・・」

その時・・・アスラが神を呼んだ。

仰向けに寝たバルサの上を修羅の旋風が吹き過ぎて行く。

狼たちは一匹残らず血まみれの肉塊となった。

振り返ったバルサはアスラの顔に浮かぶ悪鬼の哄笑に震えるのだった。

破壊神タルハマヤの恐ろしさを実感するバルサ。

それは・・・かっての自分の姿を思い出させる。

槍を振るい敵にとどめを刺そうとしたバルサをジグロがいさめる。

「バルサ・・・人を殺すのが楽しいか」

「楽しい?」

「お前は笑っていたぞ」

「笑ってなどいない」

「自分で・・・気づいておらぬのか・・・バルサよ・・・人に槍を振るい人の命を奪っている時・・・人は己の魂を削っているのだ・・・己の魂を己の槍から・・・どのように守るのか・・・それは自分で考えなければならぬ・・・そればかりは俺にも教えられぬ」

「己の魂を守る・・・」

目覚めたアスラはバルサに微笑む。

「ねえ・・・神様・・・いたでしょう・・・バルサにも見えたでしょう」

「アスラ・・・」

「バルサ・・・泣いているの・・・何故泣くの」

バルサは己に問う・・・アスラの魂を守る術が自分にあるのかと・・・。

自分自身の魂を守れているのかどうかもわからないと言うのに・・・。

だから・・・バルサは泣くしかないのだった。

二人の様子をタルの民イアヌ(玄理)が監視していた。

ロタ王国の王宮にシハナが現れる。

「音もなく近寄るな」と叱責するイーハン。

「失礼しました」

「何かあったか・・・」

「トリーシア様の娘を見つけました・・・お会いになりますか?」

「会おう・・・」

「王宮が静かすぎるようでございますが・・・」

「兄が死んだのだ」

「・・・」

「このことは・・・建国ノ儀まで秘せよと命じられた・・・よいな」

「承知いたしました」

人は安全のために力を求める。

そして力は人の安全を脅かす。

それが理というものなのだ。

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2017年2月16日 (木)

命繋ぎます(武井咲)

「命預けます」なら藤圭子である。

「緋牡丹博徒 お命戴きます」なら藤純子である。

正妻との間に二児があり、三人の愛人を次々に妊娠させる・・・現代なら大スキャンダルだが・・・時代劇なら本当にあった話なのである。

フィクションの面白さは・・・お茶の間のモラルに毒された人々の「心」を揺さぶる醍醐味にこそある。

フィクションとノンフィクションの区別がつかないのは一種の病だが・・・世の中にはそういう病に冒された人がいないわけではなく「このドラマはノンフィクション」ですという怪しいフレーズが生まれる。

「大きな声では言えない話」がある社会は不幸である。

しかし「大きな声」で「何か」を隠そうとする社会もまた不幸である。

たとえば「芸能界のしきたり」という意味不明なものを叫ばなければならない人もある意味不幸である。

「契約」が有効なのか無効なのかを裁判所の判断に委ねることも不幸と言えば不幸だ。

何かが上手くいかない時には何処かに原因があるものだがそれが「命そのもの」だった場合も不幸だ。

「悪役」を演じて石を投げられる役者は不幸だがある意味幸いである。

「女優は駆け出しの頃は衣装の布が少ないのが当たり前」と言った名女優は不幸なのか。

「性」を主題にしたドラマと「女優の心」の問題は永遠の主題である。

体当たりの演技という言葉がいつまでも許されますように。

女優が「絶対に性を売り物にしない世界」は空虚でかなり荒廃しているに決まっている。

で、『忠臣蔵の恋〜四十八人目の忠臣〜・第18回』(NHK総合201702111810~)原作・諸田玲子、脚本・吉田紀子、演出・清水一彦を見た。赤穂義士・磯貝十郎左衛門(福士誠治)の内縁の妻・きよ(武井咲)は「赤穂浅野家再興の志」を胸に儒学者・細井広沢(吉田栄作)らの画策により、甲府宰相・徳川綱豊(平山浩行)に送り込まれる。自分が側室候補だったと知った時には「お喜世の方」と呼ばれ五代将軍・綱吉によって将軍世嗣と定められた徳川家宣の世継ぎを産むことを定められたきよなのである。

そういう時代なのである。

Chukoi003 宝永二年(1705年)・・・きよは江戸城西の丸の奥御殿で左京の方と呼ばれる側室となっていた。

「お殿様に・・・お聞きいただきたいことがございます」

きよは褥で家宣に「赤穂浅野家再興」を願い出ようとするが・・・気配を察した家宣に口を塞がれる。

「一度下った沙汰を覆すためには・・・人々を納得させる大義が必要じゃ・・・時を待て・・・今はその時ではない」

そもそも・・・寝室で愛妾が主君に願い事をするのはご法度(禁止事項)である。

そのために・・・監視役が耳を欹てているのだった。

無茶をするにも程があるのだった。

しかし・・・家宣のすべてを察した言葉に驚くきよ・・・。

(御殿様は・・・私が浅野家に仕えた過去をご存じなのか)

十郎左衛門意外の男に身を任せる日々を完全には受け入れてはいないきよだった。

きよ/左京の局という二重の心がわだかまる。

「月のものを・・・ですか」

指南役である江島(清水美沙)に生理について報告することを命じられ驚く喜世・・・。

「ご懐妊のためには必要なことでございます」

「・・・」

「奥医師の多紀法印様より・・・身体のしくみについて御教授を受けてまいりました」

江島は「御懐妊要録」なる書を喜世に渡すのだった。

「これは・・・」

「よくよく御精読なされますように」

家宣に身を開きながら・・・家宣の子を宿すことを心から受け入れられぬ喜世なのである。

宝永二年六月・・・。

五代将軍綱吉の生母であり・・・元禄十五年に女性としての最高位である「従一位」を授かった桂昌院が逝去した。

喜世の元へ家宣に仕える朱氏学者・新井白石(滝藤賢一)が現れる。

奥御殿も一種の男子禁制の場であるがドラマである。

「間部詮房様からお聞きしていましたが・・・これほどまでにお美しいとは」

主君の側室に言う言葉ではないがドラマである。

「無礼者」と手討にはならないのだった。

「一位様がお隠れになりました」

「公方様もさぞ御気落ちのことでしょう」

「これは世が変わる前触れですぞ」

「・・・」

「去る元禄十四年の刃傷沙汰に際して公方様が下した御沙汰も・・・一位様の官位を賜るに際しての御配慮と無縁ではなかったと申すものもおりまする」

「・・・その件がなければ御沙汰が変わったと・・・」

「いやいや・・・そこまでは申しませぬ・・・しかし・・・世を治める方が変われば・・・御沙汰も変わることは必定」

「そのような大それたお話・・・お口が過ぎるのでは・・・」

「ははは・・・戯言でござるよ」

軽い新井白石であるが・・・儒者として白石は将軍綱吉の治世を憎むこと甚だしいという説もある。

宝永三年(1706年)、伊豆大島へ流されていた村松政右衛門(井之脇海)の依願赦免が認められた。

政右衛門は他の遺児よりも一足早く江戸へ戻り、出家して無染と号した。

そんな人間が西の丸奥御殿に迎えられるわけがないがドラマである。

謎の豪商・木屋孫三郎(藤木孝)は謎の力で村松政右衛門と堀部ほり(陽月華)を連れ西の丸御殿で喜世に御目通りするのであった。

ちなみにほりは元禄十六年(1703年)に肥後国熊本藩藩主・細川綱利に召抱えられた従兄弟の堀部言真(堀部弥兵衛の甥)と熊本に転居したと言われている。

ここではおそらく熊本藩江戸屋敷で侍女をしているということなのだろう。

「御蔭様で江戸に戻ってくることができました」

「私など何のお力にもなっていませんが・・・亡き兄上様はさぞお喜びのことでしょう」

「お喜世の方様は大変なご出世・・・おめでとうございます」とほり。

「はたして・・・これが出世と申せるのでしょうか」

喜世には迷いがある。

「何を申します・・・お喜世の方様は・・・我らの光明なのでございます」

「光明・・・」

「希望の光でございます・・・なにとぞ・・・お世継ぎをお生みくだされませ」

すべての事情を知るほりに・・・「望み」を伝えられ・・・複雑な気持ちになる喜世だった。

もちろん・・・それは「愛する男の子を産みたい」という幻想に基づく心なのである。

お茶の間を相手にしている以上・・・脚本家が避けては通れない葛藤の極みなのだった。

喜世がいかに不本意であったとしても周囲は喜世が家宣の子を産むことを求めるという体裁が必要なのである。

そういう体裁を必要としない右近の局こと古牟(内藤理沙)が懐妊する。

宝永四年(1707年)七月・・・右近局は男子を出産する。

「お手柄であらしゃった」と正室の近衛煕子(川原亜矢子)も右近局をねぎらう。

右近局の生んだ子は「家千代」と命名された。

右近局は一之部屋様と呼ばれることになった。

しかし・・・九月・・・家千代は早世する。

一之部屋様は慟哭する。

「あのような身分低きものが将軍の母にならずにすんでよかった」と正室サイドは罵る。

近衛煕子の大典侍であり、家宣の側室の一人でもあるお須免の方(野々すみ花)は猫嫌いの正室のために・・・一之部屋様の愛猫を密かに追い払う。

愛児を失った一之部屋様は愛猫を求めて夜毎・・・御殿を彷徨うのだった。

「みいや・・・みいや」

「一之部屋様・・・お気を確かに」

喜世は一之部屋様を慰めようと言葉をかける。

「私には何もない・・・」

「きっと・・・また」

「お腹を痛めた子を失った苦しみをわかるものか」

「・・・」

「くやしかったら・・・子を産んでみせよ」

一之部屋様の乱心に言葉を失う喜世だった。

宝永五年(1708年)・・・今度はお須免の方が妊娠する。

「好機到来でございます」と矢島。「一之部屋様は養生所に入られ・・・お須免の方は御懐妊・・・殿のご寵愛を喜世の方様が一身に・・・」

「一之部屋様を里に戻すわけには参らぬのでしょうか」

「側室として一度はお殿様の子をお生みになったお方が里に戻るなどということはありませぬ」

「・・・」

「一生を奥で過ごす定めでございます」

「お須免の方様が・・・お子を産めば・・・私が産まずともよいではないですか」

「何を申されますか・・・お子が男子であるとは限りませぬ・・・お子が無事に生れるとは限りませぬ・・・生れても幼くして亡くなることもございます」

「・・・」

「公方様がお隠れになれば・・・次の公方様とともに女たちは本丸大奥に移ります」

「大奥」

「そこで・・・頂点に昇り詰めるのは・・・次の公方様を産んだお方です」

「・・・」

「私は・・・喜世の方とともに・・・出世したいのです」

江島の気迫に気圧される喜世だった。

喜世にはそのような望みはないのだった。

「今宵・・・殿のお召しでございます」

心乱れたまま・・・褥に侍る喜世・・・。

しかし・・・家宣は意外な言葉をかける。

「お古牟はいかがしておるか」

「お伏せりでございます」

「そうか・・・かわいそうなことをした」

「・・・」

「儂の子は育たぬ・・・」

「お殿様・・・」

「煕子との子も育たなかった・・・すべては儂が病弱ゆえじゃ」

「そのようなことは・・・」

喜世は初めて家宣の心に触れたような気がした。

「しかし・・・余は将軍世嗣じゃ・・・血筋を絶やすわけにはいかぬ・・・なんとしても・・・次の将軍世嗣を儲けなければならぬのじゃ・・・」

喜世は家宣を憐れと感じた。

喜世の心は解けた・・・。

「承知いたしました・・・喜世が・・・将軍世嗣様を必ずや・・・お殿様のためにお産みいたします」

十郎左衛門のことを忘れたわけではない・・・しかし・・・この夜・・・喜世は身も心も・・・家宣に捧げたのである。

監視役の江島は微笑んだ。

宝永五年(1709年)十二月・・・お須免の方は大五郎を出産した。

「お手柄であらしゃった」と正室の近衛煕子はお須免の方をねぎらう。

「これで公家の血を引く公方様が世を治めることになる・・・霊験あらたかな御祈祷の甲斐があったと申すもの・・・」

煤払いを終えた後の暮れの宴・・・西の丸奥御殿は華やぐ・・・。

家宣は酔いざましに庭から月を見る。

「お風邪をお召しになりますぞ・・・」

喜世は家宣の身を案じる。

「酔ったのじゃ・・・今宵は・・・めでたい心持ちじゃ・・・」

「殿・・・私にも・・・お子が授かったようでございます」

「なんと・・・」

喜世は優しく微笑んで・・・家宣を見つめた。

月光が二人を照らす。

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2017年2月15日 (水)

