2017年3月25日 (土)

殺らなければ殺られるだけの存在(綾瀬はるか)

物語の語り手が思うことと物語の聞き手が思うことが同じとは限らない。
人の心ほど定かならぬものはない。
人間関係とはつまり主従関係である。
夫婦にも主従があり、親子にも主従があり、友人にも主従がある。
政治家にも主従があり・・・国家にも主従はある。
主従関係がないということは敵対関係なのである。
それではあまりにも荒涼としていると感じる人もいるだろう。
もちろん・・・潤いというものは・・・そういう主従関係や敵対関係を越えたところにある。
主人に優しくしてもらった奴隷・・・敵に助けられた味方・・・そこは泣くところである。
日本が不自由極まりない国だと思って・・・外国に行けば・・・どれだけ不自由を感じることか。
つまり・・・ファンタジーとはそれを明らかにする話なのである。
ここではないどこかもまた・・・いろいろ面倒なことが待っているに決まっているのだ。
(仮記事です)
 

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2017年3月24日 (金)

将棋の女王によるチェスのナイトを用いたチェックメイト(仲間由紀恵)

好敵手である。

窮地に追いやられた敵のクイーンを・・・味方の騎士が・・・救出するという・・・チェスなのに将棋のような話なのである。

チェスも将棋も知らないという人のために念のために言っておくが・・・チェスは敵に殺された駒が盤上をただ去って行くのだが・・・将棋は敵に倒されても捕虜となるだけで・・・洗脳されて敵軍となって盤上に戻ってくるというゲームなのである。

将棋の駒に心があれば・・・敵が味方になり・・・味方が敵になるこの世の定めを・・・なんと思うのだろうか。

裏切り者のくせに・・・とか・・・仲間になれば頼もしい・・・とか。

冷徹非情に謎を解く杉下右京と・・・どんな人間も手駒にしてしまう社美彌子・・・。

二人の知的ダンスに・・・うっとりするしかないのだった。

で、『相棒season15 最終回SP悪魔の証明』(テレビ朝日20170322PM8~)脚本・輿水泰弘、演出・橋本一を見た。長い長い話である。しかも・・・登場人物の過去のエピソードが絡み合っているために・・・話は複雑である。ミステリ好きのための一話と言ってもいいだろう。二人のプレーヤーが一歩も譲らずに・・・最後の一手まで手の内を見せない好ゲームなのである。久しぶりに「相棒」でうっとりできたな・・・。

スパイ(工作員)と言えばジェームズ・ボンドことコードネーム007は英国のMI6所属である。米国にはCIAがあり、ソ連にはKGB(カーゲーベー)があった。日本には内閣府内閣官房内閣情報調査室があるわけである。いわゆる内調に警察庁のキャリアであった社美彌子(仲間由紀恵)は総務部門主幹として出向していた過去がある。つまり・・・日本版のスパイの一員だったわけだ。

「ロシアンタイムス」東京支局長という表向きでスパイ活動を行っていたヤロポロク・アレンスキー(ユーリー・B・ブラーフ)を巡る連続殺人事件で・・・国賊であるスパイの協力者を殺しの連鎖に巻き込んだ内閣情報調査室室長・天野是清(羽場裕一)は杉下右京(水谷豊)の追及で逮捕され収監されたが・・・今も裁判で係争中の被告人となっている。

杉下右京は・・・天野是清がなんらかの事情で・・・社美彌子を庇っているのではないかと疑っている。

ヤロポロク・アレンスキーは結局、米国に亡命した。

自称、ロマンチックな男・冠城亘(反町隆史)はヤロポロク・アレンスキーと恋に落ちた社美彌子がマリア(ピエレット・キャサリン)を出産した事実を胸にしまっているのだった。

つまり・・・かなり・・・複雑な前段があるわけである。

日本にスパイがいるなんて荒唐無稽な話だと思っている能天気な人々には少し難しいかもしれないわけである。

ふざけた顔でつまらないジョークを連発している米国人タレントがCIAのエージェントかもしれないなどとは・・・一般人は妄想しないものだからな。

おいおいおい。

そもそも・・・この局自体が親旧ソ連の牙城じゃ・・・もういいだろう。

心に「覗き屋」として変質的な歪みを抱え・・・杉下右京と冠城亘への偏執的な怨みを抱く警視庁生活安全部サイバーセキュリティ本部専門捜査官・青木年男(浅利陽介)は素晴らしいインターネットの世界のセキュリティーに対する甘さを露呈する冠城亘のパソコンに接触し、ハッキングのためのベースとしてバックドアを仕掛ける。冠城亘のパソコンを経由してピーピングトム青木が侵入したのは警視庁総務部広報課課長となっている社美彌子のパソコンだった。

青木は・・・Mのフォルダーに収められたマリアの画像にうっとりとするのだった。

青木の仕掛けたフォルダーの移動の悪戯に気付いた社美彌子はサイバーセキュリティ本部に相談する。

青木はハッキングの証拠を冠城亘のパソコンに残したまま・・・バックドアを閉じるのだった。

冠城亘は・・・元の上司である社美彌子のパソコンに対するハッカーとして嫌疑をかけられてしまうのである。

「冤罪です・・・第一・・・俺にはそんなハッキング能力はありません」

無罪を主張する冠城亘・・・しかし、部下の失策に・・・右京は「あることを証明するのは簡単ですが・・・ないことを証明するのは困難です・・・いわゆる悪魔の証明という奴ですねえ」と冷静に指摘する。

ここから・・・右京は可愛い部下の冤罪を晴らすために奔走するのだが・・・肝心の冠城亘にさえ・・・そう思われないのが人徳というものである。

やがて・・・未婚の警視庁キャリアに隠し子がいたという下世話な記事が写真週刊誌に掲載される。

冠城亘はますます窮地に追いやられる。

同時に・・・スキャンダラスな記事の主役となった社美彌子は女性キャリアに対して差別的な感情を持つ警視庁幹部に吊るしあげられる。

警視庁副総監・衣笠藤治(大杉漣)や警視庁刑事部長・内村完爾(片桐竜次)は「子供の父親」を追及するが・・・「プライバシー」を盾に口を割らない社美彌子なのである。

社美彌子をヤロポロク・アレンスキーの協力者として疑う法務事務次官・日下部彌彦(榎木孝明)には「よくやったと言いたいところだがやり方が粗雑だ」と叱責される冠城亘だった。

ロマンチックな冠城亘は「やったのは俺ではない」と社美彌子に直訴する。

ある意味・・・ものすごいピエロ・ポジションなのである。

なにしろ・・・謝罪している相手こそが事件の黒幕なのである。

一方・・・杉下右京は・・・「誰かに謎を仕掛けられたら挑まないわけにはいかない」と独自の捜査を開始する。

「マリア」の父親がヤロポロク・アレンスキーであることに言及する杉下右京に・・・ロマンチックな冠城亘は抵抗を感じるのである。

「俺には想像もつかないところから・・・真実を追求しているのでしょうが・・・社美彌子も人間だということを忘れないでください」

「想像もつかないなら・・・黙っていろ」

「・・・何様なんだ」

ここは上司と部下と言うよりは・・・超優秀な父親と不出来な息子の会話である。

「のってきましたね」と微笑む犯罪者出身の「花の里」の女将・月本幸子(鈴木杏樹)はニヤニヤするのだった。

なにしろ・・・今回の冠城亘はものすごくピエロであり・・・お茶の間の冠城亘応援団は・・・結末で苦い思いを味わうことになるわけである。

同性愛者であるために苦しい立場の警視庁警務部首席監察官・大河内春樹(神保悟志)はラムネを貪り食うのだった。

警視庁刑事部の参事官・中園照生警視正(小野了)は特命係に警視庁捜査一課・伊丹刑事(川原和久)と芹沢刑事(山中崇史)を配置する。

「週刊フォトス」の記者・風間楓子(芦名星)に「マリアの父親はヤロポロク・アレンスキーかもしれない」と伝えて反応を確認した杉下右京は捜一コンビに・・・風間記者の周辺調査を依頼するのだった。

やがて・・・風間記者の恋人・・・キング出版編集者の軍司森一(榊英雄)の存在が浮上する。

「警部殿の読み通り・・・軍司は東京大学将棋部で・・・社美彌子と先輩後輩でした」

「王手ですね」

「どういうことですか」と説明を求めるピエロ冠城亘・・・。

「つまり・・・これは・・・社美彌子の自作自演ということです」

「え・・・」

「情報を制するものは・・・世界を制しますからねえ」

やがて・・・「週刊フォトス」は「未婚の母の娘の父親はスパイだった」という衝撃記事を掲載するのだった。

再び・・・警視庁幹部は社美彌子を召喚する。

「もはや・・・プライバシーを盾にはできないよ」と衣笠副総監・・・。

「ヤロポロク・アレンスキーが娘の父親であることは間違いありません」

「由々しきことだ・・・」

「しかし・・・皆さんが想像しているような事情ではありません」

「何・・・」

「私はヤロポロク・アレンスキーに強姦されたのです」

「えええ」

当時の事情を知るものとして警察庁長官官房付の甲斐峯秋(石坂浩二)が現れた!

「私も驚愕した・・・しかも妊娠が分かり・・・出産すると聞いて唖然とした」

「しかし・・・中絶という選択もあったのではないか」

「生れてくる子供に罪はありませんから」

チェックメイトである。

けれど・・・セクハラ大王の内村刑事部長は下衆を極める。

「そんなこと言って・・・本当は和姦なんじゃないの」

だが・・・衣笠副総監は臭いものにふたをするのだった。

「諸般の事情を考慮して・・・この件は不問とする」

すべてはなかったことになったのであった。

「しかし・・・なぜ・・・彼女は秘密の暴露を・・・」とつぶやく

「ハッキングをされた時点で・・・自分の弱点の消滅を計画したのでしょう」

「公然の事実となれば・・・もはや秘密の意味はなくなる・・・」

「彼女は謎の解明へと私を誘い・・・まんまと目的を果たしたのです・・・そして君の罪はうやむやになった」

「・・・」

杉下右京の非情の調査によって自分が救われたこと悟る冠城亘・・・。

「しかし・・・ハッカーは誰なのでしょう・・・冠城くんの・・・パソコンに容易に接近できる人物が・・・結構・・・身近にいる可能性がありますね・・・ねえ・・・青木くん」

青木はじっとりと手に汗をかいた。

「右京さんを猟犬として使い・・・自分を守り切る・・・食えない女だ」

ロマンチックでピエロで負け惜しみの強い冠城亘だった。

社美彌子は愛するマリアのためにプリキュアの最新版ソフトを入手した。

マリアが・・・愛の結晶なのか・・・そうではないのかを証明するのは困難なのである。

愛国者と国賊の区別が曖昧なように・・・。

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2017年3月23日 (木)

海賊も用心棒も殺し屋ですが何か?(綾瀬はるか)

国会で都議会で・・・うさんくさい人がうさんくさい人たちからうさんくさい質問をされてうさんくさい答えをしている今日この頃である。

もちろん・・・世の中がうさんくさいので・・・それでいいのだろう。

うっかり・・・付き合っていると気が滅入るのでほどほどにしなければならない。

権力は腐敗するのが当たり前なので時々・・・膿を出すのは悪いことではない。

しかし・・・混沌とした世界情勢を前に・・・あまりだらだらとしているのは・・・それはそれで不安なのである。

隙を見せたらやられてしまう・・・すでにそういう時代じゃないのかな。

うっかり・・・負ける方につかないように・・・それだけが気がかりである。

それとも・・・いよいよ世界大戦争に突入なのかな・・・。

で、『精霊の守り人II 悲しき破壊神・第8回』(NHK総合20170318PM9~)原作・上橋菜穂子、脚本・大森寿美男、演出・西村武五郎を見た。人命尊重という理想から・・・最も遠いのが戦争行為であることは明らかである。しかし、理想はあくまで理想であり・・・現実的には21世紀になっても他国の国土を併合してしまう国家が国連の常任理事国であり、他国の領土を不法占拠している隣国や他国の人間を拉致して殺害する隣国が公然と存在しているわけである。盗賊から商人を守る用心棒が・・・殺人を後ろめたく思うようだと・・・専守防衛など成立しないことになる。「戦争で人を殺しても敗北しない限り罪には問われない・・・」ということを義務教育で教えることの是非が問われるわけである。先制攻撃した方が敗北した場合は・・・責任を追及されるし・・・先制攻撃をするような人々に負けた場合は想像するだけで恐ろしい・・・つまり・・・何が何でも負けられないのが戦争と言うものなんだなあ。必ず勝つとは限らないからなるべく戦争にならないように知恵を絞るべきなのだが・・・それはそれとしていつでも敵を殺せる準備はしておかないとねえ。

いつか・・・どこかの世界・・・。

北の大陸の・・・新ヨゴ国の西・・・カンバル王国の南に位置するロタ王国。

ロタ国王ヨーサム(橋本さとし)の崩御によって北部ロタと南部ロタの対立が深まっていた。

南大陸をほぼ制圧したタルシュ帝国は・・・北大陸と南大陸の狭間に位置する海洋国家サンガル王国をすでに傘下に収め・・・虎視眈々と・・・北大陸征服の時を狙っている。

南部ロタの太守スーアン(品川徹)は南部の領主たちの盟主として・・・タルシュ帝国と手を組み・・・前国王ヨーサムの弟・イーハン(ディーン・フジオカ)の王位継承に異を唱えていた。

ロタの被差別民タルの女トリーシア(壇蜜)と情を交わしたイーハンは・・・秩序を乱すものとして危険視されていたのである。

王の密偵組織であるカシャル(猟犬)も・・・穏健派の長・スファル(柄本明) と・・・その娘で過激派のシハナ(真木よう子)の二派に分かれて争う始末だった。

トリーシアの娘・アスラ(鈴木梨央)が精霊の一種で恐ろしい破壊神タルハマヤを宿したことにより・・・イーハンとスーアンの対立は決定的なものとなる。

サーダ・タルハマヤとなり・・・ロタの貴族たちを虐殺しかけたアスラを用心棒のバルサ(綾瀬はるか)が制止し・・・混乱するロタ王都を脱出する。

タルハマヤを拒絶したアスラは・・・意識を取り戻すが・・・言葉を失っていた。

バルサと薬草使いのタンダ(東出昌大) はチキサ(福山康平)とアスラの兄妹を連れて・・・ロタ王国と新ヨゴ国の国境の街・・・四路街へと退避する。

マーサの店に兄妹を預けたバルサは・・・新ヨゴ国の皇太子チャグム(小林颯→板垣瑞生)が暗殺されたと聞き・・・悲哀に襲われるのだった。

自分の大切な人を守り切れなかった無力感に包まれたバルサは・・・言葉を失い温もりを求めるアスラを残し・・・孤独の道を進む。

護衛士として・・・隊商の用心棒の職を求めて・・・口入屋に向うバルサ。

しかし・・・皇太子の死を受けて臨戦体制となった新ヨゴ国の国境は封鎖され・・・国王の崩御により喪に服すロタ王国の情勢も不安定となり・・・交易商人たちも商いを手控えていた。