地獄の長いトンネルを抜けると地獄だった(吉岡里帆)

弱肉強食の世界において人を食いものにする人は普遍的な存在である。

金メダリストを育て上げる親も養豚場の経営者にどこか似ている。

芸能界に憧れる未成年者を選抜し消費者向けに出荷するビジネスも合法的なのである。

売買春は法律で罰せられるがグレーゾーンは常にある。

人間のどの部分を性的対象ととらえるかには個人差があるが売り手は売りどころを心得ているものだ。

競泳選手が競泳用水着姿をプールサイドで撮影されることに性的な意味合いがないと断言はできない。

話題の芸能人が一部報道で「水着姿が嫌だった」と主張したと第三者が発言している時に本人の水着写真を大きく掲載することが報道という名の印刷物を売りだすビジネスなのである。

一方で獲得した信者のお布施で成立する宗教団体はなるべく大きく報道されることが信者獲得のための広報手段として利がある場合が多い。

不特定多数のイメージの問題ではなく不特定多数の誰かを獲得できれば目的が達成できるのである。

朝鮮半島の利権を中露で争うような物騒な事態はそれなりに白熱するものだ。

もちろん・・・そういう舞台裏の事情はなるべく見せずに「夢」を売るのが王道だが・・・時には生々しい現場をさらしてしまう外道があってもいい。

吹けば飛ぶようなスタッフたちは右往左往することになるが・・・それがショー・ビジネスなのである。

人が人を食う世界で自分だけが安全だと思う方がどうかしている。

パンツをはかないでスボンをはく人もいればパンツをかぶる人もいるのが世界というものだ。

誰が何を食べるのかは食べられる方ではなくて食べる方が決めるのだ。

やろうとおもえばやれる。

こっちだってやれる。

人々が脅し合うのは・・・食べられたくない一心なので仕方ない。

で、『カルテット・第5回』(TBSテレビ20170214PM10~)脚本・坂元裕二、演出・土井裕泰を見た。カルテット・ドーナツホールの第一ヴァイオリン・巻真紀(松たか子)は夫が失踪中の人妻である。世界的指揮者を祖父に持つ第二ヴァイオリン・別府司(松田龍平)はまきまきのストーカーであるが・・・巻の自宅でまきまきに一方的な愛を告白する。そこで何者かが玄関の鍵を解錠しドアを開ける・・・。

巻氏の失踪の謎を探るチェロ・世吹すずめ(満島ひかり)の依頼者はまきまきの夫の母親である巻鏡子(もたいまさこ)である。

「息子は嫁に殺された」という鏡子の疑いが・・・妄執ではないかという結論にたどり着いたすずめはまきまきに対するスパイ行為の放棄を鏡子に申し出る。

軽井沢の古い教会で・・・ボイスレコーダーを返却しようとするすずめだった。

「まきさんは人を殺すような人ではありません」

「あの女・・・夫婦の部屋に男を連れこんでいたんだよ」

チェックした寝室に性的な行為後の気配がなかったことに落胆した鏡子なのだった。

「別府さんはゴミを捨てに行っただけです」

「あの女は夫が失踪した後にパーティーで馬鹿笑いをするような女なんだよ」

「まきさんは裏表があるような人ではありません」

「何を今さら・・・あんただって・・・嘘をついてあの女に近づいたんじゃないか・・・綺麗事を言うんじゃないよ」

他人の弱みにつけ込むという恥ずべき行為を恥ずかしげもなく行う鏡子には正義はない。

ただ・・・ひたすらどす黒いのである。

何が彼女をそうさせたのかは明らかではないが生れつきなのかもしれない。

「とにかく・・・私はもう辞めます」

すずめは鏡子の綺羅綺羅しいバッグにボイスレコーダーを押しこんで教会を去った。

入れ替わりに元地下アイドルでライブレストラン「ノクターン」のアルバイト店員・来杉有朱(吉岡里帆)が年老いた悪魔の潜む教会に足を踏み入れる。

こうして教会は悪魔の巣窟と化すのだった。・・・おいおいおい。

別府家の別荘・・・。

時々ノーパンのヴィオラ・家森諭高(高橋一生)は練習の途中ですずめに問う。

「あの・・・まきさんがベランダから夫さんを突き落としたという話・・・まきさんにしたかい」

「しませんよ・・・イエモリさん・・・まきさんの夫さんにからかわれたんじゃないですか」

「かもしれないけど・・・本当かどうか・・・すずめちゃんなら聞きだせるんじゃないかと」

「聞き出せません!」

そこにまきまきと別府が合流し密談は中断する。

ライブレストラン「ノクターン」の楽屋・・・。

谷村大二郎(富澤たけし)と多可美(八木亜希子)のオーナー夫婦が言い争いながら登場。

「夫婦が互いの携帯を覗きあうことの是非」を問いかける。

「わぼみいたくるやしはけではだどす・・・・」

カルテットとして和する四人だった。

「一人ずつお願いします」

「私は別に構わないと思います」とまきまき。

「僕は大体平気です」と別府。

「見るけど見られるのは嫌だ」とヤモリ。

「嫌です」とすずめ・・・。

夫婦の間の秘密についてそれぞれの感覚は不一致しているのだった。

まきまきは鏡子が訪問した時に笑顔で応対する。

鏡子の腰を揉むほどの良い嫁ぶりである。

「息子が死んだ気がする」

鏡子は邪な目付を隠して探りを入れる。

「ごめんね」とまきまき。「もっと会いに行けばよかったね・・・そんなことを考えてたんだ・・・そんなことないのに・・・」

嫁として姑を気遣うまきまきの言葉に落胆する鏡子なのである。

それぞれの内面を抱えながら演奏するカルテット。

その夜の「ノクターン」には来客があった。

別府の弟の圭(森岡龍)である。

「別荘の件なんだけど・・・」

「売るのかい・・・」

「兄さん次第さ・・・他の人たち・・・無職なんだって」

「でも・・・みんな・・・一生懸命・・・」

「あきらめきれない人たちなんだろう」

「・・・」

「母さんとも話したんだけど・・・とにかく仕事として成立しないとね」

「仕事として・・・」

別府は弟の紹介で音楽事務所のプロデューサー・朝木国光(浅野和之)からの仕事を請負うことになる。

恐ろしいほどのタイムリーさは・・・それが普遍的な話であることの証明に過ぎない。

別府ファミリーが一流なのかどうかは定かではないが・・・朝木音楽事務所は・・・カルテットドーナツホールが夢見る大きなホールでの演奏の仕事を宛がう実力を持っている。

「夏のクラシック音楽のフェスティバルに参加しませんか」と誘う朝木・・・。

「無理です・・・ヘタクソだから生卵をぶつけられます」と消極性を発揮するまきまきだった。

「とにかく・・・演奏を拝聴しましょう」

「ノクターン」での演奏中・・・まきまきは渋い顔をする朝木を盗み見る。

「きっと・・・あきれて帰っちゃいましたね・・・」

しかし・・・朝木は楽屋にやってくる。

「素晴らしかった・・・どうしてあなた方がプロになれなかったのが不思議なくらいです・・・ファースト・・・あなたは何をしていたのですか」

「主婦です」

「とにかく・・・皆さんには華がある・・・あなたたちは売れます」

「・・・」

「しかし・・・問題点がないわけではない・・・たとえばチェロ・・・遊び過ぎです」

「はい」

「ヴィオラ・・・楽譜を読みこんで」

「はい」

「セカンドは・・・もっと自分を主張して」

「はい」

「そしてファースト・・・もっと音に酔ってください」

褒められてアドバイスされて・・・昇天しかかるカルテット。

「気をひきしめて」

「ああいう人は口が上手いから」

「でもうれしかった」

「あんなに褒められたの生れて初めて・・・」

カルテットは薔薇色の未来にうっとりした。

「僕は一度でいいから破天荒な男と言われたいという夢があります・・・」と別府。

「家内安全・・・無病息災」とまきまき。

「ジュノンボーイもしくはベストジーニストに」とヤモリ。

「お布団の中に住む事です・・・それから自分の部屋に回転ずしを引く事です」とすずめ。

「それぞれの夢は別として・・・今はカルテットドーナツホールとしての夢を見ましょう・・・僕たちは今・・・上り坂にさしかかっているのかもしれません・・・みんなで坂の上を目指しましょうよ」

別府の提案に笑顔で答えるメンバーたちである。

みんな・・・みぞみぞしてきたらしい。

夜更け・・・「インタビュー」の書き起こしのアルバイトをしていたまきまきは「くそっ」と罵る。

「なにが・・・くそなんですか」と通りすがりのすずめ・・・。

「このカメラマン・・・くそ野郎なのよ・・・結婚しているくせに・・・妻には愛を感じないとかなんとか」

「・・・」

「私・・・夫が消えた次の日・・・友達の結婚パーティーに出て・・・くそ野郎って叫んだもの」

「え・・・パーティーに・・・心配じゃなかったんですか」

「お義母さんに連絡したら・・・お義母さんがとんできて・・・取り乱して・・・その時・・・思い出したのよ・・・彼がお義母さんと二人暮らしの時に・・・彼が面倒くさくなってお義母さんを捨てたって話してたこと・・・私は悟ったの・・・ああ・・・今度は私が捨てられたんだなって・・・だから・・・パーティーで夫のことをくそ野郎って罵って思いっきり笑顔で写真撮ってもらったの・・・」