「バルサ・・・当分・・・用心棒の口はないぞ」

「新ヨゴからロタへ向かう隊商がやってくるまで・・・待つさ」

「さて・・・そんなものが来るのはいつになることか・・・」

「・・・」

「すでに海の民はタルシュに下り・・・新ヨゴ国も滅んでしまうかもしれないという御時勢だ・・・」

新ヨゴ国の帝(藤原竜也)は・・・皇太子チャグムを軍神とするための儀式を行っていた。

「皇太子チャグムは新ヨゴ国にその身を捧げた・・・チャグムは神となった・・・軍神チャグムよ・・・新ヨゴ国を守りたまえ」

帝は陸軍大提督ラドウ(斎藤歩)に国境の封鎖を命じた。

「鎖国」によって・・・タルシュの侵略が納まるが如くの対応である。

しかし・・・タルシュ帝国の第二王子ラウル(高良健吾) がチャグムに告げた言葉が事実なら・・・すでにタルシュの触手は皇宮内に伸びているのである。

新ヨゴ皇国の星読博士シュガ(林遣都)は・・・それが誰かを推測する。

チャグム皇太子の死を受けて・・・皇太子の扱いとなったトゥグム(高橋幸之介)の教育係のガカイ(吹越満)は充分に怪しい。

帝を暗殺して傀儡の帝を立てるなら・・・チャグムよりもトゥグムの方が相応しい。

「シュガよ・・・よく・・・帝はお前をお許しになられたものだな」

「ガカイさんにお伺いしたいことがあります」

「なんだ・・・」

「ガカイさんは・・・次期聖導師になられるかもしれない」

「そうかもしれんな」

「ガカイさんは聖導師として・・・どのように国を守るつもりですか」

「シュガよ・・・我ら星読博士の仕事とは何か」

「星を読むことです」

「そうだ・・・我々は運命を読む・・・そして運命を変えるのは我々の仕事ではない」

「なんですって・・・」

「新ヨゴ国が滅びると星が告げるなら・・・その運命を受け入れるのが天意に適った生き方だ・・・」

「まさか・・・帝を裏切って・・・タルシュに従うのではないでしょうね」

「それを星が告げるのならな」

「・・・」

帝は命令に従ってチャグム暗殺を遂行したと報告する狩人頭のモン(神尾佑)を召喚した。

「モンよ・・・チャグムは・・・最後の瞬間・・・それを命じたのが・・・朕であることを悟っていたか」

「そのような・・・暇はなかったと思われます・・・チャグム殿下はあっという間に海の藻屑となりました」

「そうか・・・モンよ・・・汝のしたことを悔いる必要はない・・・チャグムはその身を捧げて新ヨゴ国を守護したのだ・・・それを悔いることは・・・軍神となったチャグムへの冒涜と心得よ」

「惧れ多いことでございます」

帝は微笑んだ・・・。

聖導師(平幹二朗)の寿命はつきかけていた。

しかし・・・シュガが秘事を打ち明けるとすれば・・・他に人はいない・・・。

「聖導師様・・・お知らせしたきことがあります」

「何事か・・・」

やつれた聖導師の顔に精気が蘇る。

聖導師は・・・秘密の通路を使い・・・後宮に潜入する。

チャグムを失ったと信じる二ノ妃(木村文乃)は奥に引き籠っていた。

「二ノ妃様・・・」

「聖導師・・・近う寄れ・・・もそっと・・・近う」

「チャグム様は・・・お亡くなりになっておりませぬ・・・」

「・・・」

「チャグム様は・・・生きておいででございます」

「なんと申した」

「チャグム様は・・・死んだとみせかけて・・・タルシュの手を逃れ・・・ロタ王国に落ちのびられたそうです」

「まことか・・・」

「嘘など申しませぬ・・・」

「チャグムが生きている・・・たった一人で・・・ロタにおると・・・さすれば・・・バルサを雇わねばならぬ・・・」

「バルサ・・・」

「狩人のジンを呼べ・・・」

「畏まりました」

ジン(松田悟志)は密命を受け・・・国境地帯へと旅立った。

バルサと別れ新ヨゴ国に向ったタンダは・・・国境封鎖の監視を逃れ・・・獣道をたどっていた。

そこで・・・タンダはジンと邂逅する。

「あなたは・・・狩人のジン・・・」

「タンダよ・・・バルサの居所を知らぬか・・・」

「まさか・・・あなたが・・・討手ですか」

「俺ではバルサを討てぬことは・・・お前がよく知っているだろうが」

「・・・」

「二ノ妃様からの仕事の依頼だ」

「お妃様から・・・」

「任務は・・・チャグム殿下の護衛だ・・・」

「チャグム殿下は亡くなったと聞いた・・・」

「生きておられる」

「えええ」

バルサは四路街の口入所でジンから・・・二ノ妃の手紙を受け取った」

「チャグムが生きている・・・」

バルサは腹の底からこみあげてくる衝動をこらえることができなかった。

バルサは笑った。

「アハハ」

「バルサ・・・」とタンダが人目を気にする。

「ハハハハ」

「バルサよ・・・引き受けてもらえるか」

「ハハハハハハ・・・・引き受けた」

バルサは前払いの報酬を受け取る。

「二ノ妃は・・・相変わらず気前がいいな」

「どうする」

「とりあえず・・・ロタ王国のツーラム港に向う・・・手紙にあるタルファの首飾りを換金していれば・・・足取りがつかめるだろう・・・」

「頼んだぞ・・・バルサ」

「ジン・・・お前は・・・タンダを新ヨゴに送ってくれ」

「え・・・俺を連れていかないのか」とタンダ。

「急がねばならんからな」

バルサはすでに馬市場に向っていた。

チャグムは海上で暮らす海の民ラシャロの船にたどり着いていた。

ツーラム港を目指す算段をしているところで・・・海賊の襲撃を受けたのだった。

そうとは知らぬ・・・バルサはツーラム港の酒場を巡っている。

大衆食堂の店主(市オオミヤ)に情報を求めるバルサ。

「この街でお高い宝石がさばけるかい」

「この店は酒を振る舞う店だよ・・・そんなことを大声で言うもんじゃない」

「心配してくれてありがとう・・・邪魔をしたな」

バルサは釣りをしているのだった。

「宝石」という餌には・・・ならず者が食い付くのである。

しかし・・・店を出たバルサを追いかけてきたのはツアラ・カシーナ(海の恵を呼ぶもの)と呼ばれる海賊頭のセナ(織田梨沙)だった。

バルサを尾行したセナはたちまちまかれてしまう。

そして・・・セナは背後からバルサに問われるのだった。

「私に何か用かい」

「そういう店を知っている・・・」

「ほう・・・そうかい」

「私もその店のことを調べている・・・何か・・・わかったら教えてほしい・・・それが店を教える条件だ」

「ふうん・・・まあ・・・いいだろう」

「武器は持っていけない・・・私が預かろう・・・」

「・・・」

「合言葉は・・・ネズミが猫にご挨拶申し上げる・・・」

「店はどこだい」

「ついておいで・・・」

バルサは怪しい路地裏の盗品商オルシ(寺十吾)の店に入った。

「おや・・・メスのネズミか・・・」

「それが客に対する態度なのかい」

「おや・・・売り手かと思えば・・・買い手だったのか・・・何をお求めですか・・・お客さん」

「そうだな・・・たとえば・・・タルファの首飾り」

「・・・あなた様にお買い上げいただけるとは思いませんが・・・」

「あるのが・・・わかればいいんだよ・・・私が知りたいのは・・・それを持ちこんだ人間の情報だ・・・言い値で買うよ」

「お前は・・・何者だ」

「それは知らない方が身のためだよ」

「しゃらくせえ・・・少し痛い目に合わないと・・・」

目の前からバルサが消え去ったことに驚くオルシ。

しかし・・・その時には背後に回ったバルサに首を絞められていた。

「大人しくしていれば・・・苦しまずに済んだんだよ」

オルシの手下たちは武器を構えて近付く。

「待て・・・」

「ふふふ・・・わかるかい・・・首の骨が悲鳴を上げているのが」

「よせ・・・」

「海賊だ・・・」

「へえ・・・」

「赤目のユザンが・・・売りに来た」

「品物はどうした」

「スーアン城の若殿が買った」

「よし・・・ではこのまま・・・出口まで付き合ってもらおうか」

「・・・」

店を出たバルサは殺気を感じる。

解放されたオルシは手下の影に隠れて叫ぶ。

「生きて帰れるとでも思ったのか・・・」

「生かしておいた恩を仇で返すのかい」

「野郎ども・・・やっちまいな」

オルシの手下たちが殺到する。

しかし・・・バルサは素手で充分に渡りあうことができた。

男たちの攻撃をかわしながら路地を進んでいく。

その先に立つ男にただならぬ気配を感じたバルサは・・・拳を突き出す。

その拳を受けとめたのはラウル王子の密偵・・・ヒュウゴ(鈴木亮平)である。

ヒュウゴは凄腕で追手を食いとめるのだった。

「バルサ・・・こっちだよ」

セナがバルサの短槍を渡しながら導く。

「私を知っているのか・・・あんた誰だい・・・」

「私はチャグムの友達さ・・・セナって言うんだ」

「・・・」

バルサはセナと逃走を続ける。

「こっちだよ」

「赤目のユザンを知っているか・・・」

「知っている・・・同じ島の生まれだ」

「棲家は」

「案内しよう」

二人は闇に消える。

タルファの首飾りを売って・・・売春宿で大盤振る舞いをしたユザン(平山祐介)は一寝入りするためにアジトに戻って来た。

「おい・・・野郎ども」

様子がおかしいことに・・・酔いのため気がつかないユザンである。

見慣れぬ女の姿に・・・驚くユザン。

「なんだ・・・お前は・・・」

「遅かったじゃないか」

「お前・・・子分たちに何をした」

「お前の行く先を言わないもんだから・・・眠らせてやったよ・・・なかなか良い子分じゃないか」

「ふざけるな・・・」

「お前・・・タルファの首飾りをどうやって手にいれたんだい」

「タルファの・・・」

そこへ・・・軍勢がなだれ込む。

「なんだ・・・」

「お前のしでかしたことの報いなんだよ」

「あれは・・・ロタの兵隊じゃねえか・・・」

「逃げるんだ・・・裏口があるだろう」

「・・・」

兵士たちの数に怯えて・・・ユザンは逃げ出した。

追手を逃れる二人は袋小路の隠し扉を開いて待つセナに導かれて息をつく。

「一体なんだってんだ・・・」

「お前・・・チャグムをどうした」とセナ。

「チャグム・・・」

「十五、六の男の子だよ・・・そいつは私の大切な人なんだ」

「あのガキのことか・・・」

「お前が・・・ラシャロの船を襲ったのは噂になってるんだよ」

「お前は誰だよ・・・」

「へえ・・・私の顔を知らないのか・・・それでも海賊のはしくれかい」

「え・・・あ・・・セナ様・・・ツアラ・カシーナがなんで・・・こんなところに」

「まさか・・・お前・・・チャグムを奴隷商人に売り飛ばしたんじゃないだろうね」

「あの首飾りをいただいて・・・港まで送っただけだよ・・・ガキは市場の方に歩いて行った・・・それきりだ」

「そうか・・・チャグムはそこで・・・ロタ王の崩御を知り・・・途方に暮れただろう」

「しかし・・・なんでロタの兵隊が・・・」

「お前の売った宝石は・・・売ったものの口封じが必要なものだったのさ」

「チャグムは・・・スーアン城に入り・・・おそらく軟禁されている」とヒュウゴが割り込む。

ヒュウゴに目配せされて・・・セナはユザンを連れ出す。

「命が惜しかったら・・・すぐに出港しな・・・」

「へい・・・」

「バルサさん・・・私がチャグムの友達というのは本当だよ・・・バルサさんは・・・チャグムに聞いた通りの人だった」

「・・・」

セナとユザンが部屋を出て行くと・・・バルサはヒュウゴに向き合う。

「お前は・・・タルシュの密偵・・・ヒュウゴなのか」

「ほう・・・そこまで御存じですか」

「お前は・・・チャグムの敵ではないのか」

「立場で言えば・・・敵ということになるでしょう・・・しかし・・・人の心は・・・そのように割り切れるものではありますまい」

「お前・・・チャグムに何をした・・・」

「私は古きヨゴの民として・・・殿下に寄り添い・・・時にはその命をお助けいたしました・・・そして・・・殿下の前で・・・処刑されるように仕向けたのです・・・殿下は私の命乞いのために屈服し・・・一度は帝の暗殺を請け負った・・・・」

バルサは・・・ヒュウゴが・・・チャグムの心を弄んだことを知った。

「酷いことをしたものだな」

「それが・・・唯一の・・・戦乱を避ける手段だったのです」

バルサは拳を繰り出した。

ヒュウゴはあえて・・・拳に顔を晒し・・・壁際まで吹っ飛んだ。

スーアン城に南部同盟の領主の一人アマン(緋田康人)が到着した。

「太守様・・・新ヨゴ国の皇太子を捕えたとは本当ですか」

「聞こえが悪いぞ・・・アマン殿・・・チャグム殿下は我が城にご滞在なされているのだ」

「しかし・・・」

「ユラリー・・・さがっておれ」

スーアンの娘ユラリー(信江勇)は父親の命じられるままに食卓から去った。

「すべては・・・わが息子オゴンの手柄じゃ・・・」

オゴン(富澤たけし)は微笑んだ。

「だが・・・新ヨゴ国の皇太子を匿ったとなると・・・タルシェには裏切り行為と責められるのでは」

「アマン殿・・・殿下はあくまで・・・取引材料じゃ・・・タルシュにはこう申すのじゃ・・・わが息子・・・アマンがロタの王座につきし時・・・チャグム皇太子を引き渡すと」

「ロタを総べるアマン国王・・・」

「うむ・・・よき響きじゃ・・・」

スーアン大領主を盟主とする南部同盟は・・・北部を制圧したイーハン王の王位継承を認めず・・・タルシュ帝国と組んで・・・ロタ王国の統一を目論んでいたのだった。

チャグムは・・・タルシュの虜囚から・・・スーアンの虜囚になったことにまだ気がつかない。

「いつになったら・・・スーアン太守に御目通りが叶うのか」

チャグムは与えられた客室で・・・侍女(花影香音)に問う。

「私に問われてもわかりかねます」

「一刻も早く・・・おとりつぎ願いたい・・・」

「ごゆっくり・・・お休みくだされませ」

「・・・」

チャグムは己の非力を噛みしめる。

バルサには幼い弟子の苛立ちが・・・手にとるようにわかっていた。

「チャグム・・・待っていろ・・・」

バルサはチャグムが幽閉されているスーアン城を見上げた。

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2017年3月22日 (水)

アリスとリスとレモンとパセリとコーヒーとミルクと死と乙女と黒と白とグレー(松たか子)

変則的な「精霊の守り人II 悲しき破壊神」と「おんな城主  直虎」を除くと2017年の冬ドラマのレギュラー・レビューもこれで終わりである。

珠玉の名作がラストを飾るのもなかなかに清々しい展開である。

視聴率的には*9.8%↘*9.6%↘*7.8%↘*7.2%↗*8.5%↘*7.3%↗*8.2%↗*9.5%↗11.0%↘*9.8%で平均視聴率が*8.9%という微妙な数字を残しているわけだが・・・まあ・・・そういう時代なんだな。

スポーツ中継延長で深い時間の方が視聴率が高かったり、最初と最後が同じというミラクルも達成している。

脚本・演出・音楽そして出演者が・・・相当なクォリティーであったことは間違いないだろう。

いろいろと含みを残した脚本のために・・・演出上のエラーである「時系列の不一致」が・・・「時系列の作為的な配置転換」という「奇妙な深読み」を始める視聴者も産んだりして・・・それだけ・・・お茶の間の妄想を膨らませる余地があった・・・ということだろう。

送り手側も「ミステリ」と言ったり、「ラブストーリー」と言ったり・・・見出しつけすぎの気配があったりもした。

終わってみれば・・・これは「人生の冒険の物語」であり・・・さらに言えば「心なき人々への警句」だったと思われる。

「ミステリ」で必ず「犯人」が告白するように・・・「ラブストーリー」で必ず「恋人たち」がキスするように・・・「人生」はチョロくないのである。

しかし・・・音楽を武器に冒険者たちは幸せな一時を過ごしていく。

コンサートでステージに空き缶を投げつけるような人でなしには・・・けして味わえない美しさとともに。

で、『カルテット・最終回(全10話)』(TBSテレビ20170321PM10~)脚本・坂元裕二、演出・土井裕泰を見た。名もなきカルテットが結成された最初の冬の始りから・・・カルテットドーナツホールが活動休止に追い込まれるまでの冬の終わりまでを一つの話と考えれば・・・前回が最終回である。十四年前に早乙女真紀になりすました山本彰子(松たか子)という第一ヴァイオリンが逮捕され・・・公正証書原本不実記載等の罪とともに不審死した養父の毒殺疑惑が表沙汰となり・・・物語はボーナス・ステージに突入するのだった。