「・・・その話・・・お母さんにしたんですか」

「できないわよ・・・可哀想だもの」

すずめはその話を信じ・・・自分の中でひとつの霧が晴れたような気分になった。

まきまきは・・・すずめのセーターに取付いた鏡子のバッグの綺羅綺羅の破片をゴミとして取り除く・・・。

すずめは秘密が発覚することの恐怖に慄くのだった。

カルテットをプロデュースする朝木は人気ピアニストの演奏補助の仕事をブッキングする。

それは・・・四人の想像を遥かに凌駕する「お仕事」だった。

「皆さんにはピアニストの若田弘樹さんと五重奏を演奏してもらいます」

演出家の岡中兼(平原テツ)はカルテットに説明する。

アシスタントの藤川美緒(安藤輪子)はファンタティックな翼を背負ったピアニストのセット模型に点灯して綺羅綺羅をサービスするのだった。

その華やかさにみぞみぞするカルテット・・・しかし。

ステージ衣装に着替えた四人はとてつもない違和感に包まれる。

「キュンキュンしますね」と藤川。

「キュンキュンするね」と岡中。

「あの・・・これは・・・」

「設定です」

「設定・・・」

「皆さんは地球外生命体の戦闘型カルテット・・・美剣王子愛死天ROOなのです」

「戦闘型カルテット・・・」

「それぞれのキャラは・・・アラサーキャラ、童貞キャラ、どS王子キャラ、妹キャラです」

「キャラ」

「お決まりのセリフもあります」

「ありがとう・・・ショコラ」とアラサーまきまき。

「時すでにお寿司」と童貞別府。

「よろしく頼ムール貝」とヤモリ王子。

「鬼茶碗蒸し」と妹すずめ・・・。

四人は異次元空間に足を踏み入れる。

「次は振付です」

「振付・・・」

「ダンスです」

「ダンス・・・」

踊らされるカルテットなのである。

キュンキュンするポーズを決める四人。

階段で弁当を使うのだった。

「なんか・・・なんかな」とイエモリ・・・。

そこへ・・・アシスタントフジカワがお茶を持ってやってくる。

「こんなところですみません」

「いえ・・・」

「皆さん・・・カルテットを組んで長いんですか」

「数ヶ月です・・・」

「それでこんな大きな舞台に立てるなんて凄いですね」

「・・・」

「私も・・・本当はピアニストなんです・・・でも舞台に立つのなんて夢のまた夢で・・・皆さんに憧れちゃいます」

「がんばります・・・」

何が綺羅綺羅して・・・何がくそなのか・・・計りかねるカルテットなのである。

演奏の練習ではなくダンスの練習に追われるカルテット。

「今日は以上です」

「え・・・」

「お客さんはキュンキュンを求めてくるので演奏の方は大体で大丈夫ですよ」

「しかし」

「お仕事ですから」

厳しい顔を見せるアシスタントフジカワだった。

そこに朝木が顔を出す。

「もう少し練習したいのですが」

「これから飲み会です」

「でも」

「飲み会も接待という仕事ですよ」

「要求に応えるためにベストを尽くしたいのです」

「要求に応えるのは一流の仕事・・・ベストを尽くすのは二流・・・我々のような三流は楽しく笑顔で仕事をすればよろしい・・・」

「しかし・・・せっかくの仕事なので」

「あなたがたに仕事を与えたのは・・・別府さんの弟に頼まれたからです・・・あの方にはいろいろと世話になっているので」

下積みの身から見ればめくるめく幸運・・・だが・・・彼らには奏者としてのプライドがあった。

求められなくても・・・深夜のカラオケボックスで・・・自分たちを追い込むのである。

たとえ「仕事の内容に心がおいつかない」としても・・・。

コンサート当日。

ピアニストの到着が遅れ・・・五重奏の当日リハーサルはスケジュールからカットされる。

「リハなしでは・・・さすがに無理です」

「大丈夫だ・・・音源を流すから・・・君たちは振りに専念してくれればいい」

カルテットは「ギリギリの状態」になった。

「こんなことしたくない」とすずめ。

「こんなことやる必要ないんじゃないか・・・」とイエモリ。

沈黙する別府。

すずめは楽譜をゴミにする。

「すみません」と白タイツ別府。

「帰ろう・・・」とイエモリ。

「やりましょう!」とスリットまきまき。「私たち・・・実力もないくせに・・・夢見たいだと思ったじゃないですか・・・私たち・・・大きなホールで演奏するなんてウソだろうって思ったじゃないですか・・・きっと・・・これが私たちの実力なんだと思います・・・これが現実なんだと思います・・・だったら三流の自覚をもって社会人失格の自覚をもって・・・演奏する振りを・・・してやりましょうよ・・・・プロとしての私達の仕事を見せつけてやりましょう・・・カルテットドーナツホールの夢を」

「・・・はい」

唯一のプロ経験者の言葉に従うアマチュアたちだった・・・。

すずめは涙を拭う。

綺羅綺羅したクソ仕事を完遂するカルテット・・・。

クソ仕事の本番はお茶の間向けではなかったので割愛された・・・。

見たかった人も多かっただろうが・・・。

「いやあ・・・素晴らしかった」

「キュンキュンしました」

プロデューサーとアシスタントはカルテットを送り出す。

「お疲れ様でした・・・」

頭を下げるカルテット・・・。

去って行く車を見送る三流のプロたち。

「楽しくなかったみたいですね」

「志のある三流は・・・四流だから」

朝木はすべてお見通しなのである。

カルテットは街かどで「Music for a Found Harmonium」を演奏する。

たまたま通りかかったアイリッシュ系の外国人が心を掴まれる。

カルテットは・・・プロであることを忘れ・・・単なる奏者となる。

音楽に身を捧げることは・・・心躍ることだった。

それを稼業にするのとは別の話なのである。

カルテットは・・・浮世の憂さを晴らした。

別府は弟に「断り」の電話を入れる。

別荘を売却する話が出るからには別府ファミリーにもなんらかの事情があるわけである。

しかし・・・執行猶予は与えられたらしい。

すずめは鏡子に電話をかけた。

「私の結論を伝えたいと思いまして・・・」

(もういいのよ)

「え」

(あなたはもういらないの・・・さようなら)

「・・・」

鏡子の禍々しい言葉に・・・不安を感じるすずめである。

別荘には・・・アリスが訪れていた。

「アリスちゃんが・・・衣装を持ってきてくれたのよ」とまきまき。

恐ろしい予感に心が震えるすずめ。

アリスは・・・鏡子のボイスレコーダーをすずめに誇示するのだった。

「アキバにいた頃の奴なんですが・・・直せば使えるかなと思いまして」

「ソーイング・セットを持ってきますね」

衣装の寸法を直し始める三人・・・。

「シェフたちの夫婦喧嘩は納まったのかしら」

「多可美さんがロックしたので・・・シェフが夫婦の寝室に鍵をかけるようなものだって」

「寝室って・・・」

「まきさんは・・・どうですか」

「私は・・・夫のことは知りたいとは思うけど」

「まきさんは・・・ずっと軽井沢にいて・・・大丈夫なんですか」

アリスが自分の後継者であることを確信するすずめ・・・。

「バームクーヘン食べますか」

「私はいいです」

アリスの言葉を封じようとデュオとなるすずめだった。

「バームクーヘンはなかったんじゃない」

すずめの言葉を聞きわけるまきまきである。

「鳥のマークの奴」

「ご主人は怒らないんですか」

「ああ・・・ロールケーキ」

「ロールケーキ食べましょう」

「私はいりません・・・酉年だし」

「それは・・・」

「鳥肉きらいだし」

「ロールケーキに鳥肉は入ってないわよ」

「すずめだけど人間です」

「夫婦だってドキドキするようなことは必要だと思うのよ」

「それって神話ですか・・・忌まわしい内緒話ですか」

「ロールケーキを」

「正義は大抵負けるってことでしょ・・・夢は大抵叶わない・・・努力は大抵報われないし・・・愛は大抵消えるってことでしょ・・・そんな耳触りのいいことを口にしてる人って現実から目を背けてるだけじゃないですか・・・夫婦に恋愛感情なんか・・・あるわけないでしょう」

「ううう」

「浮気はばれなければいいのです」

「アリスちゃん・・・それではズボンの下がノーパンみたいです」

「人間関係なんてみんな本当はノーパンでしょう」

「意味がわからない」

「人はみな本当と嘘が三対七ですよ」

「それじゃあ・・・人間は水ですか」

「私はロールケーキ食べたいな」

「ご主人はどうなんです」

「私の主人は・・・いなくなってしまって」

「ええっ・・・家出系ですか」

「・・・」

「どうしていなくなってしまったのですか」

「そんなこと・・・聞く必要ないでしょう」

「ええっ・・・すずめさんは知りたくないのですか」

アリスの死体の目による真顔攻撃!

「まきさん・・・答える必要ないですよ」

すずめの捨て身の防御!

「どうしてですか・・・私は変なことを聞きましたか」

「私は片思いだったみたい・・・」

「もう・・・やめて」

アリスは笑わない目ですずめを観察する。

「みんなウソツキですよね」

アリスは獲物をいたぶる猫のようにすずめに微笑む。

「アリスちゃん・・・私に何か・・・含むところが」

「夫婦に恋愛関係なんかあるわけないでしょ・・・夫婦に恋愛感情なんかを持ち込むから夫婦間の殺人が起こるんでしょ・・・大好き大好き大好き大好き大好き殺したい・・・って」

「ロールケーキ食べましょう」

「ご主人・・・もう生きてなかったりして・・・」

「やめて」

すずめはアリスにすがり・・・反動でまきまきの足元にボイスレコーダーが転がり落ちる。

どこまで計算されているのかわからない・・・アリスの魔性にお茶の間は呼吸を忘れる。

思わずボイスレコーダーを手に取り再生ボタンを押すまきまき・・・。

流れ出した音声は・・・別荘でのカルテットの懐かしい会話だった。

すずめはまきまきを裏切っていた日々の報いを受けるのだった。

「すずめちゃんは嘘のない子・・・そういう子と一緒に暮らす喜びがある」とまで言ってくれたまきまきにずっと嘘をつき続けた日々が・・・すずめにふりかかる。

とめどのない涙があふれ・・・首をたれるすずめ。

茫然とするまきまき。

修羅場を楽しんだアリスはまとめるのだった。

「鏡子さんに頼まれたんです・・・あの人・・・まきさんのこと疑ってて・・・まきさんがご主人を殺したんじゃないかって・・・私たちはそんなことないと思ってて・・・まきさんがそんなことするわけないって教えたくて・・・私たちは真紀さんの味方ですからね」

「・・・そうなの・・・ありがとう」

まきまきの顔からはすべての表情が抜けおちる。

笑わない目のまきまきは笑わない目のアリスを無視するのだった。

緊張の現場に宅配便が到着する。

すずめは・・・後悔に苛まれ・・・別荘から脱出するのだった。

残されたまきまきとアリスの間には冷たい静電気が通い合うのだった。

夜の帳が降りるまで町を彷徨うすずめは奇妙な男と衝突する。

「ごめんなさい」

「・・・です」

散乱した男の荷物の中にカルテットのパンフレットを発見するすずめ。

「ドーナツホールをご存じなんですか」

「ご存じっていうか」

「怪我をしてるんですか」

「犬に・・・まれた・・・けです」

「え」

「かまれた」

「え」

「だけです」

「え」

「ラブラドール」

「レトリーバー」

別荘に戻ってくる別府とイエモリ。

「バイト見つかりましたか」

「割烹着を着るやつなんだよね」

「割烹着・・・」

灯りの消えた別荘に異変を感じる二人・・・。

「何かありましたか・・・」

まきまきは二人に携帯端末の画像を見せる。

「この人が・・・」

「夫です」

母親を捨てたことがあり・・・いい会社に勤めてるエリートで・・・まきまきをはじめての花火デートに誘い優しくエスコートして・・・花火の火が落ちてきたら僕が手を引いて逃がしてあげると言い・・・唐揚げにレモンは無理ということはずっと隠し続け・・・妻を愛してるけど好きじゃないと部下に言い放ち・・・平熱高くて首筋から匂いがする・・・靴下脱ぎっぱなしにしてちょっとコンビニ行ってくると言ってそのまま帰ってこなかった夫(宮藤官九郎)である。