「美人バイオリニストはなりすましだった」「戸籍売買の闇~十四年間他人の名前で結婚まで」「夫は強盗犯!犯罪者夫婦の痴情のもつれ」「疑惑の女・・・養父殺しの謎」「賠償金二億円!加害者家族を搾り取った女の転落」「疑惑のバイオリニストと奇妙な共同生活・・・カルテットの色と金」「世界の別府ファミリーの御曹司が食いものにされていた!」「うそつき魔法少女もいた黒いカルテット」「証拠不十分・・・執行猶予で野放しにされる魔女の恐怖」・・・週刊誌やワイドショーを賑わす・・・山本彰子とカルテットドーナツホールである。

裁判を終えた山本彰子は壊れかけた洗濯機とともに・・・人目を忍び・・・ひっそりと暮らしていた。

夏・・・である。

麦茶を飲み干す山本彰子には白髪が目立つ。

担当弁護士が山本彰子のアパートを訪問する。

「執行猶予もついたことだし・・・音楽活動を再開してはいかがですか」

「・・・」

「やはり・・・皆さんの元に戻るのは無理ですか」

「あの人たちは・・・受け入れてくれると思います」

「では・・・なぜ・・・」

「これから・・・私がどんな演奏をしても・・・犯罪者のシューベルトや・・・疑惑の女のベートーベンになってしまうでしょう。・・・それでは聴衆を心から楽しませることはできないと思うのです。私には灰色の音楽しか残されていないのです」

「・・・」

「カルテットドーナツホールは私に・・・最高のひとときをプレゼントしてくました・・・もういつ死んでも構わないと思うほどに・・・だから・・・もう充分なのです」

山本彰子はすでに・・・灰になる覚悟だった。

軽井沢の別荘では・・・第二ヴァイオリン・別府司(松田龍平)とヴィオラ・家森諭高(高橋一生)、そしてチェロ・世吹すずめ(満島ひかり)が第一ヴァイオリンの帰還を待っていた。しかし・・・裁判終了後に山本彰子が消息不明となり・・・気分はグレーなのである。

やがて・・・軽井沢には二年目の冬が迫ってくる。

細々と営業を続けるカルテットドーナツホール・・・。

「お肉の日」のイベントで演奏するために・・・ゲストのヴァイオリニスト・大橋エマ(松本まりか)を迎えるのだった。

「リムジンじゃないんですね」

カルテットのワゴンに違和感を感じるミニストップちゃんである。・・・いつの話だよ。

第一話で道を訊かれた女子大生と路上キスをして存在をアピールしていたヤモリは今回は犬のマリコにじゃれつかれていた。

宇宙の長澤まさみと会話するまでになった高橋一生の爆発ぶりに長年のファンが涙目の最近である。

ヤモリを「ユタカさん」と呼ぶ・・・別府。

別府を「ツカサくん」と呼ぶ・・・ヤモリ。

もはや・・・ユタカとツカサの時代に突入なのである。

ハイテンションのゲスト大橋は・・・眠り姫のすずめに驚く。

そして・・・コスチューム・プレイに激しくテンションを下げるのだった。

ツカサは牛・・・ユタカは鶏・・・すずめはピンクの豚の着ぐるみ・・・そしてゲスト大橋はコックさんの衣装なのである。

「こんなんじゃ・・・演奏できません」

「人間なのに・・・」

「恥ずかしくないんですか・・・皆さん・・・椅子取りゲームに負けたのにイスに座ってるフリをいつまで続けるつもりなんですか」

辛辣な批判の言葉を投げかけて去って行くゲスト大橋・・・。

「くずもちを残していってくれた」

「いい人だったね」

「すみません・・・お肉の日の仕事しかとれなくて・・・」

ツカサはユタカとすずめを練習に誘うが・・・二人は多忙だった。

カルテットドーナツホールの活動拠点だったライプレストラン「ノクターン」は色々あって・・・割烹ダイニング「のくた庵」に模様替えしていた。

シェフの大二郎(富澤たけし)は板前に憧れていたらしい。

ユタカは給仕人として週七日勤務しているのである。

すずめは「不動産屋」が店じまいするために・・・新たなる資格を獲得するべく徹夜で勉強をするのだった。

「すずめちゃんに・・・徹夜は似合いません・・・すずめちゃんに相応しいのは・・・二度寝」

すずめは微笑むが眠らないのだった。

「みんなおかしい・・・狂っている・・・まともなのは僕だけだ」

ツカサはドーナツ販売チェーン「ふくろうドーナツ」を退職して・・・無職になっていた。

ツカサは正しいキリギリス・・・働きまくるユタカや・・・徹夜で勉強するすずめは間違ったキリギリスなのである。

山本彰子という人間を何も知らずに「蔑む商品」として消費する酷い世間が一方にあり・・・そんな山本彰子に関わったすずめやユタカを雇用し続けた優しい人々がいる。

世界の別府ファミリーの恥部となったツカサに対して・・・別府ファミリーは冷たいようにも思われるが・・・冷酷そうな弟も・・・犬に噛まれたツカサに絆創膏を貼ってくれる優しさを持っている。

そして・・・別荘には買い手がつかない。

グレーな軽井沢は・・・白い冬へと向っている。

そして・・・第一ヴァイオリン不在のカルテットは・・・ひっそりと息をひきとろうとしていた。

割烹ダイニング「のくた庵」のランチタイム。

ツカサとすずめは食事をしてユタカは給仕をしている。

「ここが・・・こんな風になっちゃったの・・・僕らのせいですよね」

「マスターは・・・和食に憧れてたみたいよ・・・僕も板場で修業しないかって誘われてるの」

「えええ」

そこにハイエナ雑誌記者が現れる。

「ちょっとお話よろしいですか」

「・・・」

「山本彰子・・・例の件で・・・何か話していませんか」

「何かって何ですか」

「死んだ父親代わりの男のこととかね」

「・・・」

「ほら・・・うっかり口をすべらせるってことあるじゃないですか」

「その件は不起訴になったじゃありませんか」

「あなたたちだって・・・彼女に利用されたわけでしょう」

「そんな人じゃありません」

「これ・・・最新号なんですけど」

雑誌記者は醜聞写真週刊誌「flash」のような「fresh」を見せるのだった。

そこには・・・男性と路上でコロッケを食べながら笑う山本彰子の姿が盗撮されていた。

見出しは「白昼堂々コロッケデート・・・疑惑の女のふしだらな日常」などとスキャンダラスである。

「ねえ・・・どう思います」

カルテットはショックを受けた。

長い春雨を食べながらユタカはつぶやく。

「真紀さん・・・幸せそうだった」

春雨を鋏で切ってもらいながらすずめは反駁する。

「道端でコロッケ食べたら誰だって幸せになりますよ」

「じゃあ・・・僕とコロッケデートする?」

だが・・・一番ショックを受けたのはツカサである。

「解散しましょうか・・・」

「おやおや・・・コロッケデートシンドローム発症か・・・」

「仕事もないし・・・すずめちゃんは勉強ばかりしてるし・・・ユタカさんは毎日働いているし・・・マキさんは名前を変えたって平気で生きていける人で・・・もう次の人生を歩んでいる・・・僕だけが・・・同じ場所でじっとしているんだ・・・僕も・・・もう自分の中のキリギリスを殺すしかないでしょう」

すずめは階段を駆けあがりヴァイオリンケースを抱えて戻ってくる。

「私は・・・預かったんです・・・マキさんが帰ってくるまで・・・この子と一緒に待っているって約束したんです・・・解散するなら・・・このヴァイオリンをマキさんに返さないと」

「じゃあ・・・返しに行こうか」

「場所・・・わかるんですか」

「うん・・・」

ストーカーとしての能力を全開にするツカサだった。

素晴らしいインターネットの世界の風景が目に見える地図で「コロッケデートの場所」を特定するツカサ・・・。

「あ・・・なんか・・・似てる」

「あ・・・郵便ポスト」

「あ・・・ここ」

アリの群れが巣食う団地に到着するカルテット車・・・。

山本彰子は玄関のドアに書かれたへたくそな落書きについて管理人に詫びていた。

「すぐに消しますから」

「最初の字を大きく書き過ぎているよね」

山本彰子は洗濯をしながら・・・弁護士に電話をかける。

「ええ・・・あの記事で・・・住所を特定されたかもしれません・・・はい・・・御面倒をおかけしてすみません」

洗濯ものを干す山本彰子の耳に届く・・・「Music for a Found Harmonium(見つけたハーモニウムのための音楽)」・・・。

山本彰子はおびき出された。

山本彰子は走った。

山本彰子はお約束で転んだ。

団地の広場で・・・トリオは・・・団地の子供たちをウキウキさせていた。

すずめは・・・山本彰子に気がついた。

演奏が止まる。

山本彰子は立ち去ろうとする。

演奏が再開される。

山本彰子は立ち止り振り返り・・・手拍子を打った。

「こんなへたくそなカルテット見たことないわ・・・」

「第一ヴァイオリンがいないから」

「よく・・・人前で演奏できたわね」

「じゃあ・・・あなたが弾いてみせてよ」

「・・・」

すずめは山本彰子の手をとった。

その手は・・・生活のために痛んでいた。

すずめは山本彰子の髪を見た。

白髪が目立った。

すずめは山本彰子を抱きしめた。

「別府さん・・・車をお願いします・・・マキさんを連れて帰るから」

ユタカは山本彰子を背後から抱きかかえた。

後ろから前からハグされて・・・身動きのとれなくなった山本彰子・・・。

ツカサはハグに参加したい気持ちをこらえて車に向う。

捕獲したキリギリスを逃がすわけにはいかないのだった。

別荘にカルテットが帰って来た。

「マキさんのことはなんて呼べばいいですか」とユタカは訊いた。

「マキで・・・」

すずめとツカサとユタカとマキ・・・カルテットは四人になった。

四人はチーズ・フォンデュを食べる。

「マキさん・・・コロッケデートの記事・・・読みました」

「あれは・・・デートではありません・・・あの方はお世話になった弁護士さんです」

「ツカサくん・・・安心してる場合じゃないよ・・・コロッケと弁護士・・・最高の組み合わせだよ」

「・・・」

「ごはん食べた後・・・どうします」

「練習しますか」

ウキウキと食事を終える四人だった。

「イエモリさんはどうしているんですか」

「元のノクターンで給仕をしてます」

「すずめちゃんは」

「資格をとるために勉強中です」

「別府さんは」

「無職です」

「・・・」

「別にマキさんのせいじゃありませんよ・・・一年前にも話したじゃないですか・・・音楽を趣味にするか・・・仕事にするか・・・仕事にすれば・・・泥沼だし・・・趣味にする時期が向こうからやってきたというか」とユタカ。

「仕事のない日に・・・路上で演奏したら・・・楽しいかもしれません」とすずめ。

「でも・・・僕は夢を見ていて・・・損したと思ったことはありません・・・夢を見てずっと楽しかった」とツカサ。

不在の間に死にかかっているトリオの病状に気付くマキ・・・。

「コーン茶飲みますか」とマキ。

「コーン茶もうありません」

「じゃ・・・コンサートしましょうか」

「え」

「軽井沢の大賀ホールで」

「ホールの前で?」

「いいえ・・・ちゃんとステージで」

「いささか・・・キャパが大きすぎるのでは」

「あら・・・私を誰だと思っているの・・・世間を騒がせたニセ早乙女真紀よ・・・疑惑の美人ヴァイオリニストなんだからね」

「でも・・・それで集まるお客さんは・・・僕たちの音楽を聴きに来るわけじゃないですよね」

「だけど・・・伝えることはできるでしょう・・・」

「好奇の目に晒されてもいいんですか」

「そんなの気にならない」

「一人でも・・・二人でも・・・伝えることができるかもしれない」

すずめは最初にマキに共感した。

「私だって・・・うそつき魔法少女だから・・・あの人は今に出られます」

「僕も・・・世界の別府ファミリーの恥ですから」

「僕だって・・・Vシネ俳優だし・・・それなりに」

ユタカはともかく・・・集客力に問題のないメンバーなのである。

「シーズン・オフだし・・・ハコは安く借りられるはず」

「ですね」

こうして・・・カルテットドーナツホールは単独で「mysterious strings night(ミステリアスな弦の夕べ)」コンサート・・・入場料3500円を開催することにしたのだった。

「真紀さんて・・・結局無実だったのよねえ」と和装の女将となった谷村多可美(八木亜希子)が呟く。

「どうですかねえ」ととぼける従業員のユタカ・・・。

別荘の内見中の俗悪な顧客がすずめに問い掛ける。

「この辺にあの女が住んでいた別荘があったんでしょう」

「今でも骨付きカルビ食べながらその辺の電柱を蹴り上げているという噂ですよ」

カルテットは世間を煽った。

カルテットのホームページは炎上した。

そして・・・マキの目論み通り・・・チケットは完売した。

ユタカは・・・客が持ってきた手紙を多可美から預かった。

「これなんですか・・・」

「カルテットドーナツホール宛ての手紙だけど・・・読まなくても損はしないよ」

「でも・・・せっかくだから」と朗読を始めるすずめだった。「私は一年前にあなたたちの演奏を聴いたものです。率直に言って最悪の演奏だったと思います。あなたたちは素晴らしい音楽が生れる過程でできたゴミです。ゴミ焼却場で燃やされた排煙のような存在です。あるいは火葬場の煙突から立ち上る煙と言ってもいいでしょう。自分たちがとっくに死んでいるのに気がつかない。燃やされて煙になっているのにまだ演奏を続けている。なぜ・・・そんな煙の分際で・・・カルテットなんて続けているのでしょう。私は五年前に奏者であることわ辞めました。自分が煙だと自覚したから・・・私は問い質したかった。何故・・・あなたたちは煙のくせに演奏し続けるのか。そこにどんな意味があるのか・・・と」

カルテットはコンサートの演奏曲を決め・・・練習を開始した。

あっという間に当日がやってきた。

慌ただしい別荘の人々・・・。

全員が音楽に囚われた服役者のようにボーダーを選択してしまう。

「かぶってますね」

「着替えますか」

「時間がありません」

「私・・・寝ぐせが」

「楽屋で直せます」

「どうせ誰もみていません」

「誰も・・・」

スズメの乙女心を踏みにじるツカサである。

ハイエナ報道陣が待ち構えるホール通用口。

寝ぐせを気にしながら・・・すずめは駆け込んだ。

盛況のコンサート会場。

「大入り満員ね」と谷村夫妻。

アポロチョコを持っている男は「ふたりの夏物語」を聴いている。

ゆかりの人々が集う夜である。

長身の白人男性にエスコートされてリムジンから降りるのは・・・ゴージャスなドレスに身を包み・・・右手の薬指に綺羅綺羅しいリングを嵌めた来杉有朱(吉岡里帆)だった・・・。

「アリスちゃん」と絶句する谷村夫妻・・・。

アリスは笑わない目で勝ち誇る。

「人生、チョロかった・・・アハハハハハハ」

一部お茶の間は万歳三唱し・・・他人の成功を妬み嫉むことに執着する人は「アリス死ね」と叫ぶのだった。

とにかく・・・「元地下アイドルアリスの不思議な旅」は見てみたいものだな。

「トイレに行ってくる」

「僕も」

ツカサとユタカが出て行った楽屋で・・・すずめはブランクを乗り越えるために痣ができるほど練習したマキに問い掛ける。

「一曲目・・・どうして・・・弦楽四重奏曲第14番にしたんですか」

「弦楽四重奏曲第14番/フランツ・シューベルト」は第二楽章が歌曲「死と乙女」と同じ主題であるために「死と乙女」とも称される。

「好きな曲だからだよ」

「真紀さんのことを疑ってきた人たちは・・・別の意味にとりそう・・・」

「そうかな・・・」

「なんで・・・この曲にしたの」

「・・・こぼれたのかな」

あらゆる言葉にはあらゆる意味がある。

すずめとマキの間でこぼれるのは「好き」なので・・・そのまま・・・「死と乙女」が好きという意味になる。

しかし・・・マキの次のセリフが謎めかせるのである。

「内緒ね」

考えようによっては・・・「殺意」を仄めかしたことになる。

すずめは・・・マキの言葉をしばらく考えてから微笑む。

それが・・・「殺意の告白」に対する「暗黙の了解」かどうかも明らかではない。

なにしろ・・・すずめは・・・マキが人を殺していようがいまいが・・・気持ちが変わるとは思えないほど・・・マキの心に寄り添っているのだ。

四人はステージに立った。

野次を飛ばすものもなく・・・静寂が彼らを迎える。

おそらく・・・客席にはただならぬ空気が立ち込めている。

だが・・・少なくとも何人かは・・・カルテットドーナツホールの奏でる音楽を聴きにきたのである。

その代表が・・・ショッピングモールで「ドラクエのテーマ」を聴いた中学生の二人組と・・・カルテットをこよなく愛したアリスであることは言うまでもない。

そして・・・カルテットに辛辣なファンレターを書いたと思われる帽子の女・・・。

とにかく誰かを蔑みたい人々は・・・思ったより好意的な客層にたじろいでいたのだろう。

そしてステージのカルテットは「死と乙女」を奏でる。

こっちに来るな

お前は情け知らずの魔物

私はお前のものにはならない

私には素晴らしい未来がある

そのおぞましい手で

私に触るな

自分を抑えることのできない悪意の持ち主が空き缶をステージに投げつけるという暴虐を行う。

しかし・・・音楽の神に身を捧げる奏者たちは目もくれない。

あの日からカルテットの冒険は始った。

カラオケ店の通路は出会いの場・・・。

「ずっと奏者を続けるの」

「音楽で食べて行くなんて・・・無理でしょう」

「二十年弦を続けたけど好きになれなかった」

「ずっと一人でチェロを弾いていたのでプロになるのなんて・・・でも・・・弾いていて楽しくなって・・・お客さんが喜んでるとちょっと嬉しくなって」

「届いたなって思うのよね」

「届けましょうよ・・・私たちの音楽を」

私のさしのべた手をとりなさい

美しく可憐な乙女

私はお前を苦しめたりはしない

私はお前を安らぎに導く

怯えることなど何もない

騒々しいこともない

あなたはただ安らかに眠るだけ

誰もが逃れられぬ運命に抱かれ・・・やがて灰になるのである。

拍手がわき上がる。

衝撃の告白を求めてきたもの。

誰かの無様な姿を見たかったもの。

音楽が嫌いなものは・・・憤りに支配されて席を立つ。

自分たちが・・・少数者であることに怯えつつ・・・理解できないものから逃げ出す。

怒りと恐怖は同じ魔物から生じるのだ。

カルテットはドラゴンクエスト「序曲/すぎやまこういち」から「冒険の書」へと道をたどりセーブを行う。

カルテットのユーモアに浮き立つ聴衆たち。

中学生たちはニヤニヤして・・・アリスは受ける。

そして・・・カルテットの必殺技「Music for a Found Harmonium」が繰り出される。

カルテットは乗りに身を任せ・・・帽子の女さえ手拍子をするのだった。

何故、続けるのか・・・楽しいからに決まってる・・・なのである。

奏者たちは夢中になり・・・聴衆たちの心は躍り出すのだった。

空気が揺れ・・・「何か」が届いて心が震えるので。

別荘ですずめが目を醒ます。

不安がよぎる。

もしも・・・夢だったらどうしよう。

キッチンにはツカサとユタカがいて調理をしている。

しかし・・・すずめの不安はおさまらない。

飾られた写真を求めるすずめ。

ホールでの記念写真。

カルテットの雄姿・・・。

間もなく二階からマキが降りてくる。

すずめは安堵して微笑む。

よかった・・・夢ではなかった・・・私たちは大きなホールでコンサートをしたのだ。

カルテットは冬を乗り切ったのである。

「ごはんできたよ」

「は~い」

すずめとマキは唱和する。

おかずは唐揚だった。

小皿にレモンをとるすずめとツカサ。

しかし・・・ユタカは二人のパセリに対する態度を咎めだす。

「見て・・・これは何?」

「パセリ・・・」

「あまり好きではないので」

「・・・好き嫌いの問題じゃないのです」

お父さんの言いたいことを代弁するお母さんのように囁くマキ。

「パセリ・・・いるでしょう・・・彩りを添えているでしょう」

「・・・どうすればよかったんですか」

「サンキュー・・・パセリ」と囁くマキ。

「そうです・・・サンキュー・・・パセリ」

「あ・・・」

「あ・・・」

「パセリいましたね」

「パセリ綺麗ですね」

「センキューパセリ」

「そう・・・それでよろしい」

しかし・・・高圧的な父親に耐えきれずはしゃぎ出す末の娘のように・・・すずめは唐揚にレモンをかけまくるのだった。

「え・・・なにするの・・・謀反なの・・・革命なの・・・テロなの」

「いえーい」

お行儀の悪いのがキリギリスファミリーの嗜みなのである。

軽井沢に春が来た。

「熱海・・・」

「花火大会の演奏なんて・・・どうなの」

「聞こえるのかしら」

「町長が金色夜叉を長々と」

「それは火花」

「とにかく・・・初めての遠征ですから」

「行こう・・・カルテット」

別荘は売りに出ているが買い手はまだつかない。

カルテット車を・・・リスが見送った。

カルテットはドライブを楽しむ。

アリスもリスも可愛いし、レモンとパセリは唐揚にかかせない、コーヒーにミルクも悪くない、乙女もいつか死ぬし乙女でなくなってからでも死ぬ、そして白黒つけないグレーだって楽しめるのが大人というものだ。

しかし・・・ガソリンの切れた車がエンストすることは間違いなし。

たちまち・・・迷い出す冒険者たち。

砂浜をパーティーは右往左往する。

「あっちですね」

「いや・・・こっちでした」

「迷ったね」

「こんな見晴らしのいいところで」

すずめは笑いをこらえきれない。

「すずめちゃん・・・どうして笑っているの」

「急ぎましょう・・・間に合わないかもしれない」

「みぞみぞしてきました」

カルテットを見守るものは・・・寄せては返す波・・・。

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2017年3月21日 (火)

海の彼方から来た友達(木村拓哉)

男二人に女一人の三角関係からは「友情」が生じる場合がある。

もちろん・・・男と女の友情の場合もあるが・・・基本的には男と男の友情である。

ガールズトークに代表される「女たちの友情」がもてはやされる時代だが・・・実は男性同士の友情は・・・同性愛の場合も含めて・・・普遍的なテーマなのである。

シェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」でも有名なガイウス・ユリウス・カエサルの「ブルータス、お前もか」というつぶやきは男同士の友情が前提なのである。友達だからこそ裏切られたショックは大きいのだ。

弱肉強食が強調される時代に・・・男同士の友情は成立しにくいわけである。

男同士はまず敵対関係が前提という哀しい今日この頃なのだ。

そこに激しく斬り込んだドラマだった。

終わってみれば・・・二人の男が篤い友情を確かめあう話だったのである。

もちろん・・・木村拓哉(44歳)・・・浅野忠信(43歳)・・・共に十一月生れというキャスティングなのだから・・・それはあらかじめ一目瞭然のことだったのだ。

たとえ・・・一光が深冬をどんなに愛していようと・・・壮大との友情の方が大事に決まっているのだった。

で、『A   LIFE~愛しき人~・最終回(全10話)』(TBSテレビ20170319PM9~)脚本・橋部敦子、演出・平川雄一朗を見た。男の子はポケットに手を入れたがるものである。母親にとってそれは面白くないことだ。ポケットに手を入れていては転んだ時に危険だからである。礼儀を重んじる人々の一部にはポケットに入れた手を不遜と感じるものもいるだろう。ポケットの中で手が何か危険なものを握っていることを恐れる人もいる。そのような白眼視を乗り越えても男の子はポケットに手を入れるのだ。何故なら・・・そこにポケットがあるからである。

なにしろ・・・ポケットの中には目に見えないビスケットが入っているのだから。

だから・・・男たるものは・・・大人になってもポケットに手をつっこむのが基本である。

「今すぐ・・・この病院を出ていきたまえ」

義理の息子に裏切られた気持ちでいっぱいの壇上記念病院々長・虎之助(柄本明)だった。

壮大(浅野忠信)に友達として裏切られた気がしている外科部長・羽村圭吾(及川光博)は告発する。

「君は壇上病院を乗っ取る理由を言った・・・手に入らないなら無くしてしまえばいいって」

壮大に愛人として裏切られたも同然の元顧問弁護士・榊原実梨(菜々緒)も断罪する。

「奥様の手術が失敗して死ねばいいっておっしゃってましたよね?」

「え・・・」

榊原弁護士の言葉に仰天する一同。

「いや・・・それは違うよ」と壮大。

「そうだ・・・必死にオペの準備をしていた」と壮大を庇う沖田一光(木村拓哉)・・・。

壮大は深冬を見る。

もちろん・・・深冬は・・・榊原弁護士の言葉を鵜呑みにしたりはしていない。

深冬は・・・壮大を信じ・・・手を差し伸べる。

だからこそ・・・壮大は・・・もはやその場にいたたまれないのである。

壮大は言葉を失い・・・部屋から退場した。

そんな壮大を追いかけるのは・・・一光なのである。

「壮大・・・待てよ」

「・・・」

「どこへいくつもりだ」

「出てけって言われたんだ・・・この病院を出ていくよ」

「深冬のオペ・・・どうすんだよ」

「お前がやれよ」

「本気で言ってんのか」

「さっきの話を聞いてただろう」

「・・・自分で救うって言ったろ」

「深冬も・・・院長も・・・み~んな・・・お前がいいって言ってんだよ・・・俺がお前だったら嬉しいよ・・・お前だって・・・俺の事笑ってたんだろう」

「じゃあ・・・何で深冬と抱き合ってたんだよ」

「・・・あれは違うよ」

「何が違うんだよ・・・もう誰も俺の事なんか必要としてない」

「そんな事ねえよ」

「カズ・・・お前に俺の気持ちわかるか・・・分からないよな」

「・・・」

立ち去る壮大の背中を見つめる一光である。

一光には壮大の気持ちがわからない・・・。

深冬と結婚して愛娘・莉菜(竹野谷咲)まで儲けた壮大は・・・一体何が不満なのだ・・・。

一光は・・・うらやましくてうらやましくて泣きたい気持ちだったのに・・・。

馬鹿じゃないのか・・・と思う他ないのだった。

榊原弁護士は・・・壇上父娘に副院長室の壁の穴を見せた。

「副院長の心にも・・・穴が開いていたんです」

「・・・」

外科部長は赤木(ちすん)やその他のドクターたちに・・・副院長の解任を伝える。

「僕も・・・この病院を辞めます」

「え・・・」

「結果的に・・・友達を売ったことになるからね・・・最低限の責任はとらないと」

一光は外科部長に問わずにはいられない。

「深冬先生のオペの前に・・・なぜ・・・あんなことを」

「・・・あの状態で・・・彼にオペをさせて・・・大丈夫だったと思うかい」

「・・・」

「君が来てから・・・彼は壊れてしまった・・・放ってはおけないよ・・・友達だからね」

壮大は音信不通になってしまった。

残された一光は予定通りに深冬の手術に挑むしかなかった。

手術の予定日は迫っていた。

ナース柴田(木村文乃)と井川颯太(松山ケンイチ)は一光に寄り添う。

「もう・・・七万回を越えてますね」

「え・・・そんなに」

「手術が遅れた分・・・結紮の練習は積めた・・・」

「どんなことにも・・・いい面と悪い面がありますよ」

「副院長と連絡は・・・」

「電話にもでないし・・・メールにも応答はない・・・」

壮大は・・・実家の鈴木医院に戻っていた。

すでに閉院され人気のない実家に一人・・・。

壮大に百点満点を求めた父親はすでに他界していた。

一光は緊張していた。

深冬を助ける自信が持てないのである。

もしも・・・自分がのこのこと帰国しなければ・・・院長は穏やかに死に・・・壮大と深冬は・・・残された時間を・・・仲睦まじく過ごしたのかもしれない。

そんな思いさえ湧き出る。

一光は救いを求めて一心(田中泯)の元へと帰る。

「いらっしゃい・・・なんだ・・・お前か」

「腹減った」

「しょうがねえな」

一心は寿司を握った。

「美味・・・」

「当たり前だろう・・・」

「無理すんなよ」

「お前がいつまでたっても半人前だからだよ」

「俺はいつになったら一人前になれんだよ」

「お前が手術してくれて・・・俺が寿司を握れるようになって・・・それをお前が食ってる・・・ありがてえことじゃねえか」

「・・・」

親馬鹿である。

一心の心意気が・・・一光の心をほぐす。

手術当日である。

「緊張してる・・・」

「ちょっとね・・・」

「緊張してるの」

「大丈夫」

一光は深冬に医師として微笑んだ。

颯太は一光を手術室へと送り出した。

「アシストバイパス併用頭蓋内腫瘍摘出術を行います」

出血後の深冬の腫瘍は三つに分離していた。

バイパス手術によって視野を確保し側頭開頭(サブ テンポラルアプローチ)によって腫瘍を摘出する手順である。

ドクターたちはモニターで経緯を見守るのだった。

「全ての神経繊維を温存する方法を取るので・・・術後の後遺症は一切想定していません」

100%を目指すことを宣言する一光・・・。

バイパスする血管の吻合は無事に終了する。

「さすがだ・・・」

「細いね・・・」

「心臓の血管の5分の1の太さだから」

「1ミリ以下か・・・」

ICG(蛍光血管撮影)を用いて血流部分を観察しながら腫瘍摘出へと移る一光・・・。

「一つ目・・・」

「はい・・・」

「二つ目・・・」

「はい・・・」

「側頭葉が腫脹している」

「最深部の腫瘍・・・見えますか」

「見えない」

モニター前のドクターたちに動揺が広がる。

「沖田先生・・・止まった」

手術室で立ちすくむ一光。

「VEP(視覚誘発電位)波高・・・50になりました」

「無理だ・・・」

「VEP波高・・・40になりました」

「何もできないまま・・・三分過ぎたぞ」とドクタールーム。

「沖田先生」とナース柴田が一光にタイムリミットを告げる。

「すまない・・・閉じるしかない」

一光は最後の腫瘍を取りきれずに手術を終えた。

一光は虎之助に状況を説明する。

「最深部の腫瘍が・・・視野から隠れてしまいました・・・再出血のリスクがありますので・・・脳の腫脹が収まり次第・・・再手術の実施が必要です」

「・・・できるのか」

「・・・」

できるかどうかではなく・・・やらなければ終わりなのだ・・・一光は唇を噛みしめる、

深冬は意識を取り戻した。

「ありがとう」

「腫瘍をとりきれなかった・・・」

「・・・壮大さんは・・・」

「・・・」

一光は・・・深冬の心を悟った。

一光は壮大にメールを送信する。

(腫瘍をとりきれなかった・・・深冬はお前のことを待っている)