その・・・すべてを蒸発させてしまう暴力的な存在感・・・。

一部お茶の間は叫ぶ・・・「クドカンかよ」・・・。

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2017年2月14日 (火)

世界でただ一つの大切な命(木村拓哉)

人間は命を大切にする世界で生きている。

自分の命も大切だし他人の命も大切だと人間は教えられる。

人間の命だけではなくあらゆるものの命が大切だと感じることもある。

しかし・・・命は命を犠牲にして永らえるものだ。

そこに思い当たれば言葉が嘘であることがわかる。

不誠実で不条理に満ちた世界で人間は生きて行く。

他の命を殺して生きて行く。

だから命の中でも自分の命が大切なのである。

自分の命よりも大切なものがあると思いこんだ人間は愚かである。

けれど・・・愚かさは時に恐ろしく・・・時に美しい。

不特定多数の命ではなく特別な命があることに気がつくこと。

人はそれを愛と呼ぶのかもしれない。

で、『A  LIFE~愛しき人~・第5回』(TBSテレビ20170205PM9~)脚本・橋部敦子、演出・平川雄一朗を見た。十年前に・・・幼馴染の外科医・沖田一光(木村拓哉)と壇上記念病院の院長令嬢である小児科医・壇上深冬(竹内結子)が心を通わせた屋上で・・・彼女は意識を失った。片山関東病院で提携のための条件交渉中だった深冬の夫で副院長の座にある鈴木壮大(浅野忠信)は我を失い病院に駆けつける。病院に走り込み、エスカレーターを駆け上がり世界で一番大切なものを確認しようとする。

深冬は目覚める。

一光は安堵する。

深冬は点滴を打たれていることに不安を感じる。

「何か・・・飲む?」

「ええ・・・」

そこへ・・・壮大が到着する。

「深冬・・・」

「あなた・・・」

見つめ合う夫婦を一光は見つめる。

その顔に浮かぶ表情は・・・何か複雑な気持ちを隠しているように見える。

副院長室で・・・「深冬の病状」という秘密を共有する二人の医師は追いつめられている。

「もう・・・伏せておけないんじゃないか」

「・・・」

「いつ・・・深冬に話してくれるんだ」

「まだ・・・確実な手術方法が見つかっていない・・・病名だけでなく・・・希望も伝えたい」

「もう俺が切るよ・・・家に帰っても深冬がいるんだよ・・・俺はどんな顔すりゃいいんだ」

「落ちつけよ」

「・・・」

冷静さを失う壮大・・・しかし・・・冷静ではないのは一光も同じである。

一光が他の患者よりも・・・深冬を特別扱いしていることは明らかであった。

いつ・・・発作が起きてもおかしくない脳腫瘍患者に医療行為を続けさせていることがその証拠である。

一光もまた我を失っているのである。

一光は治療法の検索という行為に逃避しているのである。

なぜなら・・・一光にとっても深冬は特別な存在だから。

深冬が生き生きと生きていることが何よりも優先されるのだ。

それは恐ろしいことなのである。

しかし・・・人間なんてそんなものなのだ。

世界中にあふれている患者と目の前にいる愛しい人の命が同じであるわけがない。

家族だから恐ろしくて執刀できないという壮大も。

不可能に見える手術の方法を模索し続ける一光も。

同じ穴の狢なのである。

二人は深冬の命という呪縛にがんじがらめになっているのであった。

壇上記念病院の第一外科部長・羽村圭吾(及川光博)は「日本の名医百選」に選ばれ雑誌に掲載された。

看護師長の西山弥生(峯村リエ)は看護師たちとささやかな祝宴の席を設ける。

「羽村先生・・・おめでとうございます」

「僕にとって名誉なことは・・・恩師の山本先生と同じ雑誌に掲載されたことさ」

「関東医師会の事故調査員に選ばれたことも・・・うちの病院にとって名誉なことですわ」

「そうだね」

「ねえ・・・井川先生」

「・・・」

うっかり深冬の病状を知ってしまった満天橋病院の後継者として修行中の井川颯太(松山ケンイチ)は心ここにないのである。

颯太の苦悩に気がついたスーパー・オペナースの柴田由紀(木村文乃)・・・。

「なんか・・・あった?」

「いや・・・なにも」

「そう」

ナース柴田は野菜抜き牛丼の差し入れを持ってドクター沖田を急襲する。

「何か・・・お手伝いできることがありますか」

手術に関してはドクター沖田とナース柴田は一心同体なのである。

しかし・・・一光は「秘密」を柴田に打ち明けることができない。

その「秘密」は特別だからである。

「いや・・・これはいい」

「脳腫瘍ですよね」

「これは大丈夫・・・お願いしたいことがあったら・・・言うよ・・・柴田さん・・・牛丼、ありがとう」

「生姜は?」

「いらない」

ナース柴田はなんらかの壁の存在を感じて撤退した。

ナース柴田はドクター沖田を特別に信頼しているのだ。

一光は牛丼を食べた。

食事は苦悩を一瞬忘れさせる儀式なのである。

牛肉を食べて今を生きる一光・・・。

ドクタールームで颯太は深冬に初歩的な術式の確認を求められる。

いつもと同じように快活に振る舞う深冬だったが・・・行動に綻びが生じ始めていた。

「最近・・・うっかり忘れちゃうことが多くて」

深冬の「病」を知る颯太はうろたえる。

「深冬先生・・・」

「はい」

「いえ・・・最近・・・意欲的ですね」

「そうねえ・・・これまでは院長の娘という立場に縛られていたんじゃないかなって思うようになって・・・自分の気持ちを大切にしようと思ったのよ・・・」

「自分を大切にすることは・・・大事ですよね・・・」

それ以上・・・踏み込みことはできない颯太なのである。

深冬の「死に直結しているかもしれない病」は壇上記念病院を蝕み始めている。

関東医師会の事故調査委員として羽村外科部長が担当する調査対象は・・・恩師の山本(武田鉄矢)が執刀したオペだった。

「僧帽弁閉鎖不全症に対するMICSか・・・」

僧帽弁は心臓の左心房と左心室の間にある弁で左心房が収縮すると同時に開いて左心室へと血液を送り込み、また左心室が収縮すると同時に閉じて左心房へ血液が逆流しないように働いている。