颯太は一光を励ます。

「3分の2は取れたんですよね・・・だったら残った3分の1だって・・・」

「専門じゃない人は黙ってて」

颯太を躾けるナース柴田。

「専門じゃないか・・・」

「いえ・・・沖田先生のことじゃありません」

「・・・」

一光は・・・専門医である壮大のアドバイスを切望する。

しかし・・・メールへの応答はない・・・。

入院中の深冬に替わり莉菜の面倒を見ている・・・虎之助の妹である上野豊子(山口美也子)が一光を訪ねてくる。

「もしもの時に・・・莉菜ちゃんに渡して欲しいと・・・深冬から預かったのですけど・・・本当は壮大さんに・・・託したかったんだと思うんです・・・先生の方からお渡しいただけないでしょうか」

「・・・壮大に・・・」

見舞いにやってきた莉菜はむずがる。

「お父さんと一緒に帰る」

「お父さんはお仕事が忙しいのよ・・・」

「・・・」

一光の心は痛むのだった。

家族が帰った後に深冬に会いに行く一光。

「これを・・・預かった・・・」

「・・・沖田先生・・・私が壮大さんでなく・・・沖田先生に手術をお願いしたのは・・・もしもの時のことを考えたからなの・・・」

一光の中で・・・深冬への思いが断ち切れたのは・・・この瞬間だったのかもしれない。

深冬は一光の昔の恋人ではなく・・・壮大の妻であり・・・莉菜の母親だったのである。

一光は・・・古い卒業名簿を取り出した。

壮大の実家の住所をうろ覚えだったらしい。

「ああ・・・確か・・・あの辺だったよな・・・」

訪ねようと思えば・・・いつでも訪ねられたのだ。

壮大はそこにいるはずだと確信している一光。

しかし・・・まだ・・・どこかに・・・深冬に対する未練があったのかもしれない。

あるいは壮大に対する対抗意識が・・・。

しかし・・・もはやそんな場合ではなかった。

患者を助けるために・・・一途一心あるのみなのである。

「やはり・・・ここにいたのか・・・なにしてんだよ」

「お前こそ・・・何しに来た」

「深冬は・・・お前のオペでもしものことがあったら・・・莉菜ちゃんとお前の仲がこじれるんじゃないかって・・・心配して・・・俺を指名したんだよ」

「そんな肝心なこと・・・なんで俺じゃなく・・・お前に話すんだよ」

「あの時・・・話そうとしてたじゃないか」

「・・・俺はいつだって必要とされてないんだ・・・子供の頃からいつだってそうだ・・・お前はいいよな・・・みんなから愛されて・・・いつも必要とされてた・・・」

「おい・・・それは俺のセリフだろう・・・お前・・・俺の気持ちがわかるかって・・・俺に聞いたよな・・・お前には俺の気持ちがわかるのかよ・・・俺がどれだけお前のことをうらやましいと思ってるか・・・お前は昔から何でも俺より上手にできるし・・・その上・・・俺より何倍も努力家で・・・医師になってからだって・・・お前は俺にとって・・・ずっと雲の上の存在だった・・・シアトルに行ったのだって・・・ お前に追いやられたからじゃない・・・お前に追いつきたかったからだ・・・学歴もコネもない・・・俺には何もなかったから・・・深冬の事だって大病院の娘だし・・・将来の事を考えると自信が無かったんだよ・・・だから逃げたんだ」

「・・・」

「お前に価値がないなんて・・・お前だけが言ってることじゃないか」

「・・・」

「俺から見たら・・・お前なんて百点満点で百二十点だよ・・・だけど・・・俺だってシアトルに行ってなんとか・・・合格点とったかなって・・・ようやく・・・ギリギリでだよ・・・やっとだよ・・・そんな感じなんだよ」

「・・・」

「再手術は三日後だ・・・彼女はお前を待ってる・・・彼女を救うには・・・お前が必要なんだよ」

壮大は・・・去って行く・・・一光の姿を見つめた。

再手術当日。

一光は・・・友を待っていた。

開始時刻は迫っている。

もちろん・・・壮大はやってくる。

一光の心は喜びに満ちた。

我が良き友よ・・・である。

「壮大・・・」

「カズ・・・俺の気持ちを見せてやるよ」

一光は壮大を抱きしめる。

壮大は一光の背中を撫でた。

「三条さん・・・術衣をもう一着」

出番を確保したナース三条千花(咲坂実杏)は輝く笑顔で応じる。

「準備出来てます」

モニターで見守るドクターたちはどよめく。

「副院長・・・」

「残存腫瘍摘出術を開始します」

一光と壮大の負ける気がしないコンビ結成である。

「浅側頭動脈のバイパス手術から始めます」

一光の主導によるパイパス手術は滞りなく進む。

「パイパスペイテンシー(開通)に問題なし」

一光は主導権を壮大に渡す。

「それじゃ・・・残存腫瘍をとるよ・・・まず・・・左から行くか・・・右から行くか・・・決めるよ」

「見えますか」

「外側脊髄視床路が見えないな・・・錐体路も見えない」

「牽引するか」

「じゃ・・・尾頭から」

「尾頭から」

「ゆっくりだ・・・見えないな・・・頭側」

「頭側・・・」

「見えない・・・滑車神経側・・・」

「滑車神経」

「気をつけろ・・・すぐ錐体路だ」

「わかってる」

「みえてきた・・・これだ・・・まだ吸引するな」

「牽引限界です」

「剥離できそうだ・・・はがれてきた・・・いいぞ・・・」

「・・・吸引しますか」

「まだだ・・・はい・・吸引して」

「吸引します」

「とれたね」

「とれたとれた」

ナース柴田は摘出された腫瘍を受け取る。

「とれました」

モニタールームの外科部長。

「この二人・・・最強だね」

院長室の虎之助は腰を抜かしていた。

壮大は・・・「ありがとう」と言い残し・・・手術室を退出する。

「面倒くさい人ですね・・・」とナース柴田は印象を述べる。

一光は頷いて壮大を追いかけた。

「俺一人じゃ・・・厳しかったよ」

「別にお前を助けるためにやったわけじゃないぜ」

「・・・」

「・・・」

「だけど・・・お前は最高だよ・・・外科医として」

二人は視線を交わした。

深冬は意識を回復する。

「神経をどこも傷つけずに・・・腫瘍を全部取りきれた」と一光。

深冬は微笑む。

「壮大と一緒にオペをした・・・あいつは・・・誰よりも深冬のことを大切に思ってる・・・だから・・・大丈夫」

一光は一心におねだりをした。

「また・・・ちょっと家をあけるよ」

「お前が家にいたことなんてないだろう」

「親父のことは壮大に頼んであるから・・・なんかあったら・・・我慢なんかしないで病院に行ってくれ」

「・・・・」

一心は鯛茶漬けを振る舞った。

「美味・・・」

占領していたドクタールームを整理する一光。

手伝うナース柴田。

「柴田さん・・・本当にありがとう・・・結構・・・プレッシャーだったでしょう」

「いえ・・・私・・・沖田先生とオペしている時の自分が一番好きですから」

「沖田先生・・・シアトルに戻るんですか・・・」と颯太。

「うん・・・」

一光は・・・ナース柴田を手放すのは惜しいと少し考える。

しかし・・・ナース柴田は先手を打つのだった。

「この病院には私に出来る事がまだまだ沢山あるので・・・私はここに残ります・・・また一緒にオペ出来る日を楽しみにしています」

「私事ではありますが・・・オレも留学を視野に入れる事にしました」と颯太。

「へえ・・・」

「修行をして・・・それから経営者としての勉強もします」

「どっちもか」

「医者としても経営者としても理想の病院を作ります」

「理想の病院って・・・」

「医師が患者のために全力を尽くせる病院です」

「なるほど・・・」

「だから・・・柴田さん・・・オレについてきてくれませんか」

「その手をお放し・・・」

「・・・はい」

一光は微笑んだ。

医師としては一人前だが・・・男として・・・まだまだな一光なのである。

深冬の病室に壮大が姿を見せる。

「深冬・・・」

「壮大さん・・・」

深冬は手を差し伸べる。

その手にしがみつく壮大。

壮大の両眼からあふれる涙・・・。

二人の姿に・・・院長は引退を決意する。

壮大は外科部長を説得した。

「副院長をお願いできるかな・・・」

「え・・・」

「俺が・・・明日から・・・院長だ」

「どうして」

「友達じゃないか」

「君に服従はしないけど・・・いいのかな」

「友達だからな・・・」

一光は旅立った・・・。

深冬は回復し・・・莉菜と散歩に出かけるまでになった。

「ねえ・・・ママ・・・海の向こうには何があるの」

「いろいろなものがあるわよ・・・そして素晴らしい人もいるの」

「本当・・・」

「見てみる?」

深冬は莉菜を抱き抱える。

「わあ・・・広い・・・お船が見えるよ」

・・・榊原弁護士は外科部長のアドバイスに従った。

「たとえ・・・誰かに裏切られても・・・素直な気持ちで前を向くしか・・・結局・・・出来ないんじゃないのかな・・・友人として・・・君に言えることはそれだけだね」

同じ男を愛した二人だった。

榊原弁護士は父親(高木渉)の職場を訪ねた。

榊原達夫は笑顔を見せた。

父の笑顔に・・・娘は笑みを返した。

シアトルの一光は今日も執刀医として手術室にいる。

職人の道に終わりはないのである。

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Alife010ごっこガーデン。愛と宿命の廃病院セット。

アンナいや~ん。ワンチャンスあったのは壮大だったのぴょ~ん。ナース柴田さんにもチャンスはあったのに・・・恋愛下手のドクター沖田設定だったのでしたぴょん。 澱んだ親友の心をひっかきまわして風のように去って行ったけど・・・ドクター沖田はアンナの心も奪っていったのぴょんぴょんぴょ~ん。 病気にならなかったら・・・深冬はよろめいたのでしょうか・・・それは誰にもわからない・・・いや・・・莉菜ちゃんいるからな・・・でも・・・榊原弁護士との一件がアレなので・・・ないこともないのかなあ・・・人の心も・・・運命も・・・ちょっとしたことで大きく変わる・・・そんな気がした最終回なのでした・・・そして・・・余韻・・・また余韻・・・じいや・・・お寿司握って~

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2017年3月20日 (月)

永禄五年、松平元康・織田信長同盟す(菜々緒)

寛永元年(1624年)、松下常慶(安綱)は六十七歳で死んだと言われている。

逆算すると永禄元年(1558年)生れであり・・・井伊直親が暗殺される永禄五年(1563年)十二月には数えで五歳である。

念のため・・・。

もちろん・・・永禄年間の遠江のあれやこれやは謎に包まれているので時空を越えたいろいろなことが起きうるわけである。

石川数正は天文二年(1533年)生れで永禄五年には三十路であるが・・・天文十八年(1549年)に松平元康が今川家の人質になってから近侍しているために・・・十年以上、駿府ににいて・・・夫人となった瀬名たちの事情にも通じていたわけである。

永禄五年(1562年)二月、元康が三河国上ノ郷城を攻め、鵜殿長照を討ち取り、長照の子である氏長、氏次兄弟を捕虜とすると元康妻子との人質交換の使者として数正が選ばれたのはそのような経緯がある。

元康の物語ではないので・・・織田信長との清州同盟が描かれないのはいいとして・・・その結果、織田方だった久松俊勝に嫁いでいた元康の実母・於大の方が松平家の奥の事に影響力を振るうようになったことは描いた方が良かった気がする。

今川系の嫁と・・・織田系の姑の軋轢が・・・瀬名母子の別居生活の理由だからである。

正室と嫡男を自害させるという「徳川家康」の暗い影の発端なのである。

戦塵渦巻く三河遠江国境を越えて次郎法師が右往左往するのはかなり笑えるとしても。

愛する男の死後・・・井伊谷のわがまま姫がどのように変貌するのか・・・不気味である。

で、『おんな城主  直虎・第11回』(NHK総合20170319PM8~)脚本・森下佳子、演出・渡辺一貴を見た。例によってシナリオに沿ったレビューはikasama4様を推奨します。元康が碁盤を戦略地図に見立てて支配の構想を練るというのはなかなかに鬼気迫りますな。次郎法師が岡崎城外の惣持尼寺の門をたたき「私の愛した人が殺されちゃうの・・・瀬名・・・ここをあけろ」というのも同様にホラーと考えればそれなりに笑えるのでございますよね。駿河国駿府城から遠江国龍譚寺、そして三河国岡崎城へと・・・次郎法師が三国を突破していく冒険活劇にすればかなりワクワクいたしますけどねえ。なにしろ・・・桶狭間の合戦直後の・・・ここは戦国時代真っ只中なのでございますから。偽物元康による奇想天外な謀略はなかなかにドラマチックですが・・・そこまで絵空事をするなら・・・もう少し次郎法師がくのいちでもよかったような気がします。出番は多いのですが・・・次郎法師は凄いというよりもやることなすこと裏目に出てるというところが・・・「白夜行」のヒロインと同じじゃないかとも思う今日この頃です。まあ・・・どうしても戦国三角関係ラブロマンスを描きたいなら・・・しょうがないなあ・・・とため息をつくしかないのでございます。

Naotora011 永禄五年(1562年)正月、松平元康は伯父・水野信元の仲介で織田信長と同盟する。二月、松平元康は実母の夫・久松俊勝と共に三河国上ノ郷城を攻め、鵜殿長照を戦死させ、長照の子・氏長・氏次兄弟は元康の捕虜とする。三月、石川数正が氏長・氏次兄弟と元康の正室・瀬名姫と嫡男・竹千代そして長女・亀姫の人質交換に成功。娘婿の離反の責を問われ、関口親永は正室とともに自害。瀬名姫母子は岡崎城外の惣持尼寺に隠遁。元康の異父弟・松平康元が上ノ郷城主となる。元康の叔父・水野忠重が鷲塚城主となる。義理の叔父である酒井忠次が元康の家老となる。吉良義昭の兄・義安が元康に臣従。美濃国大御堂城主の竹中重元が死去し、重治が相続。この頃、もしくは十二月に今川氏真に謀反を疑われた井伊直親は弁明のために駿府に召喚される。一説によれば家老・小野政次が疑いが晴れたと伝えたために召喚に応じたとされる。直親はこの道中、氏真の命令に従った掛川城主・朝比奈泰朝の軍勢に包囲され討死した。

今川氏より松平元康が独立し、三河国内の今川勢力を駆逐し始めた反乱は遠江国の国人領主たちにも波及していた。

三河国の今川勢は吉田城の小原鎮実を残すのみである。今川家当主の氏真は臣下の離反を抑えるために画策し・・・遠江国内には疑心暗鬼が横行する。

桶狭間の合戦で総領家の井伊直盛を失った井伊家でも求心力が低下し、直盛の遺言により家老となった分家の中野家と直盛の養子・直親の妻の里である奥山家の間に確執が生じている。

義元の元で緩やかに進行していた井伊家の分断が氏真によって強引に推進され・・・結果として今川家の遠江支配は崩壊していくのである。

元康の放った伊賀の忍びたちは遠江国をゆっくりと蝕み始めていた。

曳馬城の飯尾連竜、二俣城の松井宗恒、犬居城の天野景泰らの動静は定かではない。

氏真は二俣城に鵜殿長照の遺児である氏長を送り込んだ。井伊谷の西方の奥山は天野景貫に与えられていたが・・・東の天野本家と井伊を挟撃する姿勢を見せる。曳馬城の飯尾連竜の正室・お田鶴の方は長照の妹とされるが・・・その素性には諸説がある。義元の養女とされた関口親永の妻が井伊直平の娘であったように・・・永禄期の遠江国は謎に包まれているのである。

瀬名とお田鶴の方は姉妹だったという説もあり・・・そうなればお田鶴の方もまた直平の孫ということになる。

戦国時代には同族相討つ悲劇は珍しくないが・・・義元の戦略を踏襲した氏真の国人領主の分断策は完全に裏目に出る。

家臣に家臣を討たせる戦略により・・・遠江国には今川家の臣下がいなくなってしまうのである。

元康は忍びを使い・・・箍の緩んだ小領主たちに餌を撒いていくのである。

遠江国頭陀寺城主の松下氏は秋葉権現の修験者しのびである。

当主の松下嘉兵衛之綱の妻は松下連昌の娘である。

之綱の父・長則は槍術の達人だったと言われる。

松下連昌と松下長則はどちらが本家でどちらが分家か定かでない同族なのである。

松下家には早くから織田家の手が入っていた。

織田家の足軽の子息である日吉丸が奉公に入っていたのは偶然ではないのである。

修験者しのびとして松下連昌の子・常慶安綱が頭角を現すのは間もなくのことであった。

信長と同盟を結んだ元康は・・・伊賀の忍び・服部家と結び・・・忍びの組織化を進めていた。

織田家から松下家を引き継ぎ・・・元康は遠江国の忍び組織を拡充する。

忍びたちは・・・芸を売りにし・・・各地を放浪するものもいるが・・・土着して・・・草となるものもいる。

松下家は双方の色合いを持った忍びの一族だった。

遠江には他に秦氏の出自を持つ勝間田の一族がある。

秦氏の忍びは聖徳太子の時代にはすでに発生している。

伊賀の服部家もまた・・・その末裔なのである。

勝間田の一族からは武田信玄の配下となった小幡虎盛や・・・井伊直親を信濃国伊那郡松源寺に落ちのびさせた今村藤七郎正実が出る。

本来・・・井伊氏は天皇の忍びの一族である。

井伊介として遠江国の忍びを総べていたものが・・・今は国人領主として・・・忍び属性を薄れさせているのである。

松下の忍びも・・・勝間田の忍びも・・・かってはその支配下にあったのである。

二俣城の松井一族も・・・松下の井伊の名を残す。

曳馬城の飯尾一族も・・・井伊の緒なのである。

やがて・・・譜代ではない井伊直政が・・・徳川四天王の一人として名を挙げるのは・・・遠江から信濃、甲斐、駿河に広がる井伊介ネットワークを再構築したからに他ならない。

くのいち次郎法師の物語は・・・その基礎を築く話なのである。

氏真に欺かれ・・・命を落す直親は・・・その捨て駒に過ぎないのだった。

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2017年3月19日 (日)

スーパーマンを止めないで(小泉今日子)

自宅モードの円子が特にブスなわけではないが・・・バス旅行中のおでかけモードの円子はものすごく美人である。

女優魂だな!

つまり・・・自宅モードの時の円子は・・・アイドルらしさを消して子育て中の専業主婦なのである。

それを全身全霊で演じているわけだ。

小泉今日子の凄みだよな・・・。

51歳なんだぜ・・・。

40代後半からの「最後から二番目の恋」~「あまちゃん」~「続・最後から二番目の恋」のたたみかけから一呼吸置いてのコレなのである。

加齢・・・じゃない華麗だ。

アイドル女優として・・・円熟の極みだ。

あなたに会えてよかった・・・。

で、『スーパーサラリーマン左江内氏・最終回(全10話)』(日本テレビ20170318PM9~)原作・藤子・F・不二雄、脚本・演出・福田雄一を見た。なぜか・・・前回↗10.5%の*4.2%上げである。もう・・・視聴率は完全に終わってるんじゃないか。統計的な目安として・・・。まあ・・・それは裏番組との兼ね合いと言われればそれまでだけどな。だって毎週、面白いじゃんか。とてもじゃないが見たり見なかったりできるコンテンツじゃないだろう・・・いやいやいや・・・お前の感覚でものを言うなよ。

二週連続のフジコ建設営業3課からのスタートである。

簑島課長(高橋克実)の娘がインフルエンザを発症し・・・接待ゴルフに行けなくなったので・・・ゴルフ未経験の左江内係長(堤真一)に白羽の矢がたつ。

池杉照士(賀来賢人)も別件で行けないらしい。

ここで・・・三人は「接待ゴルフ」の基礎講座を行う。

「ナイスショ~」

「ナイト~」

「夜でも騎士でもないからショットだから」

「池ポチャ」

「トレビの泉に入ったからには満願成就ですな」

「すごい」

「惜しくものらず」

「淡谷のり子」

「なるほど」

「そこそこの距離」

「OK牧場」

「・・・」

ガッツ石松ネタに冷たい対応をするのは堤幸彦ネタだからだな。

先達者に敬意を表しつつ蔑むのか・・・。

蒲田みちる(早見あかり)と下山えり(富山えり子)は冷たく見守るのだった。

帰宅した左江内氏を居間で待つ円子(小泉今日子)、はね子(島崎遥香)、そして、もや夫(横山歩)・・・。

「明日・・・新作ゲームマグナムモンスターエースが発売になります」

「朝から並ばないと買えないくらいの人気なんだ」

「並ぶよね」

「無理なんだ・・・明日、接待ゴルフで」

「いいよ・・・パパ・・・ママ・・・仕事の方が大切だよ・・・ゲームが買えなくて・・・話題に乗り遅れて・・・仲間はずれにされて・・・やがていじめにあっても・・・我慢するよ」

「いじめはともかく・・・我慢は大切だ・・・ウチの家計は浪費気味だし」

「何言ってんの・・・お金を使って経済を活性化するのは・・・大切なことなのよ・・・トランプに負けない強い日本のために」

「えええ」

先週からトランプ・ブームらしい。

「ゴルフ何時から・・・」

「十時だけど・・・」

「電気店は・・・九時からです」

移動時間は・・・と言いかけれてスーパーマンになればなんとかなると口ごもる左江内氏。

夫婦の寝室で・・・。

「初めてやったら・・・はまったなんてやめてよね」

「仕事なんだから」

「土日に家族サービスしないで・・・仕事なんて許せない」

そこへはね子が登場。

「よく考えてみたんだけど・・・行列できてると思うよ」

「え」

「今から並ばないと・・・ゴルフに間に合わなくなる」

「ええっ」

弟思いの姉であり父親思いの娘である・・・。

ゴルフバックを担いで出動する左江内氏だった。

しかし・・・すでにかなりの行列が出来ているのだった。

午前九時・・・店頭販売が始るが・・・行列は遅々として進まない。

ついに制限時間いっぱいとなり・・・ゲームを購入できないままゴルフ場に向う左江内氏。

はじめてのゴルフに・・・接待相手も呆れる下手さを発揮した左江内氏だが・・・ついにスーパーマンの力と忘却光線を利用して・・・なんとか接待を乗り切るのだった。

樹木もなぎ倒すスーパーショットを放ち、ゴルフボールより早く飛んでカップインである。

接待終了後・・・電気店めぐりをする左江内氏・・・。

しかし・・・各店舗は軒並み売り切れなのである。

営業時間の終了が迫り・・・あせる左江内氏。

その時・・・およびがかかる。

「助けに行ってたら・・・お店が閉まってしまう・・・」

一瞬の躊躇である。

マンションのベランダから落ちかける幼児・・・母が手を掴んでいるが・・・ついに力尽きる。

間一髪・・・到着した左江内氏が手を伸ばすが・・・届かない。

子供は墜落してしまうのだった。

「すぐに病院に連れて行きます」

子供を搬送した左江内氏は・・・着替えて手術室に向う。

「あの・・・お子さんの容体は・・・」

「お医者様は・・・予断を許さないと・・・あなた・・・どなたですか」

「お子さんが落ちるところを見ていたものです」

「・・・心配して来てくださったのですね」

「・・・はあ」

胸に重い気持ちを抱えて帰宅する左江内氏だった。

「ゲーム買えた?」

「買えなかった・・・」

「話題に乗り遅れて・・・仲間はずれにされて・・・いじめにあうのか・・・」

「悲劇ね」

「ゲームなんてどうだっていいんだよ・・・そんなの悲劇でもなんでもないんだよ」

目の前で起った悲劇に押しつぶされる左江内氏だった。

気持ちを抑えきれず・・・家を飛び出すのである。

「え・・・」

「パパが本気で怒ったの初めて見た」

「・・・ぶっとばす」

戸惑う・・・左江内氏の家族たち・・・。

夜の街を彷徨う左江内氏の元へ謎の老人(笹野高史)が現れる。

「深刻そうだね」

「もう限界だ・・・やはり返却させてくれ・・・このスーパースーツを」

「これまで頑張ってきたじゃないか」

「昔から嫌なことでも・・・やってるうちに馴染んじゃう性質だから・・・でも・・・もう無理だ・・・仕事も家庭も・・・ヒーローの仕事もなんて・・・背負いきれない・・・今日も・・・助けられる命を・・・もう嫌なんだ・・・全ての責任を放棄したい」

「わかった・・・もう諦めるよ・・・明日からスーパーマンは他の人にやってもらう」

「本当に・・・」

「確認しておくがもう一度これが欲しいと言っても・・・もう取り返せないぞ・・・鉄の掟だ」

「大丈夫・・・そんなこと絶対に思わない」

スーツ・・・そして変身マークを返却する左江内氏・・・。

心はたちまち軽くなる。

その勢いで痛飲する左江内氏だった。

路上で目を覚ますと・・・なぜか・・出勤モードが用意されている。

本来・・・日曜日だが・・・すでに左江内氏は悪夢の世界に彷徨いこんでいるのである。

「よくわからないが・・・ラッキーだ」

晴々とした気分で出勤した左江内氏だったが・・・会社には・・・米倉係長(佐藤二朗)が存在する。

「どちら様でしょうか」と他人行儀な蒲田・・・。

「え」

「うわ・・・お酒臭い」

「なんだよ・・・蒲田くん」

「え・・・どうして私の名前を・・・」

「君は誰だ」と課長。

「いやだな・・・課長・・・係長の左江内ですよ」

「うちの係長は米倉くんだが・・・」

「え・・・」

「もう一度・・・ロビーで行き先を確認した方がよろしいでしょう」

「ええっ」

ランチタイム・・・物影から覗くと米倉係長は弁当のことでからかわれている。

「どうして・・・茶色いんですか」

「これは・・・僕の好きなもので」

「あ・・・御自分で作ってるんですね」

「奥さん・・・鬼嫁ですもんね」

「えええ」

会社の居場所を失った左江内氏・・・。

帰宅すると・・・円子もはね子も他人を見る目で・・・左江内氏を見る。

「君はだれなんだ・・・」

「お前は・・・」

家にも米倉がいるのだった。

「警察を呼ぶぞ」

あわてて退散する左江内氏・・・家の表札も「米倉」になっている。

「お風呂がヌルヌルなんですけど」

「ごめん・・・追い炊きした」

「パパは貧乏症だから」

「加齢臭が溶け込むのよね」

「人をメルトダウンした原子炉みたいに・・・」

「土下座して自分の不甲斐なさをフガフガとわびな」

「加齢臭を湯船に融け込ましてすみませんフガフガ」

左江内氏は米倉に自分の日常を見た。

「あいつの仕業か・・・」

左江内氏は・・・老人を捜し始める。

路上でチンピラたちがサラリーマン相手に暴力をふるっている現場に遭遇する左江内氏。

「やめたまえ」

「なんだと・・・」

左江内氏が暴行されてしまうのだった。

そこへ・・・一人乗りのフライングマシンに乗って・・・キャプテンマンが現れる。

キャプテンマンは屁の力でチンピラたちを撃退するのだった。

「どうも・・・元スーパーマン」

「君が・・・次のスーパーマンなのか」

「それは違うよ・・・」と老人が現れる。

「この人は・・・スーパーマンたちのリーダーだ」

「パーマンのバードマンみたいな」

「また・・・原作者が同じだからって・・・原作が違うと・・・もろもろのアレがね」

「キャプテンマンですねん・・・パーやんでもありまへんで・・・君はダメだったね」

「え」

「僕は君をずっと監視していた」

キャプテンマンの正体は米倉だった。

「そんな・・・あなたになんて会ったことはない」

「それは忘却光線を使ってたから・・・君が知らなくてもお茶の間の皆さんは知っている」

「お茶の間・・・」

「いい線まで行ったんだけどな・・・結局・・・スーパーマンとしての自覚が芽生えなかったね」

「・・・」

「だからといって・・・俺の家族や・・・仕事まで奪うなんて・・・」

「だって・・・君はすべての責任を放棄したいって言ったじゃないか」

「・・・」

「君は・・・一人で気楽な生活をすればいい・・・さぞや・・・快適なことだろう」

キャプテンマンはフライングマシンで飛び去る。

「相変わらず・・・血も涙もないお方だ・・・しかし・・・スーパーマンのリーダーはああでないとつとまらない・・・」と老人。

「・・・」

「じゃあ・・・私もこれで・・・君の替わりを見つけないとならないからね」

老人も去っていく。

失うものがなくなって・・・自由になった左江内氏は・・・拠り所を求めて病院にたどり着いた。

母親が左江内氏に気がつく。

「御蔭様で・・・息子が意識を取り戻しました」

「よかった・・・」

「あ・・・スーパーマン」

「え・・・」

「何を言ってるの」

「この人が僕を病院に運んでくれたんだよ」

「・・・」

「今でも覚えている・・・この加齢臭」

「失礼なことを言ってすみません・・・この子・・・まだ混乱しているようで」

「いいんです」

「これからもがんばってね・・・スーパーマン」

「ありがとう・・・」

あてどなく街を歩く左江内氏はうらぶれた「ホトケ電器」にたどり着く。

「マグナムモンスター一つだけあります」の張り紙に心奪われる左江内氏・・・。

ゲームを買い損ねてすべてを失った男なのである。

「あの・・・マグナムモンスター・・・ありますか」

「あるよ・・・十万円」

「え・・・なんで」

「スチームアイロンと羽毛布団・・・そしてカセットテープがついてくる」

「ドラクエの抱き合せ商法かよ・・・懐かしすぎる・・・」

「いらないのか」

店主はホトケ四号・・・じゃなかった米倉である。

もちろん・・・脚本ワールド的には繋がっている天上世界なのだろう。

「だから・・・高すぎる」

「じゃ・・・ゲームをもう一本」

「最後の一つじゃないのかよ」

電気店のテレビにニュース速報が映る。

「バスに立てこもった男が・・・乗客を人質に・・・」

「円子・・・」

乗客の中に・・・円子がいた。

「バス旅行なんて・・・貧乏人のすることよ・・・」と言っていた円子なのである。

いてもたってもいられずに・・・店を飛び出した左江内氏。

「もしもし・・・私の代わりにスーパーマンにならないかい」

「なるよ」

「また・・・あんたか」

「俺が返せと言ったんじゃない・・・ジジイの方から声をかけてきたんだから・・・鉄の掟に反さないだろう」

「まあね」

「俺はスーパーマンになる」

「その言葉・・・忘れるなよ」

謎の老人は消えた。

存在することに対する責任の所在。

人は皆・・・温もりを求めて・・・温もりに対しての責任を負い・・・自問自答しながら・・・生きて行くものなのだ。

「手に入れた居場所を守るのか・・・そこから逃げ出すのか」

人生とはただそれだけのものなのである。

「大人しくしろ」

「大人しくしてるじゃない」とマイペースの円子。

「ごめんなさい」と円子のママ友の木手夫人(福島マリコ)・・・。

「だまれ・・・」とバスジャック犯(菅田将暉)・・・。

小池警部(ムロツヨシ)と制服警官の刈野(中村倫也)は武装した警官隊とともに指を咥えていた。

そこに飛来するスーパーマン左江内氏・・・。

「なんだ・・・お前・・・」

「妻を助けに来ました」

「パパ・・・」

「ふざけるな」

犯人は発砲するが・・・弾丸を弾き返すスーパースーツである。

「くそ・・・お前の嫁を殺してやる」

「仕方がない・・・いいだろう・・・その嫁はな・・・料理も掃除もしない・・・たまに洗濯だけはするが自分と子供たちの衣料が縮むのが嫌だからだ・・・日頃から私に暴力を振るうし・・・そんな嫁だ・・・遠慮なく殺してくれ」