僧帽弁閉鎖不全があれば血液が逆流するわけである。

MICS(Minimally Invasive Cardiac Surgery)は低侵襲(小切開)心臓手術である。

大きな胸骨正中切開で行う心臓手術を小さな切開で行う心臓手術のことで・・・早期リハビリ、早期退院、早期社会復帰が可能になるという利点がある。

桜坂中央病院の副院長である恩師に対し聞き取り調査を行う羽村・・・。

山本輝彦は壮大にとっても恩師であった。

「鈴木(壮大の旧姓)と羽村を教えていた頃が懐かしいなあ・・・思えば遠くへきたもんだ」

「山本先生のご恩を忘れたことはございません」

「おいおい・・・泣かせるなよ」

「では・・・手術の録画を拝見させてください」

「・・・録画か・・・妙な時代になったもんだなあ」

羽村は微笑んだ。

颯太は外来患者の風間義男(須田邦裕)に相談を受けていた。

「なるほど・・・ミックスを受けて・・・息切れをするようになったと・・・」

「雑誌で・・・羽村先生のご高名を知って・・・」

「手術はどちらで・・・」

「桜坂中央病院の山本先生です」

颯太は日本医学界の縦社会構造を知るドクターである。

弟子の羽村医師が恩師の山本医師の「手術」を否定できないことを危惧するのだった。

颯太はそういうことに無頓着であろう沖田に相談するのだった。

「・・・というわけなんです」

「で・・・何か問題があるのか」

「問題があったらまずいので・・・沖田先生にお願いしたいんです」

「・・・わかった」

「すみません・・・大変な時に」

「え・・・」

「俺にできることがあれば・・・」

「特にないよ」

「脳のオペについて考えているんですよね」

「・・・」

「治せるんですか・・・本人は知ってるんですか」

「どういうこと・・・かな」

「すみません・・・たまたま・・・カルテを見てしまいました」

「救える方法が見つかったら・・・本人に告知するつもりだ」

「副院長先生は・・・愛されている奥様を切れるんですか」

「だから・・・僕が切るんだ」

だが・・・一光も深冬を愛していることはお茶の間にも明らかなのである。

壮大が正気を失っているように一光も正気ではないのである。

颯太は抱えていた秘密を吐き出して一息ついた。

検査の結果を風間に伝える一光。

「息切れの原因は・・・僧帽弁の閉鎖不全なので手術すれば治ります」

「前の手術にミスがあったということですか」

「それは・・・手術をしてみないと・・・わかりません」

「そういうものなのですか」

「ええ・・・医師は万能ではありませんから」

手術の結果・・・漏れは発見された。

片山関東病院との提携話が立ち消えになったことで・・・「あおい銀行」の担当者・竹中(谷田歩)は融資の見送りを壮大に通告する。

「提携の話は他にもありますから」

「計画が具体的になったらお話を伺います」

「しかし」

「こちらもビジネスですから」

「・・・」

深冬の手術のためにナース柴田が必要だというドクター沖田の主張が・・・経営者としての壮大の足枷となってしまっていた。

「どうするつもりなの」

ベッドサイドで愛人の顔から弁護士の顔に戻る榊原実梨(菜々緒)である。

「・・・」

榊原は壮大から秘密の匂いを嗅ぎ取る。

「なにかあるの・・・」

「なにもないよ」

「あなたにとって・・・私ってなんなのかしら」

「・・・」

「帰るのか・・・」

「・・・」

「そばにいてくれよ」

愛は彷徨うのだった。

手詰まりの壮大の元へ・・・羽村外科部長がやってくる。

「山本先生の手術映像を見た・・・漏れがあるのに・・・何事もなかったかのように閉じられていた」

「ミスがあったとそのまま報告するのはまずい・・・俺達で山本先生を守らなければ」

「・・・」

羽村は友情を・・・。

壮大は光明を見出していた。

一光は深冬が執刀する手術をモニターで見守っていた。

一光の心には穴があいている。

そこから愛が逆流するのだ。

深冬は医師として患者を救うのが生きがいなのである。

生死の境界線で・・・深冬の幸せを祈る一光。

善悪の境界線で深冬の手術を許容する一光。

いつ終わるかもしれない深冬の命の輝きを惜しむ一光。

繰り返すが・・・すでに一光は正気ではないのである。

愛が一光を狂わせているのだ。

深冬がペアン鉗子を落した。

一光は狂気の世界から醒める。

手術室に姿を見せる一光。

「状況説明して」

「どうして・・・私の手術よ」

「お前・・・体調がベストではないだろう・・・患者さんに失礼だ」

「・・・お願いします」

失礼なのは・・・深冬ではなく・・・一光なのである。

患者に病状を告知できずに・・・メスを握らせているのは彼なのだから。

「ありがとう・・・最近・・・体調がおかしくて」

「俺が看ようか」

「沖田先生の手を煩わせるまでもないわ・・・」

「・・・」

一光は愛の迷路で立ちすくむ。

壮大は恩師の前に現れる。

「鈴木・・・いや・・・壇上くん」

「ご無沙汰しています」

「君が医者としてだけではなく・・・経営者としても優秀だったとはねえ」

「本日は・・・経営者として伺いました」

手術の途中での執刀医の交代を聞き・・・颯太は一光に問う。

「深冬先生・・・大丈夫ですか?・・・・もしかして・・・腫瘍が大きくなってるんじゃ・・・早くなんとかしないと」

「そんなこと・・・わかってるよ」

一光は颯太を怒鳴りつけた。

「・・・」

「・・・すまない」

颯太は一光の苦悩を理解した。

隣室で一光の怒鳴る声を聞いた羽村。

「何が会ったか知らないけれど・・・ダメだよ・・・あんな風に熱くなっちゃ・・・医者にとって一番大切なのは・・・すでに冷静であることだ」

帰宅する壮大・・・。

「相談があるんだけど・・・」

「どうした・・・」

「健康診断で何もなかったのに・・・最近・・・頭痛が激しいのよ」

「わかった・・・診察しよう・・・検査のスケジュールを組んでおくよ」

「ありがとう」

壮大は追いつめられた。

「診断すればすぐに結果が出る」

一光も追いつめられた。

「診断するのか?」

「もちろんだよ・・・深冬が俺を頼ってくれたんだ」

壮大は泣いていた。

「ごめん・・・家族のお前に・・・辛い思いをさせて・・・でも・・・その診断・・・来週まで待ってもらえないか」

「大丈夫なのか・・・」

「執刀医として・・・俺が判断する責任がある・・・だからもう少しだけ・・・時間が欲しい」

往生際の悪い一光だった。

颯太は羽村に風間の一件を伝える。

「山本先生のミックスの手術を受けた患者さんだったので」

「その件が・・・私の調査対象なんだ・・・」

「・・・」

羽村は・・・山本に最終的な確認をする。

「本当に漏れはなかったんですよね?」

「壇上副院長が・・・報告書には漏れがなかったと書かかせると言っていたよ」

「え」

壮大は・・・手術ミス隠蔽を桜坂中央病院との提携話の取引材料にしていた。

羽村は壮大に詰め寄る。

「どういうつもりなんだ」

「俺は守るべきものを守っただけだ」

「何をだ・・・純粋に山本先生を守るのではなかったのか」

「お前だって・・・自分を守っただけだろう」

「・・・私が真実を暴いたら・・・」

「お前に・・・それができるのか」

「沖田先生ならどうするのだろう」

「なんでだよ」

「山本先生の患者を・・・沖田先生が再手術した・・・」

「・・・」

「沖田先生には駆け引きなんかないだろうね」

羽村は沖田に・・・風間の再手術の結果を問う。

「最初のオペに問題がありました・・・手術は不完全だった・・・逆流を確認したのに・・・弁閉鎖機能の障害をそのままにして閉じたんです・・・それ以上切開すると・・・小切開心臓手術の症例じゃなくなっちゃうからというのが理由でしょう」

「患者への説明にあたって・・・山本先生のミスは黙っていてくれないか」

「ミックスの症例としてカウントするために・・・患部を放置したことを見逃せと」

「山本先生はマルファン症候群に対する大動脈解離の患者を何人も救っているんだ」

「患者さんは自分の体の中で起きていることを知りたがっています・・・医師としてそれを説明しないわけにはいかない」

「・・・」

もちろん・・・深冬も自分に何が起きているかを知りたいわけだが・・・一光はそれとこれとは話が違うと思っている。

一光にとって・・・深冬はただの患者ではないのである。

一光の正論に・・・羽村は屈した。

羽村はありのままの調査報告書を提出し・・・山本医師は患者に謝罪し、職を辞した。

羽村のやり場のない気持ちは一光へと向う。

羽村は情熱を迸らせ・・・沖田の頬を張るのだった。

驚愕する一光。

「君は優秀な外科医を一人殺したんだ」

「何を」

「君は気楽でいいね」

「なんだって」

取っ組み合いに発展である。

「暴力はいけません」

修羅場と化したドクター・ルームで二人を分けるその他の医師たち。

颯太は叫ぶ。

「羽村先生・・・やめてください・・・沖田先生だってそんなに気楽じゃないんですよ・・・沖田先生もやめて・・・痛」

深冬は・・・一光の様子がおかしいことに気がつくのだった。

「どうかした?」

「明日にしてもらっていいかな・・・ちゃんと話すから」

「そう・・・」

羽村の暴力で一光は正気を取り戻したのだった。

羽村は夜風に吹かれた・・・。

携帯端末の留守番電話には・・・山本医師からのメッセージが残されている。

《俺はどうやら・・・自分を見失っていた・・・権威という魔物に縛られて・・・患者を傷つけるというモンスターになっていた・・・お前が俺を救ってくれたんだ・・・田舎に帰って一からやり直すよ・・・これが去りゆく俺のお前に贈る言葉だ・・・ありがとう》

羽村は泣き濡れた。

山本副院長が去ったことで桜坂中央病院に欠損が生じた。

これを補完すると言う名目で・・・壮大は提携を成功させる。

羽村は桜坂中央病院の外科部長を兼任することになった。

感謝の意を伝える桜坂中央病院の経営陣に・・・複雑な表情で応ずる羽村だった。

羽村の青春の炎は燃え尽きたのだった。

深冬は・・・直感で・・・秘密があることを悟った。

医師である深冬は・・・自分自身の検査結果にアクセスした。

「ごめんなさい・・・遅れちゃって」

「・・・健康診断のMRIで脳に腫瘍が見つかった・・・壮大と相談して治療の方法が見つかってからということで今まで話さなかった・・・あいつも辛かったんじゃないかな・・・君もいろいろ症状が出てきて不安だったと思う・・・オペは僕が任されてる・・・腫瘍の状態は」

死刑台へと続く階段を見上げるような気持ちの一光なのである。

「おめでとうって書いてあったね・・・壮大さんとの結婚が決まった時のメールの返信・・・何度も見直したのよ・・・何度も・・・何度も・・・・間違いじゃないかって。・・・でもね・・・書いてあることは・・・おめでとうだった・・・私ったら・・・あの時・・・何を期待したんだろう。・・・私・・・さっきもね・・・何度も何度も見たのよ。・・・間違いじゃないかって。あんなの見たことない。脳深部に3センチの腫瘍。何度見ても私のデータだったよ。そして3センチの腫瘍だった」

「確かに厳しい状況だけど。・・・きっと方法はある。僕が・・・それを必ず見つけるから」

「私、医者よ」

「僕も医者だ・・・諦めない限り可能性はある・・・」

「私・・・回診に行かなくちゃ・・・」

恐ろしい何かが一光の足を地の底に引きずり込もうとしていた。

心に秘めていたそれは解放しても消えないのだった。

愛する人の命が失われるかもしれないという恐怖・・・。

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Alife005ごっこガーデン。男と男が秘密の話をする部屋セット。

アンナ沖田先生を虜にする深冬先生は本当は魔性の女なの・・・死ぬかもしれないと思ってポロポロこぼれる胸に秘めた恋心が沖田先生をからめとるの・・・タイプが違うと言うのかもしれないけれど・・・愛しているから 壮大が手術が出来ないなら・・・沖田先生にだって本当はできないはずなのぴょん・・・愛する人の命を賭けて手術に挑まなければならないダーリンのその時を思うだけでアンナは涙の海に溺れるのです・・・じいや~・・・涙の海プール用意して~温泉ヴァージョンにしてほしいぴょ~ん

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2017年2月13日 (月)

天文二十四年、井伊肥後守直親元服す(三浦春馬)

天文五年(1536年)生れとされる井伊肥後守直親なので元服したのは数えで二十歳ということになる。

やや遅めの元服ということになる。

同じく天文二十四年(1555年)には松平元信も元服しており、こちらは数えで十四歳である。

この時すでに直親の嫡男・直政の姉・高瀬姫は生れていたという説もあるが・・・大河ドラマ的お茶の間モードが発動して未登場である。

場合によっては姉でなく妹になってしまう可能性も・・・キャスティングから妄想できる。

直政を演じる菅田将暉(23歳)で高瀬姫を演じる高橋ひかる(15歳)である。

ただし、高橋ひかるが直政の幼少期を演じる寺田心(8歳)に対応するなら姉の線も残っている。

直政誕生が永禄四年(1561年)とされているので実年齢差なら高瀬姫誕生は元服前である。

ドラマでは直親が逃亡先の保護者として「松岡様」を口にしている。

直親が潜伏していたのは信濃国の松源寺である。

松源寺は信濃国松岡城主の松岡氏の菩提寺で開山となった臨済宗妙心寺派の文叔禅師は松岡氏の一族だった。

井伊氏の菩提寺である龍譚寺もまた臨済宗妙心寺派に属する。

つまり・・・龍譚寺と松源寺の縁なのである。

「松岡様」とは文叔禅師の甥もしくは弟にあたる松岡城主・松岡頼貞ということになる。

ちなみに天文二十三年の武田信玄による信濃国伊那への進出により、松岡頼貞は降伏して、武田の武将・山県昌景の与力となっている。

直親の逃亡中の現地妻と娘の運命や如何に・・・というところなのである。

さて・・・ドラマでは何事もなかったように直親は奥山朝利の娘・奥山ひよを正室とする。

戦国時代には珍しく実名の伝わる「ひよ」なのだが・・・何故かドラマでは「しの」なのだった。

「ひよ」ではなく「しの」にしたいこだわりが誰かにあったのだろう・・・。

で、『おんな城主 直虎・第6回』(NHK総合20170212PM8~)脚本・森下佳子、演出・渡辺一貴を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。今回は次郎法師の従兄弟で井伊直盛の養子となる井伊直親の描き下ろしイラスト大公開でお得でございます。井伊家の一族であることから・・・謀反人の子でありながら井伊の総領家の養子として迎えられ・・・自分の妻となるはずだった女を正室にする直親に対して・・・井伊家家老として複雑な思いを抱く小野但馬・・・「お前は俺と同じ道をたどる」という父の呪いがじわじわと効いてくる感じでございますねえ。そんな心に油をそそぐのが・・・ヒロインの直親に対する「秘めた恋」ということになるのですな。このドラマにおける「井伊一族」の異常なほどの「空気を読まない感じ」が・・・小野但馬をガンガン追い込んでいくのでございましょうねえ。基本的に小野但馬は・・・「おとわ」への秘めた恋が原点にあるわけですが・・・瀬名の母親である佐名と・・・小野和泉の間にも・・・そういう関係があったのではと妄想できます。それにしても今川の対織田戦線に井伊がまったく関与していない風なのは少しものたりないですな。国人衆の兵力として農民たちも借りだされているでしょうし・・・井伊一党の武将たちもどんどん傷だらけになっていて・・・手足を失っているくらいの戦国モードもちょっぴり欲しい気もいたします。戦国大河なのに・・・六話まで・・・戦は噂だけというのも画期的でございますけれどもねえ。桶狭間の合戦も噂だけで終わったらどうしようか・・・と不安になるのでございます。主人公が戦場に出るわけではないので・・・「真田丸」方式なら・・・それもありでございますからねえ・・・。