「ここで生き延びたらマジで殺してやっからな」

「な・・・ひどいだろう・・・だけど顔を撃つのはやめてくれ・・・可愛いので」

「・・・」

「・・・と油断させておいて」

拳銃を奪い「くにゃり」と折り曲げる左江内氏。

「くそ・・・」

犯人はナイフを抜く。

しかし・・・円子の飛び蹴りが炸裂するのだった。

「イケメンだから大目に見てやっていたけど・・・あいつを殴っていいの私だけだから」

「菅田将暉に似てるって言われます」

「全然似てねえし・・・山崎賢人のほうが好きだし」

「あ・・・それは言っちゃダメなやつだな・・・」

「・・・」

「ほら・・・傷ついちゃった・・・君はなんでこんなことを・・・」

「田舎から上京してきたのにゲームが売り切れになってて・・・むしゃくしゃしてたら・・・おかしな仮面をかぶった男の人に拳銃を渡されて・・・勝手に体が動いて」

「ゲームってこれか・・・二つ持ってるから一つあげるよ」

「やった」

ゲームソフトを与えられた犯人は消失した。

「あ・・・そうか・・・これもテストか」

「テストって・・・」

「いや・・・旅行の続きを楽しんで」

左江内氏が下車するとバスは走り出す。

運転手は・・・米倉だった。

左江内氏は忘却光線を作動させた。

「あれ・・・」

長い長いネクタイを引きずって意識を取り戻す小池警部。

「どうして・・・みんな集まってるの」と刈野。

「これは・・・慰安旅行だ」

「え・・・え・・・どこに行くの」

「千葉の秘湯だ・・・」

「わ~い」

「今日まで本当にありがとう・・・これからもよろしく」

「はい・・・」

「い~あん」

「い~あん」

左江内氏は茶色い生姜焼きを調理する。

なるべく焦げていない肉を家族の皿に盛りつけする。

「バスの中でひどい夢を見た・・・」

「どんな夢」

「パパが犯人にママを殺させようとするの」

「ひどいね」

「むかつくからちょっと殴らせろや」

「え」

可愛い嫁に可愛くボコボコにされる左江内氏である。

最後のイチャイチャである。

ニヤニヤするはね子ともや夫だった。

フジコ建設営業3課・・・。

「2課にプレゼンを押しつけられた」と簑島課長。

「くそ・・・むかつく」と蒲田。

「ボイコットしましょう」と池杉。

「やりましょう・・・時間がもったいない」

「え」

「フジコ建設として・・恥ずかしくない仕事を」

「左江内係長・・・冴えてる」

屋上に飛来するキャプテンマン。

「たくましくなったね」

「がんばりますよ・・・前から気になってたっだけど・・・顔が大きすぎて・・・マスクが似合ってないよね」

「え・・・最後の最後でそこ・・・私はね・・・連続ドラマのラストシーンなんて・・・これが初めてなんだよ・・・それなのにそこ」

「ま・・・家庭も仕事も・・・そしてスーパーマンも責任もってやりますよ・・・何しろ・・・選ばれし男なんですから」

「その通り・・・最大公約数的常識を持つあたりさわりのない人・・・超人力を保持しても悪用できない小心者・・・そしてぱっと見が冴えない・・・目立たない存在・・・この条件を満たすものはざらにはいないからね」

「・・・」

そこでおよびがかかる。

「頼んだぞ・・・スーパーマン」

「はい・・・まあ・・・やれる範囲で」

悪と善の境界線は・・・深い霧に覆われて判然とはしない。

しかし・・・そこを適当な感じでひとっ飛びに乗り越える・・・それが正義のヒーローというものなのである。

変わらないものなど何一つない・・・この世界において。

彼らは今日も歯をくいしばる。

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2017年3月18日 (土)

転ばぬ先の滑り止め(深田恭子)

背水の陣を好む人間と保険を好む人間がいる。

退路を断って決戦を挑むことを好むと言う人は「見栄っ張り」で「ええかっこうしい」で「虚栄心が強い」と言えなくもない。

基本的に破滅型である。

一か八かが大好きで・・・勝負に勝つことよりも勝負そのものが好きなのである。

そしてノイローゼになりやすい。

保険を好む人は「次善の策」を準備するし、石橋を叩いて渡る。

つまりBプランがあり、慎重派である。

勝つためには手段を選ばない。

基本的にクールである。

ただし、くよくよしすぎるとノイローゼになる。

どちらが人生を楽しめるのかは・・・意見が分かれるところだろう。

人には向き不向きがあり・・・「ベストを尽くすために後先考えないこと」も成功の秘訣と言えないこともない。

人が家族を作るのは・・・お互いの欠点を補う必要があるからである。

バカな亭主にはよくできた女房が必要なのである。

もちろん・・・よくできた女房を得るためにはバカな亭主になる必要があるわけである。

・・・いやいやいや。

で、『克上受験・最終回(全10話)』(TBSテレビ20170317PM10~)原作・桜井信一、脚本・両沢和幸、演出・福田亮介を見た。脚本的にはややあざといわけである。「すべりどめ」の存在を隠しておく必要は・・・日常生活にはあまりない。しかし・・・ここは「内助の功」の強調として乗り切るのだった。同じ中卒でも桜井信一(阿部サダヲ)がバカで・・・香夏子(深田恭子)が良妻賢母であるという流れは一貫しており・・・最終回の「大逆転」もそこそこスムーズに展開するのだった。

常に狂気を孕んだ阿部サダヲの存在感は不必要なまでに不気味さを醸しだしてしまうのだが・・・常にかわいい深田恭子がそれを中和して・・・成立するドラマなのだった。

そろそろ・・・阿部サダヲには頭のおかしな犯罪者を演じてもらいたいよねえ。

なにしろ・・・「アベサダ」なのである・・・女だったら恐ろしいことをしでかす名前なのだから。

東大生の親は東大生が多いということが統計的にも明らかな時代なのである。

中卒の両親の子供が・・・中学受験をするのはものすごく無謀なことだ。

しかし・・・無謀なことをしないで・・・底辺に甘んじることはものすごく怠惰なことでもある。

学歴社会なのに受験に関心がない両親なんてクソだと激しく結論するこのドラマ。

一部お茶の間の臓腑をえぐるのだった。

佳織(山田美紅羽)の受験番号「277」は・・・合格発表の表示にはなかった・・・。

信一は膝から崩れ落ち・・・立ち上がることができない。

(神も仏もないのかよ)

自分が本気を出せば・・・成し遂げられないことはない・・・という思いこみが木端微塵になったのである。

現実の恐ろしさに腰が抜ける信一だった。

そんな信一に手を差し伸べる・・・佳織。

「お父さん・・・帰ろう」

古典である・・・「いざとなったら男より女の方が強い」という流れ。

桜井父娘の様子から「事態」を察した徳川直康(要潤)と徳川麻里亜(篠川桃音)の父娘はかける言葉がみつからないのだった。

香夏子からの連絡を受け・・・居酒屋「ちゅうぼう」の中卒の仲間たち・・・松尾(若旦那)、竹井(皆川猿時)、梅本(岡田浩暉)、そして杉山(川村陽介)は意気消沈する。

中学受験の先輩である楢崎哲也(風間俊介)も無念さを滲ませる。

帰宅した信一は香夏子に誘導されて入浴するのであった。

背水の陣で戦に挑み・・・惨敗した信一は・・・痺れた頭で・・・娘の行く末を案じる。

「次は・・・高校受験だ・・・また一から勉強だ」

「・・・」

信一に背を向ける佳織。

香夏子はすっかり・・・オヤジギャルになり・・・接待で毎晩帰りが遅くなる。

「もう少し・・・家のことも考えてよ」

「誰が稼いで食わしてやってると思ってんだ」

「・・・」

夜遊びの激しくなった佳織を捜しに行く信一。

佳織はコンビニ前で零点シスターズの河瀬リナ(丁田凛美)と遠山アユミ(吉岡千波)と遊んでいた。

「佳織・・・受験勉強の時間だよ」

「ざけんなよ・・・もう勉強なんてするわけねえだろう」

「そんな」

「とっとと消えろよ・・・お受験クソオヤジ・・・」

「え・・・お受験クソオヤジって・・・」

「みんな・・・そう呼んでるよ」

「ね~」

「ね~」

「佳織~」

涙目で妄想から帰還する浴槽の信一。

明らかなサービス・ミスである。

一夫(小林薫)は祝いの酒にはならなかった特級酒を持って訪れる。

「佳織はどうしてる?」

「帰ってからずっと・・・俺塾に籠っちゃって・・・」

一夫は孫を案じて様子を窺う。

「何をしてるんだ?」

「受験で出た問題・・・もう一度解き直してみたの・・・よくわかった」

「え・・・何がわかったんだ?」

「何がわかってなかったのか」

「・・・」

中卒の三人と中学受験に失敗したものが食卓を囲む。

「ウサギと亀のようにはいかなかったね」

「ああ・・・」

「何の話だ?」

「ウサギと亀の本当のタイトルは油断大敵・・・ウサギたちが亀には用心しろっていう縛めなんだって」

「つまり・・・エリートたちはさ・・・油断しなければ絶対に負けないってことだよな」

「ある程度の努力で勝てるような相手じゃなかった・・・お父さんも私もずっと甘くみてたよね・・・頑張れば良い結果になるって・・・こんなに頑張ってるんだから神様が見放すはずないって」

「でも・・・あれ以上・・・頑張れないよ・・・あれが限界だよ」

信一は弱音を吐き・・・一夫はため息をつく。

「と言うことは・・・一生かかっても・・・俺たちは勝てねえってことか」

「大丈夫だよ・・・相手との距離がわかったからいつかきっと追いつける・・・だからお父さん・・・公立中学に行ってもまた一緒に勉強してくれる?」

中学受験をしたことのない信一に対して実際に挑んだ佳織はたくましく成長を遂げていたのだった。

応援団と選手とでは見える景色が違うのである。

「あ・・・いや・・・それはどうかな・・・中学の勉強は・・・もうお父さんには難しすぎるし・・・そろそろ・・・仕事もしないと・・・」

信一の心はすでに死んでいた。

しかし・・・香夏子には奥の手があったのだ。

「二人とも・・・もうひと頑張りしないとね」

「香夏子・・・そんなこと言ったって」

「みんなには内緒で・・・星の宮女学院の願書を出しておいたの」

「え」

「だって・・・桜庭学園より星の宮女学院の制服がかわいいんだもの」

ノイローゼ状態の信一なら・・・「二番じゃダメなんだ」と怒りだすところだが・・・すでに死んでいるので降伏するしかないのである。

「受けてもいいの?」

「佳織・・・」

「こっちの方が簡単なんだろう」と一夫。

「桜葉学園の次に難しいし・・・」

すでに死んでいるので消極的な信一である。

「大丈夫・・・今度は絶対に受かる」

ニュータイプとして覚醒した佳織だった。

御先真っ暗な信一とは違い・・・すでに先が見通せる佳織なのである。

「香夏子さん・・・ありがとう」と一夫は息子に代わって礼を述べる。

「私は公立でもいいと思ってるんです・・・でも・・・将来・・・佳織にやりたいことができた時・・・学歴がないのが理由でそれができないとしたらかわいそうだなって・・・思うようになって・・・」

「敗者復活戦じゃ・・・金メダルはとれないんだよな」

ウジウジと・・・終わったことに拘る信一。

「手ぶらで帰るわけにはいかないのよ」

「でも・・・桜庭学園を落ちた子たちが・・・たくさん来るし」

「負け犬同志・・・相手にとって不足はないわ」

三位決定戦に向けてモチベーションをあげるため・・・素早く心を切り変える猛者がそこにいた。

三日後・・・星の宮女学院の受験当日・・・。

すでに受験生としての風格さえ感じさせる佳織だった。

「お父さん・・・受験勉強楽しかったね」

「え・・・」

信一は凛々しい娘を眩しく感じるのだった・・・。

星の宮女学院の保護者面談は・・・着席が許されるらしい。

「お父さんの最終学歴が・・・中学卒業となっていますが・・・間違いありませんか」

「はい・・・家庭の事情で・・・そのようになりました・・・だから・・・娘には自分が経験していない世界を知って欲しかったのです」

「塾には行かせず・・・お父様ご自身が教えられたとありますが・・・」

「娘と一緒に中学受験というものを自分で経験してみたかったので」

「おやりになっていかがでしたか」

「一言で申せば・・・とても・・・楽しかったということになります」

合格発表当日・・・素晴らしいインターネットの世界で合格通知を待つ一同。

「ここをクリックしたら・・・合否がわかります」

「早くクリックしろ」

「ここは・・・桜井さんが・・・」

「いや・・・俺には無理だ」

佳織が辛抱できずにクリック!

「やった・・・432番・・・合格」

「万歳」

佳織は・・・信一が願った桜葉学園ではなく・・・自分が行きたいと考えた星の宮女子学院に合格したのであった。

信心深い一夫は・・・早朝のお礼参りに信一を連れ出す。

「何も・・・こんなに朝早く神社に来なくてもいいだろう」

「馬鹿野郎・・・お礼参りは早いに越したことねえんだよ」

「・・・」

「神様・・・私は息子にろくな教育をあたえてやりませんでした・・・しかし・・・息子は孫娘に立派な教育を授けることができました・・・心より御礼申し上げます」

「親父・・・」

「この神社も・・・あちこちガタが来てるんで・・・俺が修繕することにしたよ」

「・・・」

腕に自信がある一夫は身体で礼金を払うつもりらしい。

全国を行脚するシルバー宮大工の誕生である。

佳織の小学校卒業式の当日・・・。

テレビでは・・・「トクガワ開発」の社長・德川直康の退任がニュースになっていた。

海外事業での失敗の責任をとってのことらしい。

学校に押し寄せる報道陣・・・。

明治時代の朝ドラマの主人公のような正装をした小山みどり先生(小芝風花)が一喝する。

「場所柄をわきまえなさい・・・このウジ虫ども」

「・・・」

「大変だな・・・」と信一。

「いや・・・でも・・・うれしいこともあったよ」と直康。

育児ノイローゼで・・・転地療養していた妻(野々すみ花)が快方に向ったらしい。

娘が桜葉学園に合格したことが功を奏したのである。

お嬢様を妻にするのもいろいろと大変なのである。

香夏子は小山みどり先生に礼をする。

「いろいろとアドバイスしてくれてありがとうございました」

「こちらこそ・・・どんな馬鹿げたことのように見えても・・・何かを成し遂げる気持ちの大切さを教えていただいたような気がします」

「えへ」

佳織はライバルと握手をした。

「今度は東大を目指しましょう」

「麻里亜ちゃんがそう言うのなら・・・喜んで」

大森健太郎(藤村真優)は受験しなかった。

「俺は天才だから・・・公立で充分なんだ・・・そしていつか医者になる・・・佳織が病気になったら治してやるよ」

「ありがとう・・・アライフを見たのね」

「まあね」

信一は自分の体験を素晴らしいインターネットの世界で発信した。

これが出版社の目にとまり・・・「下剋上受験」はベストセラーになるのだった。

信一は・・・娘の七光で受験アドバイザーとしてそこそこ活躍している。

信一のトークイベント&サイン会では・・・娘の手紙朗読が見せ場である。

「それでは・・・娘さんからの手紙をお聞きください」と司会者(赤江珠緒)・・・。

「私は中学1年生です・・・みんなにすごいねと言われる学校で・・・全生徒の中で私の家が一番貧乏だと思います・・・でも・・・それで困ったことはまだ一度もありません・・・友達もたくさんできました・・・この間・・・父は本がたくさん売れたと喜んでいました・・・私が大学に行けるほど売れたの?・・・と聞くと・・・大丈夫だと言っていました・・・買ってくれたみなさん・・・本当にありがとうございます」

いろいろと複雑な気持ちになる聴衆たちである。

楢崎が課長に昇進し・・・香夏子は課長補佐になるという話がある。

「あの・・・産休はいただけるのでしょうか」

「え」

桜井夫妻はやることはやっているのだった。

こうして・・・世界は回って行く。

無理を承知で受験しなければそもそも合格できないという話である。

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2017年3月17日 (金)

燃えよ本能寺!(小栗旬)信長協奏曲NOBUNAGA CONCERTO(柴咲コウ)

谷間です。

コンプリートということでは・・・続きは劇場で・・・というテレビが自分の首を絞めるスタイルでありながら・・結局はオンエアするので大丈夫という典型のコレである。

腐ってもテレビなので・・・平均視聴率12.5%の連続ドラマという宣伝をやっておけば・・・そこそこ劇場に客が来るだろうというビジネスである。

どうしてもみたい人は・・・金を払ってでもみるわけである。

そういう商売に文句を言うのは大人げないのだが・・・このブログのポリシーとしては・・・オンエアされないとレビューできないわけである。

で・・・2014年のドラマ(全11話)の最終回が2016年に劇場で映画として公開され・・・2017年オンエアされたわけである。

しかし・・・素晴らしいインターネットの世界では二年くらいのブランクはどうということはないのだった。

で、『信長協奏曲NOBUNAGA CONCERTO・(2016年劇場公開作品)』(フジテレビ20170116PM9~)原作・石井あゆみ、脚本・宇山佳祐(他)、演出・松山博昭を見た。平成の高校生のサブロー(小栗旬)がタイムスリップして瓜二つの織田信長になりすましたのは天文二十年(1551年)で本能寺の変は天正十年(1582年)である。歴史改変物語だとしても・・・ほぼ史実通りに事態が推移するので31年の歳月が経過するかというとそんなことはない。登場人物はほとんど老いる気配がないので・・・ある種のファンタジー空間にサブローは紛れ込んだのである。ちなみに帰蝶(柴咲コウ)は天文四年(1535年)生れなので家康が天下を完全に手中に収めた大坂夏の陣は慶長二十年(1615年)であり・・・もしも帰蝶が存命ならば齢八十になっている。しかし・・・ファンタジー空間なので帰蝶は永遠のアラサーを彷徨うのだった。

なんじゃあこりゃあ・・・とは思うが遊園地のアトラクションに文句を言っても仕方ない。

「ジェット・コースターにジェットエンジンなし」である。

どれだけの時が流れたのか・・・サブローは本願寺との戦いに突入している。

本願寺顕如が三好三人衆(三好長逸・三好政康・岩成友通)や鈴木孫一率いる雑賀衆とともに信長に対して挙兵したのは元亀元年(1570年)のことである。信長の対本願寺戦は天正八年(1580年)に石山を本願寺が退去するまで続く十年戦争である。

しかし・・・ファンタジー世界では一気呵成に合戦が進展していく。

天正四年(1576年)に越中・能登を平定した上杉謙信は越前の織田勢と激突。

天正六年(1578年)には毛利氏に与する播磨国の別所氏が叛旗を翻す。

これらは最後の足利将軍義昭の策謀によるもので・・・関連しているものの前後して起る合戦である。

しかし・・・上杉・毛利・本願寺の同盟として信長を包囲するわけである。

サブローは・・・上杉に柴田勝家(高嶋政宏)、毛利に羽柴秀吉(山田孝之)、本願寺に実は織田信長である明智光秀(小栗旬・二役)を派遣する。

信長の名をサブローに譲った光秀だったが・・・天下統一に向けて家臣に愛され、帰蝶にも妹の市(水原希子)にも愛されているサブローに嫉妬し・・・心に闇を飼う。

信長の股肱の臣である沢彦(でんでん)は「そろそろ・・・すべてを取り戻していいのではないか」と光秀(信長)を唆すのである。

幼い頃に信長によって家族を殺された秀吉は復讐のために密謀を巡らし・・・光秀に信長殺しを唆す。

本願寺に対するために天王寺に砦を構築した光秀は・・・包囲すると見せかけて・・・安土城の信長を急襲しようと考える。

その時、サプローと同じくタイムスリップしてきた松永弾正久秀(古田新太)は安土城に現れた。

「お悔やみをいいにきた」

「え・・・誰か死んだの?」

「天下統一が目前になったら・・・信長は死ぬんだよ」

「え・・・なんで」

「なんでって・・・お前・・・教科書に書いてあるだろう」

「えええ」

「バカだと思っていたが・・・そこまでバカだったとはな・・・」

「俺が・・・死ぬ」

一方・・・市は帰蝶に信長と結婚式をすることを奨める。

「結婚式・・・」

死の予言に茫然とする信長はそれどころではない。

帰蝶の安全を確保するために・・・徳川家康(濱田岳)の城に避難させようと考える信長。

「なぜ・・・私が家康殿のところへ?」

「俺・・・もうすぐ死ぬかもしれないんだ」

「何故・・・そのようなことを・・・」

「俺は・・・未来から来たから・・・これから起ることがわかるんだよ」

「・・・」

一方・・・例によって本願寺に寝返った松永弾正は・・・天王寺砦が手薄になることを顕如に知らせる。

信長を急襲するために砦を出た光秀は本願寺勢に包囲され・・・窮地に陥るのだった。

「くそ・・・松永め・・・」

光秀が信長を殺したところで・・・光秀を殺そうと考えていた秀吉は目算が狂い唇を噛みしめるのだった。

「え・・・ミッチーが・・・ピンチなの・・・」

サブローは何もかも忘れて・・・少ない手勢を引き連れ・・・救援に向うのだった。

いつの間にか・・・無双の武人として成長したサブローは本願寺門徒を殺して殺して殺しまくるのだった。

信長が三千の兵力で一万五千の本願寺勢を撃破する天王寺砦の戦いである。

しかし・・・ファンタジー世界では北陸や関東から・・・配下の武将たちが全員集合し・・・負傷して窮地に陥った信長を救い出すのである。

命を救われた光秀は信長に告げる。

「私は・・・太陽のようなお前が・・・羨ましかったのだ」

「月も大切なんですよ。地球が太陽の周囲を回るように・・・月は地球の周囲を回るのです」

「え」

「歴史は変わった・・・俺は死なない」

なんとなく確信したサブローは帰蝶との挙式を決意する。

「俺・・・京都で結婚しようと思うんだ」

「じゃあ・・・本能寺を予約しておきます」と池田恒興(向井理)・・・。

「ケーキも発注しておきます」と森蘭丸(冨田佳輔)・・・。

大人たちは年をとらないが・・・子供たちは成長するファンタジーゾーンである。

帰蝶は・・・大坂で河童が捉えられたと知り・・・回り道をする。

河童はタイムスリップしてきたウィリアム・アダムス(スティーブ・ワイリー )だった。

「ワタシ・・・日本大好キナいんぐらんど人デス」

「信長が誰に殺されるか・・・存じて居るか」

「ミツヒデサン・・・」

「え・・・いつどこでじゃ」

「イツカハワスレマシタ・・・場所ハ本能寺デス」

「えええ」

その頃・・・秀吉は光秀を脅迫していた。

「信長を殺さなければ・・・帰蝶を殺す」

「それが・・・武将のすることか」

「是非もない」

光秀は・・・帰蝶を保護するための忍びを送りつつ・・・本能寺に向う。

本能寺で帰蝶を待つサブロー。

「上様・・・謀反です」

「え・・・」

「明智光秀に包囲されました」

炎上する本能寺。

「ミッチー・・・」

「すべては・・・秀吉の罠だ・・・」

「え・・・サルくんの・・・」

「私が身代わりになる・・・お前は逃げてくれ」

「そんな・・・」

「戦のない世を・・・作るのだろう」

「ミッチー・・・」

サブローは逃げた。

姿を見せる秀吉。

「なぜ・・・こんなことを・・・」

「初陣の焼き打ちで・・・お前が俺からすべてを奪ったのだ」

「復讐は私を殺して・・・終わりにしてくれ」

「殺す・・・お前の影武者も・・・お前の妻も・・・お前の妹も・・・お前の家来たちも・・・皆殺しだ」

兇悪な秀吉だった。

逃走中のサブローは光秀の忍びに救助された帰蝶と合流する。

「逃げましょう・・・」

「いや・・・上映時間も残り少ないので・・・俺は光秀として・・・山崎の合戦をしなければならないのです」

「なぜなのじゃ」

「秀吉が天下統一することが・・・教科書に書いてあるので・・・」

「バカ・・・」

「でも・・・元々・・・月9なので指輪はプレゼントしないとダメなんだ」

「月9・・・」

「帰蝶・・・愛している」

「行って来い」

だが・・・光秀軍は・・・羽柴軍には敗れる宿命である。

「サルくん・・・僕を殺してもいいけど・・・戦のない世は君が作ってよ」

「戦のない世など来ぬ」

「君なら・・・きっとできる・・・」

「夢のまた夢じゃ・・・」

秀吉はサブローを斬った。

しかし・・・サブローは消えてしまった。

「え・・・」

サブローは現代に帰還した。

高校生ではなくなっていたらしく・・・サブローは就職したのだった。

そんなある日・・・サブロー宛てに画像データが送られてきた。

ウィリアム・アダムスが現代に帰還し・・・サブローの存在をリサーチして・・・帰蝶のビデオメッセージを届けたらしい。

いろいろと・・・アレだが・・・もう・・・なんでもありなんだな。

「信長・・・元気でいるか・・・来世に届くという・・・このカラクリで・・・お前に言いたいことがある・・・妾もそなたに惚れておる・・・その・・・愛している」

サブローは四百年ほど前に死んだ帰蝶の冥福を祈るのだった。

そして・・・今日も地球のどこかで戦争が継続中である。

戦争が絶えることなどないのだ・・・人類が滅亡するまでは・・・。

関連するキッドのブログ→前回のレビュー

くう様の信長協奏曲

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2017年3月16日 (木)

ラブホの上野さん(本郷奏多)お友達ゾーンのあなたへ(松井愛莉)

谷間である。

四百万アクセスも達成したし・・・4444444までは遠い童貞じゃなかった道程が残されている。

連日の更新が途切れるのはなんとなく残念な感じもするわけだが・・・そんなことを言っているとキリがないわけである。

膨大なコンテンツが生み出され続けるメディアに応じて・・・しかるべき論評も価値があるのではないかと考え日記を兼ねて始めたこのブログだが・・・それなりの成果はあったと思う。

最近・・・TOKYO MXで「ウルトセラブン」をオンエアしているので見ているのだが・・・ものすごい名作がないわけではないが・・・大体・・・ひどい出来の作品の連打である。

とくに・・・脚本がひどい・・・。

子供向けだからこんなもんでいいんじゃないの・・・的な稚拙さが充満している。

まあ・・・今でも・・・ひどいものはひどいのだが・・・あんなものを凄いと思って育った子供はろくなもんじゃないな・・・。

まあ・・・自分のことなのだが・・・。

ドラマ鑑賞が趣味で・・・それなりの数を見れば・・・そこそこ語れる時代である。

好き嫌いもあるし・・・知的水準の問題もあるが・・・素晴らしいドラマはそういうものを凌駕して素晴らしいといいなあと思う。

最近ではアニメ「この素晴らしい世界に祝福を!」を祝福したい。

で、『ラブホの上野さん・第1回~』(フジテレビ201701190126~)原作・上野、脚本・小鶴乃哩子(他)、演出・日暮謙を見た。いわゆる一つの恋愛指南ものである。恋愛というものもゲームの一種であるから攻略法があるという感覚は・・・本当の恋愛ではないという考え方もあるが・・・まあ・・・人生いろいろである。

ラブホテル「五反田キングダム」のスタッフである上野さん(本郷奏多)が遥か上から目線で「恋愛下手」の人々にあり難いアドバイスをしてくれるのである。なぜ・・・上野さんがそんなことをするかというと・・・恋愛成就の末に・・・ラブホテル「五反田キングダム」を利用してもらうからである。

つまり・・・「営業」です。

基本的に・・・男性が女性をラブホに連れこめたら成功なので・・・その後のことはあまり問題ではないのだった。

毎回、様々な・・・まだラブホに行けないカップルのゲストが登場し・・・心理学をベースにした上野さんのアドバイスでラブホの売上に貢献するのだった。

従業員の一人に・・・童貞の一条くん(柾木玲弥)がいて・・・ややサディスティックな傾向のある上野さんに精神的にいたぶられたり・・・彼氏以外の男には徹底的にクールな女性スタッフの相川千尋(大沢ひかる)に蔑まれたりするところもベースとなっている。

さらに・・・一条くんは・・・近所のカフェバーの店員である中瀬麻衣(松井愛莉)に童貞を捧げることを夢見ているのだった。

今季のフジテレビの中ではマシな作品なのである。

とにかく・・・のんびりとニヤニヤして見ていられるからな・・・。

第8話に至っても・・・一条くんは麻衣と素晴らしいインターネットの世界の会話アプリのためのアドレスを交換できていないという体たらくなのだが・・・上野さんは・・・女性のアクションに対するリアクションを指導する。

「相談に乗る時に一番大切なのは・・・素晴らしい提案をすることではなく・・・相手の気持ちに同調することです」

「・・・」

「どうすればいいかと聞かれたら・・・一緒に考えようと答えてください・・・そして何も考えない・・・ひたすら・・・彼女の気持ちに寄り添うのです」

「・・・」

「なぜなら・・・女性にとって必要なのは・・・結論ではなく・・・気持ちなのです」

男女の違いがあることに・・・些少の物議は醸すわけだが・・・正論なのだった。

第8話のゲスト・カップルは・・・聖子(梶原ひかり)に対して友達と恋人の境界線を越えられない竹内(松下仁)である。

「どうすれば・・・相手に異性として認めてもらえるか・・・ということです」

「・・・」

「竹内さんも・・・一条くんも・・・お友達ゾーンの住人なのです」

「お友達ゾーン・・・」

「一条くん・・・友達といるとどんな気持ちですか」

「・・・」

「あ・・・友達もいないのですか」

「いますよ・・・それは・・・気が楽というか・・・」

「つまり」

「ホッとできるというか・・・」

「安心だってことですよね」

「はい」

「安心だから安全なのか・・・安全だから安心なのか」

「・・・」

「どうすればいいと思いますか」

「さあ・・・」

「緊張感ですよ」

「緊張・・・」

「彼女の心に土足で踏み込む勇気です」

「そんなことをしたら・・・嫌われないですか」

「嫌われたくなくて・・・ずっと安心安全で・・・童貞のまま一生を送っても構わないと」

「だって・・・いつかチャンスがくるかもしれないじゃないですか」

「つまり・・・釣りをしなくても魚は釣れるということですか」

「・・・」

「お友達は・・・どこまで行ってもお友達・・・だって・・・変わらぬ友情って言うでしょう」

こうして・・・竹内は・・・彼女の心に土足で踏み込み・・・成功したらしい。

どうやって踏み込んだのかは見せないのが・・・基本である。

そして・・・一部愛好家の見所は・・・聖子たち・・・釣られたゲストがラブホテルにやってきた時のそれぞれのリアクションなのである。

まあ・・・ある意味・・・ものすごく性的興味でしかみていないわけである。

あの梶原ひかりが・・・そういう役をやるようになったのだなあ・・・と遠い目をするわけである。

一条くんもなんとか・・・最終回には麻衣をラブホに連れこめるといいのになあ。

関連するキッドのブログ→あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。

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