Naotora006天文二十四年(1555年)二月、ドラマの井伊直親が元服する。三月、松平元信(徳川家康)が元服。四月、尾張守護代の織田大和守信友は織田信長の叔父・信光によって殺害される。討ち取ったのは森可成ともいう。信長は清州城主となる。大和守家重臣の坂井大膳は駿河の今川氏を頼って逃亡するが消息不明となる。五月、信長の弟・信行は当主の名乗りである弾正忠を名乗る。六月、信長の叔父・信次が信長の弟・秀孝を殺害して逃亡。信行は信次の守山城下に放火。七月、武田晴信と長尾景虎が犀川で激突、第二次川中島の戦いに突入。長期対陣の後に今川義元が仲裁。九月、加賀一向一揆討伐中の朝倉宗滴が病没。閏十月、太原雪斎が死去。十一月、信光は家臣の坂井孫八郎に殺害される。美濃国守護代の斉藤義龍が弟の孫四朗、喜平次を殺害。父親の斉藤道三は大桑城に退去。北条氏康によって幽閉中の足利晴氏の嫡男・古河公方足利義氏が元服する。義元は駿河・遠江・三河で検地を実施する。三河国安祥城攻めで祖父と父を相次いで失った本田忠勝は叔父の本田忠真に養育されている。数えで八歳だった。

今川館での元服の後のささやかな宴で元信は初めての酒を飲んだ。

突然・・・悲哀が胸を襲う。

厠に立った元信は庭で天女のような姫を見た。

「いかがなされた・・・」

姫は家康が涙を流しているのを見て言う。

「これは・・・家臣を憐れむ涙でござる」

「三河殿と・・・お見受けしました」

「貴女は・・・関口刑部様の・・・瀬名姫様」

「家臣のどなたか・・・亡くなったのでございますか」

「わが家臣はたくさん討ち死にいたしておりまする」

「・・・」

「尾張の織田との戦で・・・三河衆が命を賭している時に・・・主たる我はこうして籠の鳥も同然で・・・無為の時を過ごしてございます」

「我が母の里は・・・遠江の井伊谷だと申します。井伊の里からの文が届けば・・・一族の訃報ではないかと心騒ぐと申しておりました。遠江衆もたくさん討ち死にしているそうでございますれば」

「武士たるもの・・・戦場で死ぬは誉れと申します・・・しかし・・・我は」

「元服もなされたからには・・・太守様の命により・・・戦場には遠からずお出ましになられましょう」

「さようでござろうか・・・」

「きっと・・・お手柄をたてられますよ」

「・・・」

美しい姫に励まされ・・・涙を拭った元信は宴の席へと戻って行く。

瀬名姫はその後ろ姿に何故か・・・心騒ぐものを感じるのだった。

見たこともない母の故郷である遠江国。年若い人質の貴公子の故郷はさらに遠い三河国である。

瀬名は遠い異国にロマンを感じるのだった。

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2017年2月12日 (日)

酒と不倫とお金と家族(本田翼)

どこからどこまでが夢でどこからどこまでが現実なのか。

それもまた奇妙な味わいの一品といえるだろう。

どこか物さぴしいトーンを醸しだすこの作品なのだが・・・今回は一つの到達点と言えるだろう。

冒頭・・・スカイダイビングをする男のパラシュートは開かない。

墜落による「死」をお茶の間で目撃した人間は多いだろう。

虚構でありながらそれは現実に通じている。

スーパーヒーローが登場することで回避される死・・・そこからお茶の間の人々はアンバランスゾーンに導かれていく。

幼い頃から虚構の登場人物に恋をしてきたものにとって・・・失恋は日常茶飯事だ。

それがハッピーエンドであれば・・・現実に棲むものは失恋するしかないわけである。

長じて・・・実在するアイドルたちと日常で顔をあわせるようになっても・・・架空の恋は生れては終わる。

今はただ・・・彼女たちがそれなりに幸せであることを祈るばかりの日々だが・・・それもまた無意味なのである。

意味などなくても人は生きていけるのだ。

これはそういう話。

で、『スーパーサラリーマン左江内氏・第5回』(日本テレビ20170211PM9~)原作・藤子・F・不二雄、脚本・演出・福田雄一を見た。「勇者ヨシヒコと導かれし七人」ではキジだったので飛ぼうと思えば飛べる男(若葉竜也)だが・・・スカイダイビング中にパラシュートが開かず絶体絶命である。そうなる可能性がないわけではないのにスカイダイビングをするなんてバカだとしか思えないが何度かそういう企画を発案したり台本を書いたりしてタレントにやらせている以上・・・自分が悪魔だと思うしかないわけである。

スーパーサラリーマン左江内氏(堤真一)が登場し・・・「どうしましたか?」と問う。

「あんた・・・飛んでるの?」

「そこ・・・気になりますか」

「だって・・・」

「今・・・パラシュート開きますね」

「いや・・・別に普通に助けてもらってもいいのですが」

「でも・・・せっかくだから・・・パラシュートで降りた方が楽しいでしょう」

「そんなことしている間に墜落します」

「・・・おかしいな・・・不良品かな」

「ひええええええええええええ」

パラシュートは開かなかったが無事着地する男・・・左江内氏が去ると忘却光線ですべてを忘れる。

奇跡の誕生である。

一種の神秘体験であり・・・男が怪しい宗教にのめりこむ可能性が生じるがそれはまた別の話だ。

左江内氏が人命救助を終えて帰宅すると妻の円子(小泉今日子)の機嫌が悪い。

「洗い物の途中でどこいってたの・・・」

「トイレに・・・」

「長い・・・待たされて料理する気がなくなっちゃった」

「えええ」

「ママのシチューが食べたかったなあ」と公立骨川小学校に通うもや夫(横山歩)・・・。

「なんでもいいから・・・早く作って」と都立源高校に通うはね子(島崎遥香)・・・。

「じゃあ・・・今夜はしゃぶしゃぶにしよう」

「手抜きだね・・・そんなのお湯わかすだけで料理とは言えないね」と円子。

「そんなあ・・・」と左江内氏。

いつもの左江内家の夕べである。

その夜・・・円子は「芸能人の不倫」について語る。

「軽いんだよねえ・・・肉を食べさせてもらったらすぐ不倫なんて」

「そんなものかな」

「あなた・・・不倫なんてしてないでしょうね」

「おこずかい的に無理でしょう・・・肉を食べさせられない」

「お金があったら不倫するんだ」

「しないしない」

「不倫なんかしたらぶっ殺すよ」

「・・・」

かわいいが恐ろしい妻だった。

フジコ建設営業第三課・・・。

簑島課長(高橋克実)に酒に誘われる左江内氏。

「今日はちょっと懐がさびしくて・・・」

「俺が奢りまんがな」

部下の蒲田(早見あかり)と下山(富山えり子)が口を挟む。

「課長が関西弁を使う時は嘘ですよ」

「この前も奢りまんがなと言いながら割り勘でした」

「そんなことはないけん・・・今日は奢るけえのお」

お調子者の池杉(賀来賢人)が反応する。

「広島弁の時は本当に奢ってくれます」

「ボルケーノは火山じゃけーのー」

なぜか・・・ビジネスホテルでさしむかう左江内氏と課長。

「なぜ・・・ここで」

「二人きりになるにはここしかなかった」

「そんな・・・倫理的に」

「倫理的にダメだよな」

「課長がまさかそう言うあれだったとは・・・」

「好きだったのかな」

「ありがとうございます」

課長に迫られて肛門が引き締まる思いの左江内氏。

しかし・・・。

「なんとかしないと・・・俺、やっていないんだよ・・・無罪なんだよ」

「課長・・・犯罪を?」

「総務課の藤崎、いるだろう?」

「ああ」

「仲良しだろう・・・」

「総務課時代の後輩ですけど・・・」

「君はああいうモデル体型より小さい子が好きなんだろうけど・・・綺麗じゃん」

「そうですね」

総務課の藤崎(本田翼)と酒を飲み・・・記憶を失くし・・・気がつくとビジネスホテルのベッドで目を醒ました課長・・・。

残されたメモには・・・。

《奢ってくださりありがとうございました・・・また誘ってくださいね》

「どう・・・思う」

「そういうことじゃないですか」

「それからメールで彼女がお金を請求して来るんだよ・・・奥さんにバレたくなかったらって」

「・・・」

「なんとかしてくれよ・・・彼女と仲良しさんだろう」

仕方なく・・・総務課で藤崎を呼び出す左江内氏。

いわゆるひとつの小悪魔的に魅力を醸しだす藤崎である。

「うれしいな・・・藤崎さんに呼び出されるなんて」

「今晩・・・一杯飲まないか・・・割り勘で」

「いいですよ」

居酒屋である。

すでに足の組み方が淫靡な藤崎・・・。

「すまないね・・・誘っておいて・・・割り勘で」

「左江内さんちの家庭の事情を知ってますから」

「課長の件なんだけど」

「話したんだ・・・ひどい」

「どうして」

「私・・・押しに弱くて」

「ハゲなのに」

「ええ」

「しかし・・・お金を要求するなんて」

「それは・・・内緒にしてくれって言うからムカついて」

「じゃあ・・・本気じゃないんだ」

「もらっておきましたよ・・・五十万円」

「えええ」

「でも・・・今度は結婚できる人とお付き合いします」

「じゃ・・・一件落着ということで・・・飲もうか・・・割り勘だけど」

ビジネスホテルのベッドで目を醒ました左江内氏・・・。

残されたメモには・・・。

《割り勘だけどうれしかった・・・ホテル代も払っておきますからご安心を》

罪悪感に満たされて帰宅する左江内氏。

素晴らしいインターネットの世界でショッピング中の円子だった。

「なにしてんの」

「ジャングルで買い物してんの」

「ジャングルはアナコンダがいるから気をつけて」

不自然なまでに笑いながら就寝する左江内氏だった。

夢だとはっきりわかる夢である。

この後でも夢オチがあるが・・・そちらはどこからが夢なのかわからない仕掛けになっている。

そのために・・・物語全体の幻想性が高まるのである。

極道の妻となった円子。

「総務課の若いのと浮気しよったじゃろがい」

「ご・・・誤解だ」

しかし・・・藤崎がいかにもやりましたモードて登場する。

「死ねや・・・左江内」

円子にドスで腹部を貫かれる左江内だった。

はね子が極道の娘として背をむける。

「これからはアマゾンの密林でおかんと生きて行くけんの」

もや夫が極道の息子として言い捨てる。

「外道は地獄におちんさい」

三人はジャングルに消えて行く。

「ア・・・アナコンダに気をつけて・・・」

息絶えて目覚める左江内氏だった。

「怖ええええええ」

オフィスで・・・。

「例の商談うまく行ったかな?」

「え・・・まあ」

「よし・・・今日は領収書なんでもこいだ」

課長に群がる課員一同である。

総務課前の廊下で・・・。

雰囲気を醸しだす藤崎・・・。

「居酒屋の後なんだけどさ・・・いろいろあったのかな?」

「はい」

「どうしたらいいのかな」

「どうしたらいいと言われましても」

「内緒にしておいてくれるのかな?」

「はい」

露骨に安堵する左江内氏である。

「今日、飲み行かない?・・・奢るからさ」

「無理しなくていいですよ」

はね子に金を借りるために待ち合わせをする左江内氏・・・。

これはすでに夢なのかもしれない。

いつものクラスメイト・・・さやか(金澤美穂)とサブロー(犬飼貴丈)と現れるはね子。

はね子のサイフは万札でぎっしりである。

「どうして・・・」

「へそくりよ・・・何かあったらと思うと不安なの」

なんとか・・・はね子から三万円を借りる左江内氏である。

はね子が優しすぎるのできっと夢なのだな。

居酒屋ですき焼きを食べる左江内氏と藤崎である。

肉を食べて不倫するという夢なのだ。

「私、お見合い相手と結婚しないといけないんです・・・その前に本当に好きな人にアタックしてみたくなったんです」

「え・・・それって僕のことなの」

「はい」

「そうだったんだ」

「私のひとときの恋も終わりです。来週には人妻なので」

気がつくと例のベッドの上である。

《最後に素敵な思い出ができました・・・さようなら》

左江内家のチャイムが鳴る。

藤崎がやってきたのだった。

「どなた・・・」

「私、左江内さんとおつきあいさせていただいているものです」

「おつきあい?」

「男と女の関係です」

円子は微笑むと署名捺印済みの離婚届けを左江内氏に渡す。

「署名捺印よろしくね・・・さあ・・・私たちはファミレスに行きましょう」

円子と子供たちは去って行くのだった。

三ヶ月後・・・左江内氏の離婚が社内に知れ渡ると・・・独身の女性社員たちはお弁当をもって左江内氏に群がる。

池杉は激しく身悶える。

「これじゃあ・・・さえないさんじゃなくてさえてるさんだ」

課長はハゲをアピールする。

「俺も離婚さえすれば」

「それはありませんね」と口を揃える女子コンビだった。

もう・・・夢に決まっているな。

家では新婚妻となった藤崎が三つ指ついてお出迎えである。

「お食事になさいますか・・・お風呂になさいますか・・・それとも」

「メシにしよう」

「後でお背中お流ししますね」

夢である。

マスクをした占い師(佐藤二朗)は問いかける。

「女難の相が出ています」

「え」

「若い頃・・・あなたはブランドもので身を固めたCAと恋に落ちた」

「いえ・・・そんなことは」

「あなたは魚屋さん・・・で、カメレオンのおかしな置物をプレゼントした。いかにしたら欧介と桜子は結ばれるか・・・」

「ヤマトナデシコじゃねえか」

屋上で・・・。

「一度目は浮気だと思うんですけど・・・二度目があると本気だと思うんです」

「一度あることは二度ある・・・それは愛じゃない」

「私・・・お見合い相手との結婚やめます・・・左江内さんが離婚してくれるのを待ちます」

「いや・・・ひどい妻だけど・・・離婚はできない」

「ひどい・・・じゃあ・・・百万円」

「え」

「そうじゃないと・・・私・・・左江内さんのこと・・・あきらめられません」

「えええ」

謎の老人(笹野高史)が現れる。

「もててるねえ・・・」

「そんなんじゃないですよ」

「責任を忘れるほどの責任か」

「・・・それは無責任なんじゃ」

そこで助けを求める声。

妻の首つり自殺を止めようとする夫(山田明郷)だった。

「どうしましたか」

「グルメ番組で・・・一度でいいからあんなご馳走食べてみたいって言ったら・・・妻が怒りだして」

「奥さん・・・料理が下手なんですか」

「そりゃあ・・・もう・・・」

「作ってくれるだけで感謝しないと・・・ウチなんか・・・滅多に作ってくれません」

「あらあら」

左江内氏の愚痴に同情して仲直りする老夫婦だった・・・。

「左江内さん、金貸してください」

池杉が左江内氏に無理な申し出をする。

「無理な相談だけど・・・何に使うんだ」

「女が別れてくれなくて・・・総務課の藤崎って子、いるでしょう」

「藤崎・・・」

「手切れ金を要求されてるんです・・・僕には別に本命がいるので・・・百五十万」

「増えてるのか」

「何のことですか」

偶然が三度続いたら必然であるという。

連続美人局事件の発生を疑う左江内氏・・・。

美人局なのか・・・不倫強請なのでは。

そんな言葉は聞いたことないし・・・。

例によって左江内氏はスーパーマンパワーを私的に流用するのだった。

藤崎の監視と追跡である。

藤崎がたどり着いたのは・・・金田ローンという危険な金融組織だった。

「これで完済ですよね」

「残念だったね・・・お嬢ちゃん・・・明日までに百万円だ」

「そんな・・・もう二百万も返済しているのに・・・」

「利息があるからねえ」

「もう無理です」

「なんなら・・・相談にのるよ」

追いつめられて店を出た藤崎をサラリーマンに戻った左江内氏が待ちかまえる。

「左江内さん・・・」

「事情を聞こうか・・・」

藤崎の両親は豆腐屋を経営していた・・・経営難に陥り・・・金を借りたのが悪質な金融組織だったのだ。

「そうか・・・それじゃあ・・・借用書を返してもらってくるよ」

「そんな・・・すごく・・・暴力的な感じの・・・アレですよ」

「大丈夫・・・暴力には慣れている」

スーパーマンに変身して金田ローンに乗り込む左江内氏である。

「なんだ・・・てめえは・・・」

「悪徳なことはほどほどにしないと・・・ちょっと探させてもらいますよ」

「ふざけるな」

「やっちまえ」

「足腰立たなくしてやるぜ」

足腰立たなくされる悪徳金融一同である。

「あったあった・・・では・・・これは完済ということで」

借用書を破棄する左江内氏。

そこへ・・・かねてから内定していた金田ローンの強制捜査に踏み切る小池刑事(ムロツヨシ)と警察官刈野(中村倫也)・・・。

「あ・・・」

「まさか・・・瞬殺ですか」

「・・・」

「ブルース・リーのドラゴンからの・・・ジャッキー・チェンの酔拳からの・・・武田鉄矢のハンガーヌンチャクからの・・・」

「ありがとうございました」と藤崎。「実は・・・あの夜は・・・何もなかったんです」

「そうだったんだ」

「でも・・・左江内さんのことは本当に好きでした」

「えええええ」

左江内氏が長い夢から覚めると円子が起床していた。

「え・・・朝食作ってくれたの」

「昨日・・・不倫された夢を見た・・・怒りがおさまらなくて・・・」

「・・・」

「だから・・・召し上がれ・・・デスソースたっぷりの激辛トーストを・・・」

タバスコで真っ赤に染まったトースト・・・。

左江内氏の悪夢は続く。

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2017年2月11日 (土)

スタートダッシュで出遅れて過去問やったら泣かされる(深田恭子)夕飯食堂(小林薫)

駅伝の醍醐味の一つはごぼう抜きである。

追いつけ追い越せひっこ抜けなのである。

これは時間差スタートという出遅れも・・・個人の力で逆転できるという可能性を示唆している。

短距離走で一分遅れのスタートでは勝負にならないが・・・長距離走なら逆転は可能なのである。

人生はどちらかといえばマラソンだ。

親子三代でいえば・・・祖父は終盤戦・・・両親は中盤戦・・・そして子供は序盤戦を走っている。

学歴がすべてではないが・・・人生の岐路においてある程度の重要な要素なのである。

両親は子供がスタートダッシュに出遅れていることに気が付き・・・声援を送る。

子供は葉を食いしばり前を見つめる。

人生はレースではないという考え方もある。

しかし・・・誰もが敗北の屈辱よりも勝利の栄光に包まれたいと思うものなのである。

もちろん・・・そうではない変態は別として。

人生が勝負であることは・・・好みの問題ではなく自然なのである。

で、『克上受験・第5回』(TBSテレビ20170210PM10~)原作・桜井信一、脚本・両沢和幸、演出・福田亮介を見た。桜井信一(阿部サダヲ)はろくでなしである。娘の佳織(山田美紅羽)の担任教師・小山みどり先生(小芝風花)は「親の見栄で中学受験なんて子供が可哀想」と指摘するが明らかにそういう側面はある。家計のことなど考えずに勝手に職を辞し妻の香夏子(深田恭子)が就職したにもかかわらず家事を完遂しないクズの側面もある。勉強が好きだったわけでもないのに高校進学を推奨しなかった父親の一夫(小林薫)を逆恨みしている側面もある。いろいろと素晴らしいとは言えない信一なのだが・・・唯一つ・・・佳織の幸せを願いそのために中学受験が不可欠であると信じていることは間違いないのだった。それが愚かな思いこみにすぎないにしても・・・誰が信一の心情を否定できるだろうか。

信一は妻と娘のために朝食を作るのであった。

妻と娘はお寝坊さんである。

スマイベスト不動産にハウジング・アドバイザーとして勤務することになった香夏子なのである。

母親のスーツ姿に「お母さんかっこいい」と喜ぶ佳織だった。

就寝前に名刺を眺めすぎてうっかり布団と一緒にたたむ香夏子だった。

「あった」

「お母さん、遅刻しちゃうよ」

慌ただしい桜井家の新体制発足の朝・・・。

洗濯して掃除と・・・信一もなんとか家事をこなす。

「俺はスーパー・ハウスキーパー・・・そしてスーパー・ティーチャーなのだ」

信一は自画自賛するが・・・慣れないことを始めた時は用心が必要なのである。

まあ・・・桜井家にそんなこと言っても無駄だけどな。

家事を終えた信一は営業前の居酒屋「ちゅうぼう」で受験勉強を開始する。

「誰もいないと寂しいんだよ」

店主の松尾(若旦那)は嫌な顔一つしない。

「だけど香夏子のことはちょっと心配なんだ・・・あいつ可愛いだろう・・・変な男に目つけられたらって・・・世間には口ばっかで身の程知らずな男っているからな」

「それ・・・お前な」

ツッコミはする松尾だった。

楢崎哲也(風間俊介)とコンビを組んで物件を顧客に案内する香夏子。

顧客は乳児を連れたの中津川夫妻である。

乳児が泣きだし慌てる中津川夫人(黒坂真美)・・・。

一児の母親として手慣れた対応を見せる香夏子なのであった。

「すみません」

「私にも子供がいますから」

香夏子のコミュニケーション力に好感を抱くナラザキなのだった。

長谷川部長(手塚とおる)も香夏子を嫌らしい目で見詰めつつ食事に誘い・・・スマイベスト不動産は華やぐのである。

そりゃ・・・そうだわなあ。

大江戸小学校では靴ビショビショ事件以来欠席の続く麻里亜(篠川桃音)の件で小山みどり先生は父親の徳川直康(要潤)と面談していた。

「色々とわがまま言ってすみません」

「休みが続くと・・・登校しづらくなりますから」

「もう少し様子を見させてください」

零点シスターズことコマツコになれそうなリナ(丁田凛美)と松井愛莉の幼少期を演じられそうな美少女のアユミ(吉岡千波)は綺麗に洗った靴を佳織に見せる。

「この間のあれはさ・・・ほんとに私たちじゃないから」とアユミ。

「わかってるよ」と佳織。

「でもあの子・・・絶対に私たちだと思ってるよね」とリナ。

徳川氏に気がついた佳織は靴を受け取って走る。

「あの・・・これ・・・麻里亜ちゃんの靴返そうと思って」

「一応・・・受け取っておくよ」

「直接渡したいから会わせてもらえますか?」

佳織は先を読む力に優れているのだ。

徳川氏にリナやアユミの心情を伝える力はないと洞察したのだ。

あまり・・・優秀そうではない家政婦の芳江(山野海)は佳織に高圧的な態度を見せるが・・・麻里亜は佳織を歓迎する。

「飲み物を用意して」

「はい・・・お嬢様」

「あの・・・風邪の具合は・・・」

「え・・・ああ・・・もう治った」

「よかった・・・あの・・・これ・・・この間の靴・・・あれ・・・リナとアユミがやったんじゃないんだ・・・リナたちはたまたま拾っただけで・・・これ・・・ちゃんと洗ったって」

「下駄箱にいれておいて・・・捨てちゃダメよ」

「はい・・・お嬢様」

「二階に来て・・・」

お嬢様の部屋に感激する佳織だった。

「うわあ・・・広い・・・大きい」

書架には洋書も並んでいる。

「麻里亜ちゃん・・・これ読めるの?」

「生れたの向こうだから」

「向こう」

「こちらにきたばかりの頃は発音がおかしいってからかわれた」

「全然おかしくないよ」

「家庭教師を呼んで全力で修正したの」

「さすがは麻里亜ちゃん」

「受験勉強・・・どこまで進んでいるの?・・・過去問やっている?」

「過去問?」

「前に出題された入試問題だよ」

「これは・・・桜庭学園・・・二年前の入試問題・・・」

「やってみる?」

「でも・・・私にはまだ早いって・・・お父さんが」

問答無用で専用複写機でテスト用紙を作成する麻里亜・・・。

初めての過去問に挑んだ佳織は・・・。

香夏子が帰宅すると信一と一夫がカレーを作っている。

「昔はこうやって二人で作ったもんだ・・・」

「作れるもんなら・・・なんでも作るよ」

「深夜食堂みたい」

「記憶には青魚がいいんだってよ・・・DDTというのが入ってて」

DDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)は有機塩素系の殺虫剤である。

青魚の成分で学習機能向上作用があると言われるのはDHA(ドコサヘキサエン酸)だ。

「佳織は?」

「友達のところで遅くなるって」

友達と聞いてリナとアユミの家に電話する香夏子・・・。

「誰の家って言ってたの」

「ええと・・・」

記憶力に問題のある信一だった。

ママさんネットワークに不慣れなのである。

心配して探しに出た信一と香夏子・・・。

そこへ・・・運転手付の徳川家の車で送られてくる佳織だった。

「どこへ行ってたの」

「麻里亜ちゃんち・・・お父さんにそう言ったよ」

「信ちゃん・・・」

「・・・」

祖父の手作りカレーを食べる佳織は心ここにあらずである。

「どうしたんだ・・・」

「麻里亜ちゃんが凄すぎて・・・家はコンビニみたいだったし」

「コンビニ?」

「大きなコピーの機械があって・・・それで桜庭学園の過去問をコピーして」

「過去問・・・」

「麻里亜ちゃんは満点だったのに・・・私・・・一問もできなかった」

「えええ」

「後から考えたらわかりそうな問題がいくつかあったけど・・・麻里亜ちゃんが凄い早さで答えを書くんで・・・私・・・頭が真っ白になって・・・もっと勉強しないと・・・麻里亜ちゃんに追いつけない」

「佳織・・・」

「どうしよう・・・」

佳織は学力格差を実感したショックで泣きだしてしまうのだった。

泣き寝入りした佳織。

「俺塾」では香夏子が囁く。

「大丈夫なの」

「今の佳織じゃ・・・桜庭学園の過去問なんて無理なんだよ」

「遺伝的に」

「違うよ・・・時期尚早なんだ・・・今は遅れを取り戻している段階なんだから」

「・・・」

「徳川の娘は・・・前にやったことあるんじゃないかな」

「え」

「一度やってれば全問正解だって簡単だ」

「そんなこと・・・」

「お前だって・・・友達とゲームやる時・・・自分の得意なやつやるだろう」

「それは・・・信ちゃんでしょう・・・」

「悪気はないってことだよ・・・いいところ見せたいだけなんだよ・・・子供だから」

「信ちゃん・・・子供なのね」

「・・・」

しかし・・・あまりのレベルの違いを見せつけられ佳織は自信喪失してしまったのだ。

「もう・・・おいつくのなんて・・・無理だよ・・・麻里亜ちゃんの背中が見えない」

「大丈夫だよ」

「でも・・・」

「よし・・・じゃあ・・・全国オープン模試にチャレンジしよう・・・過去問はお前には早すぎただけなんだ・・・百メートル泳げないのにオリンピックに出場するようなもんだ。でも・・・今まで勉強したことは無駄じゃない・・・それを模試で確かめるんだ」

「もし・・・前と同じだったら・・・」

「さんな弱気でどうする・・・よし・・・こうしよう・・・全日本小学生テストあっただろう・・・あれより悪かったら・・・中学受験はきっぱり諦める」

「諦める・・・」と佳織の負けん気に火がつく。「・・・諦めたくない」

佳織は・・・宿敵の麻里亜と一緒に登校しようと思うのだった。

家政婦は「お嬢様は風邪が完治しておりません」と応じる。

「麻里亜ちゃんに・・・全国オープン模試一緒に受けようと伝えてください」

麻里亜は登校した。

「麻里亜ちゃん・・・風邪は治ったの」と小山みどり先生。

「はい」

佳織は麻里亜を笑顔で迎えるのだった。

麻里亜は佳織のためにできることをした。

佳織は麻里亜のためにできることをしたのだ。

調子に乗って信一はコピー機のリース契約を結ぶのだった。

基本的に大雑把な信一は電気料金の督促状をゴミとして捨ててしまう。

香夏子は滞納している電気料金を払うように頼んでいたがうっかり忘れる信一。

送電停止処分である。

「なんで振り込みじゃないんだ」

「あなたが嫌だって言ったんじゃない」

変なことに拘るが面倒くさいことは嫌い。

そういう困った人間はよくいる。

家事に不慣れな夫と・・・慣れない職場で緊張する妻の緊張が高まっていた。

そんな最中の・・・全国オープン模試当日である。

「電気料金」を誰が支払いに行くかでもめる信一と香夏子。

信一に雑用を押しつけられ腹を立てた香夏子は気分を鎮めようとお茶を沸かす。

そこに・・・ナラザキから電話が入る。

「今日の契約・・・お客様が1時間早くしてくれないかって」

あわてて出勤する香夏子・・・やかんの火の消し忘れに騒然とするお茶の間だった・・・。

香夏子は顧客との契約のために携帯端末の電源をオフにした。

「女の人がいてホッとしました」

中津川夫人の言葉に仕事の喜びを感じる香夏子・・・。

一方・・・模試会場で徳川氏と会った信一はカフェで旧交を温めることになる。

「お久しぶりですね」

「その馬鹿丁寧な喋り方・・・なんとかならないの?・・・小学校一緒だったんじゃん」

「僕なんか・・・酒の力を借りないと娘と話せないですよ」

「ええっ」

「勉強・・・教えてるとか」

「教えてるんじゃねえよ・・・一緒に勉強してんのさ・・・算数とか難しいから」

「難しい・・・ですか」

「俺にとってはな・・・」

「いや・・・嫌みで言ったんじゃないんです・・・女の子は色々難しいでしょう」

「そういうのは・・・嫁さんまかせだよ・・・そっちだって・・・奥さんが」

「妻は二年ほど前に出て行ってしまって・・・」

「あ・・・悪いこと言っちゃったかな」

「・・・」

その時・・・信一の携帯端末に・・・マンションの管理人から連絡か入る。

「えええええええええええ」

帰宅した香夏子は・・・一夫が窓を修理しているのに驚く。

「なんで・・・電話に出ないんだ」

「大事な契約があったので・・・電源切ってた」

「ガスコンロ消すの忘れただろう」

「あ・・・」

「火災報知器が鳴って・・・隣の家の人が消防に電話して・・・ガラスを割って・・・消防隊が入ったそうだ・・・とりあえず応急処置を」と一夫。

「なにやってんだよ・・・一歩間違えたら・・・火事になってたんだぞ」

「ごめんなさい・・・そんなつもりじゃ・・・佳織は」

「徳川のところで預かってもらってる・・・」

「私・・・迎えに行ってくる」

「送ってくれるように頼んであるから」

「・・・」

鬱憤がたまっていた信一は・・・香夏子を労わる心を失っていた。

「お前・・・ちょっと浮かれてんじゃねえのか・・・外に働きに出て・・・お客さんにちやほやされて」

「信一・・・そのいい方はないだろう・・・香夏子さん・・・こいつヤキモチ焼いてんだよ・・・嫁さんが働きに出て思った以上にうまくやってるから」

「そんなんじゃねえよ」

図星だったのでさらにいきりたつ信一である。

「信一は勉強をする・・・香夏子さんは仕事をする・・・そういう風に二人で決めたんだろう」

「親父・・・黙っててくれ・・・俺は火の用心について」

「中学受験なんてしなくたって・・・幸せになる道はある・・・俺はそう思っていた・・・怪我が治ったら・・・すぐに現場に復帰しようと思ってあちこちに声かけたんだ・・・でも・・・俺に回ってくる仕事なんてない」

「お父さん・・・」

「気難しくて文句の多い年寄りより・・・もっと若い人でってな・・・道具もやたらと新しいもんになっちまってるし」

「そりゃ・・・仕方ねえよ・・・時代が違うし」

父親のわびしさに胸がつまる信一・・・。

「男が外で稼いで・・・女が家を守る・・・娘はいつか嫁に行く・・・そんな時代は終わっちまったらしい。だから信一・・・お前が佳織をいい学校に行かせようってえ気持ち・・・今はよくわかる・・・けどな・・・そのためには佳織のことだけを考えて夫婦が一つにならなきゃなんねえ・・・え・・・そうだろう」

そこに・・・佳織が帰宅する。

「佳織・・・」

「お母さん・・・佳織・・・疲れちゃった・・・」

母と娘の入浴タイムである。

様々な思いを胸に桜井一家は夜を越えていく。

一夫はイルミネーションの飾られた明るい家を見る。

そんな家は・・・一夫が信一を育てていた頃にはなかったのだ。

時代は変転していくのだった。

模試結果発表の日・・・。

結果が悪ければ・・・桜井一家の野望は夢と消えるのだ。

仕事中の香夏子もこらえきれずに・・・ナラザキに仕事を押しつけて会場に走るのだった。

似たもの夫婦である。

ぐったりした夫と娘を発見する香夏子・・・。

「だめだったの・・・」

「いや・・・あがってた・・・成績あがってた・・・245点・・・偏差値52」

「これって・・・すごいんだよね」

「すごいよ・・・短期間でこれだけよくあげましたねって言われた」

「おめでとう」

「おかあさん」

前回・・・偏差値41

今回・・・偏差値52

11ポイントのアップで・・・佳織は下流から中流へと這い上がったのである。

緊張から解放され・・・佳織は香夏子の腕の中で泣きじゃくった。

最下位で襷を受け取って二十人ごぼう抜きにしたがまだ前に二十人いる感じ・・・。

受験まで残すところ・・・およそ一年と一ヶ月である。

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